第4話 ゴブリンとの対敵
「おーい!だれかー!」
ハヤトがそう叫ぶとツタの生えた石壁に反響してうるさい。とりあえず周りを把握しようと壁をつたいながら歩き始めた時、ハヤトの背後からペタペタと足音が聞こえた。びくっとハヤトが後ろを振り向くと緑色のゴブリンが立っていた。そしてその手にはファンタジー小説とかで読むような木の棍棒では無く鋭く長い青い刃のロングソードを持っていた。
ハヤトは見なかった事にして再び歩き出そうとしたがゴブリンは後ろからロングソードを振り回しながら迫ってきた。いくら相手がファンタジー世界最弱モンスターの1枠とはいえ流石に素手とロングソードでは勝ち目がない。ハヤトは慌てて逃げるが逃げた通路の先には別のゴブリン。だがその手には木の棍棒。ハヤトは迷わず目の前のゴブリンをサッカーボールの様に蹴っ飛ばした。ゴブリンはくるくると回りながら吹っ飛んだ。その隙にハヤトはその通路を駆け抜けたがロングソードを持ったゴブリンは相変わらず追いかけてくる。ロングソードを持ったゴブリンは予想よりも遥かに速く最初、10メートルはあったであろう距離はどんどん縮められ今やゴブリンの振り回すロングソードが触れそうになっている。
予想以上に速いゴブリンから逃げている時ハヤトは床の微妙な段差につまずいた。
(やばい死ぬ!)
ハヤトが本気で死を感じた時、通路の奥から光る矢がこけるハヤトの髪をかすり後ろを追っていたゴブリンに直撃したような音がした。
ハヤトは振り向くとそこには脳天に矢が突き刺さりゴブリンはビクビクと痙攣して倒れていた。
ハヤトは腰が抜けたように座り込んでいると通路の奥から聞き覚えのある声が聞こえて来た。
「ハ…ハヤトさま~。大丈夫ですか~。」
あぁ、残念姫様だ。そしてその後から真っ黒な弓を携えたあの背の高い侍女さん。
お礼を言おうとハヤトが立ち上がると侍女さんはハヤトに近ずき顔をガシッと掴み無理やり首をいろんな方向に向けられパッと離されハヤトは尻餅をついた。
そして侍女さんは悔しそうに舌打ちしながらボソッと呟いた。
「チッ!外したか。」
「ちょっと待て、お前、俺を殺すつもりだったのかよ。」
「姫を小間使い扱いする男など死んでしまえばいい。」
そう言いながら弓を構える侍女を残念姫様が前に立ちふさがって止める。
「ちょっとジェミニやめて!ハヤトさまは私が聞いたからお願いなさったのよ!」
「なぜです!?エリーは姫ですよ!そんなゴミみたいな男に使われていいはずないですよ!」
「ハヤトさまはゴミじゃないです!…ちょっとステータスが残念なだけです!」
「エリーナ様、フォローになってません。」
「……え、いやそう言うことじゃなくて…えっと…えっと………。」
残念姫様はあたふたしながら弁解しようとするが上手く言葉が出てこないようで焦っている。
「エリーを焦らすなんて許さない!死ね!」
そう言ってジェミニ(侍女)は俺に向けて弓を撃って来る。迫り来る矢をハヤトは必死で躱す。
止めてくれるはずの残念姫様は未だに混乱して全くのうわの空でこちらに気がついていない。
「エリーナ様!助けてください!」
ハヤトのその叫びはダンジョンの奥へと消えていった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます