第16話 女神と記憶
「まったく、君は私の部屋に気軽に来すぎじゃないかい?私、女神って崇められてるんだけど……。」
女神と名乗る女性は呆れながらタカシに言う。
「いやいや、そないにつれんこと言わんとーてや。今日は俺の事で来たんちゃうねんし。ほらこの子。」
そう言ってタカシはシャインの背を押して前に出す。
「おや~。君はこの前来た子じゃないかい?」
身に覚えの無いことを言われたシャインは首を横に振りながら言う。
「いや。ここに来たのは多分初めてだと思う。あなたの事も見た事無いし……。」
「おかしいな~?覚えてない?」
シャインは頷いた。
「う~ん。よし!じゃあ、ちょっと我慢してよ!」
そう言って女神様はシャインの額をピンと指で弾いた。するとシャインの中に様々な知識が洪水の様に流れ込み強烈な痛みが走った。
シャインはその痛みに唸りを上げながら頭を抑えて倒れ込んだ。
倒れ込んだシャインを見たタカシが慌てた様に女神様に聞く。
「なぁ、これ大丈夫なん?俺の時より苦しんどるくない!?」
「そりゃね~。みんなに渡してる知識以外にも私と話した事も忘れてるみたいでその記憶分もあるから結構痛いと思うよ。」
「いや、痛いと思うよって……なんとかならんの!?」
「いや~。これはどうにもできないね~。」
タカシが焦ったように言うのに対してのんびり言う女神様。
徐々に薄れていく痛みにシャインは落ち着き起き上がった。
タカシがどこからか取り出した水の入ったコップをシャインに手渡した。
シャインはコップを受け取り一息に飲み干した。
「思い出したんか?」
タカシがそう聞くよシャインは頷きながら勢いよく立ち上がった。
「それで女神様、梨花は!?どこに召喚されたんだ!?」
勢いよく立ち上がったシャインは女神様に詰め寄る。
「えぇ、ちょ…ちょっとまってよ。……梨花って君と一緒に来た子?」
女神様の返答にシャインは頷きながら言う。
「そうだよ!俺と一緒に来たちっちゃい子だよ!」
シャインの戻った記憶には梨花と共にこの空間に来ていた記憶があったのだ。
焦ったように詰め寄るシャインに押され女神様も焦った様に空中を操る。
「えっとね……ろーべろすおうこく?ってところに召喚されてるって。」
女神様がそう言うなりシャインはタカシに向かって言う。
「タカシ、さっきのところに戻ってくれ!」
シャインがそう言うとタカシが待つように止める。
「いや、ちょっとまちーな。ローべロス王国って結構遠いとこにあんねんで、一人で行く気かいな。無理やで。」
タカシにそう言われたが食い下がるシャイン。
「それでも……。」
「まぁ、待ちいな。そないに行きたいんやったら俺もついてったる。やから取り敢えずは休み、あんたも迷宮から帰ったばっかりやねんから。」
そういったタカシは女神様に向かって帰ると伝えとシャインを抱えて言う。
「転移!新聖典王国ダンデスベル!」
そう言うと神の部屋に来た時と同じ様に沢山の小さな魔法陣が幾重にも重なりひしめき合い一斉にキラキラと光り始めシャインはまたその眩しさに目を瞑った。
元いた屋上に戻ったシャインは聞く。
「それでローべロス王国まで飛べないのか?」
「無理やな。行ったことないし。」
タカシそう言うとシャインを抱えたまま医療棟に入りシャインをベットに投げた。
「しばらく休んどきや!」
タカシはそう言い残し部屋を出ていった。
一人残されたシャインは柔らかな日差しの差し込む窓を見ながらベットに潜り込んだ。
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