第13話 幼女と魔法
「ハッハッハ!貴様など相手にならんわ!」
その声の主は腕を組み満面の笑みで高らかに笑う幼女であった。
シャインがじっとその幼女を見つめると先程までの笑顔とはうってかわり冷たい表情となりシャインを睨みながら言う。
「なんじゃ貴様は。何か用か?」
急にトーンの変わった声の幼女にシャインは驚きのあまり声が出せなかった。
声の出ないシャインの代わりにエリーが立ち上がり幼女に向けて駆け寄る。
「お姉様!いつお戻りに!」
「今だ!学園から飛んできた。」
幼女は近づいてきたエリーを見上げながら返答した。
エリーは幼女の手を取り引っ張りながら言う。
「お姉様!ジェミニが!」
お姉様と呼ばれた幼女はシャインの抱えるジェミニに近づき、小刀の刺さった周りのズボンを取り出した短剣で切り裂いた。切り裂かれたズボンから現れたのは小刀の刺さった周りの皮膚が紫色に変色し焼けただれた様になった足であった。
幼女は紫色に変色し焼けただれた皮膚を手でそっと触れ呟く。
「これは……毒百合の毒か。エリーは#解毒__キュア__#と#回復__ヒール__#を。私が引き抜く。」
そう言って幼女はジェミニの足に刺さる小刀を一息に引き抜いた。ジェミニは小さく悲鳴を上げ傷口からは赤い血が溢れた。
幼女が小刀を引き抜くと同時にエリーがロッドを立て続けに振り、二種類の魔法を同時に構築する。ジェミニの足に重なった2つの異なった魔法陣が光り始め、血の流れ出る傷を防いでいくと同時に紫色に変色し焼けただれた皮膚を元の色に戻していく。
幼女は立ち上がり地面に小刀を捨てた。すると地面は徐々に黒く変色し、生えていた芝生は焼け焦げた様にボロボロになり枯れていった。
「やはり、柄にも毒が塗ってあったか。」
幼女はそう言いながらも地面を徐々に変色させ、芝生が枯らすほどの強さを見せた毒が塗られた小刀に素手で触れていた事を気にも止めずに平然としている。
「お姉様、いくら#反射__リフレクト__#があると言っても無茶しないでください。」
そう言ってエリーは幼女に向けてもロッドを振り、ヒールをかけた。
「全く、エリーは心配症だな。これくらいなんともない。……それよりこのチビは誰なんだ!?見たことない顔だ。」
幼女はシャインの事を指さしながら言う。
「私とジェミニがダンジョンに探しに行った方です。詳しい話はお父様に……」
エリーがそこまで言うと幼女は急に興味を失くした様ににそっぽを向き倒れ込んだ男に近づいていく。
「エリー、彼女は?」
シャインは幼女に聞こえないようにヒソヒソとエリーに問いかける。
「私の姉です。第二皇女レーナ・ダンデスベル。特殊な物理魔法を使い我が国が誇る魔導師の一人です。今は郊外にある魔法学園に通っています。あとお父様が嫌いです。」
シャインは倒れ込んだ男のローブをまくり上げ、男の持ち物をゴソゴソと漁る幼女をまじまじと見つめる。
(本当にエリーの姉なのか……どちらかと言うと妹の方が近い気がする。)
なんてことをシャインが考えていると急に幼女がこちらを振り向き、ズンズンと近づいてきて胸ぐらを掴み言った。
「貴様、私の事を姉に見えんと思っただろ。どちらかと言うと妹とか考えただろ。」
見事に言い当てられたシャインは少し怯み、身構えたが幼女は諦めた様に手を離しそっぽを向いて言う。
「……よい、もう慣れておる。」
そう言った幼女の顔は少し悲しそうに見えた。
幼女は先程の漁っていた男の持ち物を持ちホールへと向かっていった。
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