第17話 記憶と逃避行



眠りについたシャインは取り戻した記憶が回想の様に思い出した。

 

 

 

 

 

 男と共に対抗電車に跳ねられたハヤトは気がつくと梨花と共にどこまでも続く白い空間に立っていた。

 梨花がハヤトに向けて心配そうに言う。

 

 「ハヤト!大丈夫なの!?」

 

 そう言われハヤトは自分の体を見てみるが特に何もなっていないようだ。

 

 「うん。大丈夫みたい……梨花は?」

 

 ハヤトが大丈夫といい梨花はほっと胸を撫で下ろしながら大丈夫と返答した。

 

 「……にしてもここはどこなんだろう?」

 

 ハヤトはそう言いながら辺りをキョロキョロと見渡すがどこまでも続く白い空間が見えところどころ丘のように盛り上がっていえるだけで特に何も無い。

 

 しばらくすると2人の目の前に広がる丘の向こうから白髪の背の高い女性が歩いてきた。

 

 彼女に向けて梨花が問う。

 

 「あの……ここはどこなんですか?私達電車に乗ってて、私の前にいた男が暴れてハヤトに助けられて……。あなたは誰なんですか!?」

 

 梨花の質問に彼女が答える。

 

 「う~ん、ここはね私の空間。みんなは神の部屋とかって読んでる。それで私は女神ポーネリアス。君達の元いた世界の12の創造神の1人だよ。」

 

 梨花とハヤトの2人は彼女のその返答に信じられないと言った目を向けるが彼女は表情を変えることなく続ける。

 

 「君達はね2人とも殺されちゃったんだ。勇者の生贄としてね。」

 

 そう言って彼女そう言って目の前に広げていたウィンドウのようなものをくるりと反転させ2人にその画面を見せる。

 

 その画面には赤い血飛沫のとんだ列車が映っていた。それをみた梨花は口を抑え顔を背けた。

 

 「あぁ、ごめんね……見たくなかったよね。」

 

 そう言って彼女はそのウィンドウを手でギュッと握りつぶした。しばしの沈黙が続きハヤトが口を開いた。

 

 「……それで生贄にされた俺達はどうなるんだ。」

 

 ハヤトが聞くと彼女は言う。

 

 「実は君たちに異世界に行ってもらおうと思うんだ。」

 

 彼女の答えに2人は目が点となって固まった。

 

 「え……お~い、固まんないでよ~。」

 

 そう言って彼女は2人を揺する。


 我に返ったハヤトは梨花は梨花に目配せすると梨花は頷き声を合わせて言った。

 

 「「異世界に行く!」」

 

 2人のその答えに彼女は頷いた。

 

 「わかった。じゃあ、特典を渡さなきゃね!」

 

 そう彼女が言うと地面からガチャガチャの機械が生えてきた。

 

 「ここには特典がランダムで入ってて一人3回引いてもらうよ。」

 

 梨花とハヤトは3回ずつ引き、出てきたカプセルを開けた。中には1枚の紙が入っていた。が中には何も書かれていなかった。ハヤトは女神ポーネリアスにそれを見せて問うた。

 

 「何も書いてないんだけど……。」

 

 ハヤトがそう言うと梨花が私も!と手に持っていた紙を見せた。

 

 「あぁ、それは向こうに行くまで分からないんだ。異世界に行ったらこうして確認してね。」

 

 彼女はそう言いながら目の前で空を切った。目の前にはアニメで見るようなウィンドウが現れた。

 

 ハヤト達2人が真似すると同じ様に現れた。

 

 「うん、大丈夫そうだね!あっ!それと言い忘れてたけど特典には特殊な物が結構あって向こうに行ってもすぐには表示され無かったりするけど気長に待っててね。一定の条件をこなせば多分解放されると思うから。」


そう言った彼女に2人は頷いた。それを見た彼女は満足げに頷いて言う。



「じゃあ、向こうの知識も渡しておくね。」

 

 そう言ってハヤトと梨花の額をピンと弾いた。

 2人は流れ込んでくる知識の洪水にとる痛みで地面にうずくまった。

 

 しばらくすると徐々に痛みが和らぎ始め2人はふらふらと立ち上がった。

 

 「あとこれもあげるね。」

 

 そう言って彼女は2人に向けて手をかざした。すると2人を眩い光が包み込んだ。

 

 「……これは?」

 

 ハヤトが質問すると彼女が答えた。

 

 「私からのささやかな餞別だよ!君達が向こうで困ることが無いようにね。……っと君達はそろそろ時間みたいだね。」


 彼女がそう言うとハヤトと梨花の2人は徐々に薄くなっていった。

 

 「落ち着いたらまた来てね~。」

 

 そう言って手を振る彼女を見ながらハヤトは意識を失っていった。

 

 

 

 

 その瞬間ハヤトは現実に引き戻された。

 

 「おい……おい……起き……はよ起き!」

 

 シャインが目を覚ますとそこには焦るタカシがいた。

 

 「はよ、逃げんで!」

 

 そう言ってシャインを脇に抱えたタカシは城門に向けて走り出した。

 

 城門の前には沢山の衛兵が待ち構えていた。タカシはポケットから取り出した何かを衛兵達に向けて投げた。

 それは地面に落ちると爆発し赤い煙が辺りを包み込んだ。

 衛兵がその煙に怯むと同時にシャインを抱えたタカシは衛兵の横をすり抜けた。

 後ろから衛兵が叫ぶ。

 

 「お待ちください!タカシ様!」

 

 衛兵がそう言うとタカシが言い返す。

 

 「待て言われて待つアホがどこにおんねん!」

 

 タカシはそう言うとそのまま城外の路地に姿を眩ませたのであった。

 

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