第67話 進路希望調査

 康平の答えはシンプルだった。

「普通に高校行くけど。え、どう選ぶか?そりゃまあ、受かるとこ」

 泉美には理由があった。

「そりゃあA高だよ。あそこの吹部って、楽譜よりも漫画の方が数あるんだって先輩から聞いてるんだ。部活に励めそうではないか!」

 大沢には明確な目的があった。

「国立の大学に進学するのが最終目標だから、勉強できる環境が整ってるC高を目指してるんだ」

 そして、3人は声を揃えて俺に言った。

「「で、唯我はどうするの?」」

「えっと……、行かない」

 その答えに驚いたのは3人だけではない。施設長は職員室にある会議室の中で、口を大きく開いた。

「高校は行きなさい!」

「……うーん……」

 まるで赤い風船から空気が抜けるように、施設長はフウンと鼻から息がもれた。胸の前で組んだ腕は、硬くてすぐには解けそうになかった。

「そもそも、どうして行かないの?」

「だって、俺もう仕事あるし。勉強よりも、ダンスの練習がしたいし、演技も歌も学びたい。それは高校行かなくてもできるだろう」

「仕事って……」

「俺、早く一人前の大人になりたいんだ。働いて稼いだお金で生活していきたい」

 俺の頭の中には、去年の夏に出会った瀬良という男の姿が浮かんでいた。俺より大人で、ちゃんと働いて生活している。俺は自分の力で生きていけるような人間に早くなりたかった。

「だから高校に行く理由が思いつかないんだ。必要に思えない……」

「唯我……」

「どうして、皆は高校に行くんだ?なんとなくとか、部活頑張りたいとか、大学に行きたいとか、どんな理由でもあれば俺だって考えられる。けど、理由らしい理由を、俺は考えられない。施設長は、何で高校に行けって言うの?」

「そこでしか、出会えないものがたくさんあると思うからだよ。たくさんの経験をすることは、唯我の生涯を支えてくれる力になると思うんだ」

「出会い、経験……。それって、高校じゃなくてもできるだろ?」

 俺がよく考えもしないで言った言葉に、施設長は返す言葉を見つけられなかった。会議室での話が終わった後、職員室にあるテレビから音声が流れていた。

『俳優の大貫樹杏さんが、所属するジェニーズ事務所を通し、8月をもって俳優休業を発表しました。樹杏さんはイタリア大使のご子息であり、大使の任期満了後、共にイタリアへ帰国するとのことですが……』

 最近の芸能ニュースでは、樹杏の休業報道が一番の話題となっている。職員室にいるクレアおばさんや職員の人たちは、テレビ画面に釘付けだった。樹杏の元には、休業報道を受けたメディアからの取材が殺到しているらしい。これから始まる舞台練習の間にも、密着取材があるそうだ。マスコミが樹杏の名前を上げる度、別れへのカウントダウンを聞くような気持ちになった。


                ****


 俺はこれまで、一度だけ将来について考えたことがある。小学4年生の3月、初めて出演が決まったCMの監督に「大人になるってどういうことか、考えてみて」と言われたのがきっかけだ。一緒に踊った世界的プロダンサーのイツキさんが、撮影の合間に俺に質問した。

「唯我君は、将来何になりたいの?」

 その時の俺は、何て答えたんだっけ……。気になりだすと周りの音が聞こえなくなった。あの時、俺は……。

「おい、小山内!!」

「わっ!」

 耳元で大声を出したのは康平だった。

「何ボーッとしてんだよ。修学旅行の自由行動のルート、決めなきゃだろ!?」

「ああ、そうだな」

 俺と康平、泉美と大沢の机をくっつけて、その上に京都の観光ガイドやノートを広げているのを、俺はようやく認識した。

「唯我、何か最近ボーッとしてるよね。大丈夫?」

「小山内君、疲れてるんじゃないかい?」

「いや、そんなことは……」

「だって、今は映画の宣伝やってるしい、これから舞台の稽古して、修学旅行前に舞台公演あるしい。あ、今度私と成美、『竹林のライオン』観に行きやすぜ」

「あ、俺も部活の奴らと観に行くんだ!」

「え、あ、サンキュ」

「映画も修学旅行も楽しみでありますな。ね!成美!」

「そうね。でも、体には気をつけてね。唯我」

「うん、大丈夫。サンキュ」

 俺は、将来についての思考がグルグルとして整理がつかなかった。頭の中には、白紙の「進路希望調査」の用紙が風に吹いているように揺れている。

 学校が終わり、施設に帰ってくると、職員室の前に優里子が立っていた。背を向ける優里子は、誰かと話しているようだった。

「優里子」

「あ、唯我。おかえり」

「ただいま。……あれ?」

「おかえり、唯我」

 優里子とニヤッと笑ったのは、英だった。

「英、お前なんで……」

「ちょっと愚痴りにさ。みこも来てるよ。他の子どもとか施設長とか、職員の人たちに会ったら泣き出しちゃって、今職員室の皆がなだめてるところ」

 俺はみこの名前を聞いた瞬間、ドキッとして体が固まった。思い出されるのは、年始早々、実家に帰ると施設を出るみこを見送った時の出来事だ。俺はみこに唇を奪われたのだった。

 しかし、ドキッとしたことを英にも、まして優里子にも悟られたくない。俺は平然を装い、「へえ」と返事した。

「みこの泣き虫は変わらないか。実家はどうだ?」

「マジ最悪。もう無理。キツイ。特にみこが……」

「そうね。それは、もう様子を見ただけでわかるわね」

「そんなに?」

「あ、唯我。みこに会っても、”似合ってる”って言わないで。お願い」

 「”似合ってる”って言わないで」とはどういうことか。その時、職員室の扉が開き、中から施設長が顔を出した。足元には、赤いランドセルを背負ったショートヘアの女の子がいた。それがみこだった。

 俺の知るみこは、肩の上で黒い美髪を揺らすスカートの良く似合う小さな女の子だった。しかし、目の前にいるみこは、耳までよく見えるほど髪が短く、紺色のパーカーに黒いズボンを履いている。まるで男の子のような恰好だった。目の周りは真っ赤に腫れているのに、目はまだ潤んだままだった。

「み」

「にいにっ!」

 俺が声をかける前に、みこは施設長の太ももの後ろに隠れてしまった。

「みこちゃん、隠れてないで出ておいで」

「嫌っ!にいに、見ちゃ嫌!」

「みこ……」

「みこ、大丈夫だよ。挨拶ぐらいしろ」

 英に言われ、みこは施設長の後ろからトボトボと歩いてきた。顔は下を向いたままだった。

「にいに……」

「みこ、小学校入学おめでとう。もうすっかりお姉さんだな」

 みこが頭を振ると、ポロポロと涙がこぼれた。この時の俺は、何がそんなに悲しいのかを知らなかったが、声も出さずに泣いているみこがとても辛そうで、肩や二の腕をさすってやった。

「みこ、おいで」

 そう言うと、みこは両手を広げてゆっくり俺に歩み寄り、小さく叫ぶように声を上げた。抱きしめたみこの体はとても火照っていて、肩に落ちてくる涙さえ、まるでお湯のようだった。


                ****


 俺は駅に向かう道中を、英とみこと一緒に歩いた。みこが握った手を離してくれず、俺の自転車を英が引いてくれた。

「何が最悪って、パパの介護の女だよ。気持ち悪いんだ。多分、あれはパパとデキてるよ」

「お前、自分の親だろ」

「女の方は違うよ。あいつ、特にみこに対する態度がヒドいんだよ。可愛い、可愛いって言いながら、けどショートの方が似合うとか、ピンクより黒の方がいいとか、悪意があるっていうか、すっごい押しつけがましいんだ」

「あたし、嫌だって言ったもん……」

「パパは女の言うことには、そうだね、いいねってそればっか。2人して見つめ合う時間多すぎ」

「多分、お姉さんもパパも好きだよね」

「そう。もう隠さないっていうか気色悪いっていうか」

「デキてるもん」

「絶対そう」

 俺は英の悪態よりも、みこが同調して言っている言葉の方が驚いた。同時に、英の口調に似通っていることに危機感を覚えた。みこがこのまま英みたいな子になったら、は悲しい。

「今日はもう無理って、施設長に話しに来たんだ。でも、少しでも愚痴れてスッキリした。いつかはまだわかんないけど、また施設に帰るよ」

「あたしも帰る!」

「そうか……」

 俺は英とみこと別れ、自転車に乗って出発した。俺は施設で育ったから、小さい頃から、それぞれに事情を抱えて施設にやって来る子どもたちを何度も見てきた。子どもは弱い。意思があっても、大人の意思に逆らう力がない。子どもと大人の違いは何だろう。

 事務所の一室で、俺はボイストレーニングのレッスンを受けた。講師の先生は表情豊かに高い声、低い声を使い分けた。俺はどうしても高い音を出す時、声が潰れてしまう。

「『ジール』の歌の最高音は、ここよ。のどを広げて、下を向かないでね!もう一回」

「はい」

 技術を知り、教える力がある人は先生だ。先生は大人だと思う。だけど、知っていることや身につけた技術を誰かに教えることができるのは大人だけじゃない。やろうと思えば、俺だってできる。仕事をしているか、していないかという違いを挙げるのなら、俺は既に仕事をしている。尚更、子どもと大人の違いがわからなくなった。

 レッスンが終わり、事務所のエントランスを通りかかったところで、根子さんに呼び止められ事務室に入った。

「次週から舞台稽古が始まりますね。Y&Jで言えば月刊『MyJ』の取材、バラエティー番組のインタビューもあります。『青春・熟語』の撮影もありますし、修学旅行も控えていると伺っています。忙しくなりそうですが、体調に気をつけて下さい」

「はい」

「何か質問はありますか?」

「……進路に悩んでます」

「……左様ですか」

 すると、根子さんは「少々お待ちを」と席を立つと、何冊かの高校のパンフレットを持たせてくれた。俺の悩みを細かくは伝えなかったせいで、根子さんに気を遣わせてしまったことを後悔した。


                ****


 帰り道、自転車に乗りながらジールの歌を口ずさんだ。真っ暗な道の両側で、ポツポツと街灯の灯る様子、通り過ぎていく車のエンジン音を見ると、そこはまるでジールの世界のようだった。「アンダーグラウンド」という地下の世界で、ジールは大人と混ざって仕事をしている。いつか、地上に立つんだと夢見て。

「……行こう。どんなに悲しいことがあろうと、そこにきっと希望の光は昇るのだから。俺は今、地上へ旅立とう」

 まだ見たことのない場所がある。だから見たいと思う。まだ知らないことがある。だから知りたいと思う。見たことがないから想像する。想像して、憧れて、夢見るのだ。もしかしたら、それができるのが子どもなのもしれない。

 その時、反対車線を見覚えのある車が走ってくるのが見えた。車は止まり、俺も自転車を止めた。窓が下に下がり、車内から手を振ったのは優里子だった。

「唯我、お疲れ様。今帰り?」

「うん。優里子も帰るところ?」

「そう!偶然ね!」

 俺たちはしばらく話をした。優里子は道の端に車を止め、歩道に出て俺の横に立った。

「優里子は、いつ自分が大人になったと思った?」

「そうねえ。税金を納め始めてからかな」

「税金……」

 なんて現実的な話……。夢も憧れもねえ。

「でもね、時間ばっかり過ぎちゃって、体だけが歳をとってる気がするの。自分自身はまだ子どもだなって思うこと、たくさんあるわ」

「確かに、俺もまだがキっぽくて嫌になる時ある」

「フフフ。唯我はまだガキンチョよ」

 クスクス笑いながら言われた一言は、かなりの痛みを伴って胸を貫通した。

「俺は、いつになったらガキンチョじゃなくなるんだろう」

「いつだろうねえ」

「俺と優里子の違いって何だろう」

「うーん……。男と女」

「うん」

「14歳と23歳」

「うん」

「運動神経。私全然ないから」

「だな」

「それから、身長差。こないだの身体測定ではいくつだった?」

「165」

「うわあ、抜かされてる!5センチも!」

「まだ大きくなるよ」

「本当ねえ。いろいろなことがこれからね。あ、それも違いかもね」

「いろいろ、これから……」

 皆それを言う。とてもアバウトな表現すぎて、俺には「いろいろ」も「これから」も想像がつかない。

「高校に行けば、その”いろいろこれから”もわかるのかな」

「そうね。でも、高校を出た先にだってあるわよ。想像もつかないことが、たっくさん!」

「優里子の想像もつかなかったことって何?」

「こんな小さかった唯我が、ジェニーズになったこと」

 優里子は腰の高さで手をひらひらと動かし、当時の俺の身長を表した。

「今じゃあライブだけじゃなくて、映画にも出るし、舞台にだって立つようになったのよ。想像できたわけないじゃない」

「今更だろ」

「今更なんて言葉はね、”いろいろこれから”を積み重ねてきた今があるから言えることなのよ。頑張ってきたから、今の当たり前があるの。あんたにも、私にも、今まで頑張ってきたことを”今更”なんて簡単に表せないこと、たくさんあったでしょ。きっと、これからだってそうやって続いていくんだわ」

 優里子の言うことに、俺はかなり納得した。これまでのことを振り返ればすぐわかる。悩んで、落ち込んで、それでも頑張って超えてきた出来事がいくつもあるのだから、簡単に一言で表現することは難しいし、どんなことも軽んじたくはない。

 ふうっと息を吐き、スッと空気を吸い込んだ。日中に顔を広げていた花の匂いが鼻の中を通ると、少し穏やかな気持ちになれた。

「俺、どんな大人になれるだろう」

「え?」

「変な大人にはなりたくないな」

「何よ、変な大人って……。大丈夫よ、唯我は」

「何で?」

「”家族を守れる一人の大人になりたい”って言った唯我だもん。きっと立派な大人になれるわよ」

 優里子がサラリと言った言葉に、俺は聞き覚えが全くなかった。

「俺が言った?」

「あ、しまった」

「何だよ。何隠してる」

「む、昔の話よ!その……、唯我が初めてCMに出たからって、私が一人でテンション上がっちゃって、施設の玄関にポスターやらイツキのインタビューやら掲示したら、唯我がめちゃくちゃ怒って、それで……」

 優里子は両手をフリフリしながら焦ったように言った。それを聞いて、俺も何となく当時の様子を思い出した。ジェニーズを続けていく自信がなくて、毎日不安だった小学生の頃のことだったと記憶している。自分の機嫌の悪さを、優里子にぶつけてしまうというガキくさくて情けない思い出だ。

「ああ、うん。あったな、そんなこと……。悪かったよ」

「え?」

「本当は、すっげえ嬉しかった……。でも、嬉しがる余裕なかった」

 優里子は「何それ!」と声を上げ、俺の腕を両手で掴むと大きくゆすった。

「今更すぎ!私がどんだけ悩んだかわかんないでしょ!」

「だから悪かったって!時効だろ、もうっ!ってか、さっき言っていた言葉は何だ。俺が言ったって?その時のことと何か関係あんのかよ」

「だからね、イツキのインタビュー記事の中にそう書いてあったの。私、それ見て思わず泣いちゃ……」

 当時のことを思い出した優里子は、涙がこみ上げ言葉に詰まった。俺は優里子が突然泣き出したのに驚いた。グスッと言った顔が俺の腕にくっつくと、全身を一気に熱が駆け上がった。

「ゆ、優里子っ」

「私も親バカが過ぎるのよね。唯我にいいことがあると、一人で勝手に喜んで、勝手に期待しちゃうの。今も何も変わらないわ。今やってる映画だってね、出演決まったって聞かされた時、本当は飛び上がって喜びたかったくらいなの。でも、唯我には関係ないじゃない。私の気持ちはさ」

 関係ないだと?

「はあ?何それ。優里子、勝手すぎ」

「そう言ってんじゃん!私、勝手だってわかってるもん」

「そうじゃねえよ。お前の気持ちが、俺には関係ないわけねえだろ。勝手に決めつけんな!」

 優里子はまつ毛まで潤ませた瞳を向けた。肩のそばで上げられた顔が近くてドキドキした。

「なら言うけど、私、唯我に期待してるの。いっぱい」

「何を?」

「唯我がどんなアイドルになるのか、楽しみで仕方がないの。きっと、ステキなアイドルになってね」

 満面の笑みは、真っ暗な夜道の中でも輝くようだった。その笑顔が眩しくて、憧れる。きっと、世のアイドルというのはそういう存在なのだ。その笑顔に元気をもらう。その姿勢に勇気をもらう。だから一番そばで気持ちを形にして伝えたい。俺にとって優里子はそれだ。だけど、俺のなりたいのはそれじゃない。

 その笑顔を作ることができる人間になりたい。その笑顔の一番そばに求められる人間になりたい。

「俺は、優里子のことを笑顔にできるアイドルになりたい」

 その笑顔が、俺だけのものであってほしいと、もうずっと願い続けている。

「だから俺にとって、優里子の気持ちは世界で一番大事だ。覚えとけよ」

 優里子は目を見開いて一瞬固まったが、頭を傾げて微笑んだ。

「まるで告白ね」

「そうだよ。だって……」

 俺にとって、優里子は世界で一番、大事な人なんだから。


               ****


 次の日、俺は担任の先生に進路希望調査を提出した。そこには、「考え中」とだけ記入した。

「小山内君、時間はまだあるから、じっくり考えるといいわ」

「はい」

「とりあえず、当面は忙しいと思うけど、5月にある最後の体育祭も、修学旅行もあるから、皆と楽しい思い出をたくさんつくってね。それもきっと、小山内君の宝物になるから」

「ありがとうございます」

 担任の先生は優しい言葉が、とてもありがたかった。俺の手から進路希望調査用紙が離れ、先生は丁寧にファイルの中にしまった。ただのA4の用紙と思っていたのに、手元から無くなると気持ちがとても軽くなった。

 施設に帰ると、優里子が職員室の扉から手招きして俺を呼んだ。優里子の席の引き出しからは、ぶ厚いファイルが出てきた。ペラペラとめくられたページには、俺の写真や、関連する記事がたくさん貼られていた。少し引いた。

「うわ、お前何してんの?」

「これまで私が集めた唯我の記事とかポスターとか。あ、昨日話してたイツキのインタビュー記事はこれよ」

 優里子は「ほら、ここに」と指を差した。そこには、イツキのインタビューの言葉が並んでいた。俺に関することが書かれた箇所は、わかりやすく蛍光ペンで囲まれていた。


齋藤:今回のCM撮影では、ジェニーズJrの小山内唯我君(10才)と共演されましたね。現場での印象はいかがでしたか?

イツキ:それがめちゃくちゃダンス上手でビビりましたよ(笑)これ、本気で踊んないとヤバいじゃんって!しかも、唯我君が礼儀正しくて、ダメだししても素直に受け入れるっていうか、コイツこれから伸びるんだろうなあ、イケメンに育つだろうなあってのがビンビン伝わってきました。

齋藤:特に印象的なことは何ですか?

イツキ:将来の夢を聞いたんですけど、何て言ったと思います?”何になりたいっていうんじゃなくて、家族を守れる一人の大人になりたいんです”そう言ったんですよ。小学4年生の言うことかよって思いましたよね。ダンスは、そのための一つの道だそうです。同じ男として尊敬しますよマジで」


 俺は恥ずかしさのあまり頭から湯気を上げた。じっとしていれらず、「もういいよ!」とファイルを強引に閉めて、俺は職員室を出た。

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