第3章 第8話

冗談に聞こえるかもしれないが、俺はあれから軽度の女性恐怖症に陥っていた。

あれから。まさにあの時。

自分が女性相手にあれだけの言葉のワンサイドゲームをした事がきっかけで身体が勝手に女性から距離を置こうとしていた。

学校はもちろん、地下鉄や公共交通機関でもとてもしんどかった。

そんな俺を気にかけてくれる人がいた。

彼女の名前はまさよ。

最初は話す事に抵抗あったが少しずつ彼女には心を許せるようになった。

気がついたら彼女思う気持ちが強くなっていた。彼女に思いを伝えたが、付き合う事は断られた。

「徹とは友達でいたい。」

振られたことは少なからずショックではあったが、少しずつ女性恐怖症は克服していけた。


それから数週間経った。

その頃には女子とも話せるようになっていたし、何事もなく平和な日々を送れていると思っていた。その日の帰りまでは。

水井と一緒に帰っていた俺は何となく彼の態度が気になった。

「何かあった?」彼に聞く。

「まさよがうざい。本当に消えて欲しい」

彼らに何かあったのか?詳細を聞いても教えてくれない。

「あいつの携帯も潰す。」

そう言った彼の言葉に恐怖を感じる。

あの時自分が感じた恐怖。たかが携帯と思うかもしれないが、それほどの攻撃的な姿勢を見るとやはり鳥肌が立つのだ。

彼の目を盗んでまさよに連絡を取った。

「そっか。そんなに水井君を怒らせてたの気がつかなかった。教えてくれてありがとう。」

そう言って彼女はLINEをログアウトした。

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