第5話 迷宮の闇には
ハヤトとジェミニが一時休戦を約束した後、出口に向けて歩き始めた。
「……にしてもすごい広いな。」
ハヤトのつぶやきに残念姫様が説明してくれる。
「ここはニコライオの迷宮と言って約200年前に現れたダンジョンです。出てくるモンスターのレベルは低いですが大陸で1番広く入り組んでいるためC級下位くらいのダンジョンです。」
「そのC級下位ってのはなんなんですか?」
ハヤト質問に残念姫様はきょとんとした顔で考えている。
(なんか変な事聞いたのか…?)
しばらくして残念姫様がハッとして答えた。
「あぁ、ダンジョン等級のことですね。等級はS級、A級、B級、C級、D級、E級、F級、G級にわけられています。その中でさらに上級、中級、下級に分かれていてC級下位なら冒険者5~6人パーティで挑む感じですかね~。」
「えっ…俺達、3人しかいないんですが…。」
「大丈夫ですよ、ジェミニがいますから。こう見えて元王都トップの冒険者でしたから。」
そう言いながら残念姫様はジェミニ(侍女)に目配せする。
ジェミニは自信ありげに頷く。
「それに全然モンスターも寄ってこないでしょう。」
そう言えばもうかなり長い時間を歩いているが最初にあったゴブリン以外1度もモンスターと出会っていない。
「これもジェミニさんのおかげなんですか?」
ジェミニは少しふてくされたように言う。
「そうです。生まれつき生き物にあまり好かれない体質なようで…ここに来る途中もかわいい犬を見つけたので触ろうとしたら必死の形相で吠えられました…。」
その答えにハヤトは思わず吹き出しジェミニに弓を向けられた。
ジェミニは少し顔を赤らめながら恥ずかしさを払拭するように大きな声でハヤト達に言った。
「と…とにかくそろそろ出口ですから…最後まで気を引き締めてください。」
それからしばらく歩いた後に急にジェミニが立ち止まった。
「待ってください。何かが近づいてきます。ハヤト、エリー急いで戦闘準備をしてください。ウェアウルフの群れです。」
ジェミニがそう言った瞬間、前の横穴から10体を超えるであろう狼のような獣達が飛び出してきた。
ジェミニは弓を背にかけ腰から短剣を抜き、身構えそのウェアウルフの群れに飛び込んでいった。
それと同時に狼の群れの中心で血しぶきが上がった。ジェミニがウェアウルフの首を落としたのだ。その後も順調にウェアウルフを1匹ずつどんどん倒して行く姿にハヤトが見とれていると突如ジェミニが声を荒らげた。
「後ろだ!」
その声に振り向いたハヤトの目の前の闇から現れたのはジェミニの前にいるような小さなものでなく赤い体毛を逆立てた熊のような狼であった。ハヤトは背にかけていたゴブリンの持っていた青い刃のロングソードを身構えた。
すると驚くことにその刃から青い湯気のような物をが浮かびロングソードの周りをふわふわと包み込んだ。
それを見た赤毛の狼は戦意喪失したのか逆立てていた毛を収め身をひるがえし闇の中に消えていった。
赤毛の狼がいなくなるとそのロングソードは光を失い元の青い刃に戻った。
ハヤトは不思議に思いながらもそのロングソードを鞘に収め振り返った。
そしてその目に映ったのはジェミニが逃した1匹のウェアウルフが姫様に向けて飛びかかろうとしていた。そして姫様はそのウェアウルフに気がついていない。
「危ない!」
そう叫んだハヤトはとっさに姫様を道の方へ突き飛ばした。
ハヤトはウェアウルフと共に横に空いていた穴から底の見えない闇の中に落ちていった。
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