第14話 眠る侍女と怒る姫
その後、幼女はホールに向かい扉を開け出てきた衛兵に何かを伝え、手に持っていた男の持ち物を渡した。
渡し終えると幼女はシャイン達の方に走り出し、勢いをつけてジャンプしながら魔法を唱えた。
「बुराई की कमी से पहले देवता प्रतिबिंबित#反射__リフレクト__#」
幼女が地面に降り立つと足元に魔法陣が現れ幼女を吹き飛ばした。
幼女はそのままあさっての空に飛び見えなくなった。
去っていく幼女の姿の見たエリーは悲しそうに言う。
「あれはお姉様が物理魔法#反射__リフレクト__#を応用したものです。お姉様は様々な知識や経験を駆使して今まで誰も考えつかなかった事をしてしまいます。……ですがそのせいで度々、お父様と衝突なさって……今ではすっかり疎遠になってしまいました。」
もう見えなくなった幼女に向けた悲しそうなエリーの横顔を見ながらシャインは少し躊躇しながら言う。
「………とりあえず今はこっちの事をしましょう。ジェミニもずっと目を覚ましませんし。」
そう言われたエリーは悲しさを振り払うように言う。
「……そうですね。とりあえずジェミニを医療棟に連れて行きましょう。衛兵を呼んできます。」
そう言い残しエリーは人のいる方へとかけて行く。ホールからは既に数人の衛兵が出てきており倒れ込んだ男やエリーのツルで捕まえられた赤髪の女の周りに集まっている。
(これ着てるから一人でも運べると思うんだけどな……。)
シャインはジェミニから渡されたローブをを見ながらそう思い、改めてそのローブの性能に気づいた。
(……にしてもこのローブ、性能がおかしいよな。全能力最低ランクの俺が普通あそこまで動けるはずなよな。)
シャインは先程の戦闘を思い返しながらジェミニを見る。
ジェミニはまだ目を覚まさずすぅすぅと静かに息をしながら寝ている。
シャインはふとジェミニの顔にかかった銀髪を持ち上げ顔を見る。
迷宮から今までの間、ずっと隣にいた為ほとんど真正面から見ていなかったジェミニの顔を改めて見るとその顔は美しく整い大人のような背格好とは裏腹に幼い顔立ちであった。
シャインはその顔ドキッとし惹き込まれ見入っていた。
「シャイン!連れて来ましたよ!」
急にかけられた声にあわてて振り返るとそこにはいつの間にか衛兵を従え戻ってきていたエリーがジトっとした目でシャインを見ていた。
衛兵は持ってきた担架にジェミニを乗せ、近くの医療棟に向けて運んでいった。その後をサッと身を翻したエリーがずんずんとついていきボーと座っていたシャインにエリーが言う。
「シャイン行きますよ!」
いつもより棘にある声でシャインに向けて言う。
「エリー……何か怒ってます?」
「怒ってません!」
間髪入れずに返したエリーはそのまま何も言わずに医療棟へと向かっていった。
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