第45話 願い事

 目の前には、眉毛をギュッと上げて怒った顔をするキャリアウーマン根子さんがいた。俺は根子さんの怖い強い視線を一身に受けていた。

「呼び出された理由はお分かりですか?」

「……はい」

「先日の私立学校の文化祭で、映画終了後に活動停止と思われていた”Y&J”がダンス部の発表舞台にて一幕のみ復活。文化祭を賑わせた……。そのような内容の記事がSNS上に載りました。お心当たりはおありのようね」

「……はい」

「どうして勝手なことをしたんですか!?あなたたちの身勝手のせいで、文化祭は混乱、入場を制限されていたはずのマスコミが多数入場。おかげで学園内の誘導は困難を極めたそうです!幸いなことに、怪我人がいなかったそうです。しかし、”Y&J”この名において、タレント活動をするということの責任の大きさを、唯我君、樹杏君は理解が足りません!反省下さい」

「はい。ご迷惑をおかけしました……」

 大きな声を出す威圧的な根子さんは怖かった。事務室には他にもスーツのおじさんおばさんがいたが、まるで木陰に隠れて息をひそめる小動物たちのように静かだった。ああもう、早く帰りたいっ!本当は樹杏と二人でくらうはずの説教を、樹杏は仕事で関西にいたおかげで、俺は樹杏分の説教も受けていた。あいつめ、後でいじめてやる!

「いいですか!唯我君!」

 その強い声に「はいっ!」と返事をし、背筋を伸ばした。すると、根子さんは体を少し倒し、口元を手で隠してひそひそ声で言った。

「何かしたいと思ったら、まずはご相談下さい。私が全力で”Y&J”の力になりますから」

 根子さんは一瞬微笑み、体を起こすと、もう一度怒った顔をして強い口調で「よろしいですね!」と言った。

「はい……」

 俺は、根子さんには一生頭が上がらないと思った。この優しさも、本気で怒るところも、みんなひっくるめて根子さんの思いやりで、強さだ。俺はそんな根子さんだから信頼できるのだ。

「ところで、少し前にAファイブの津本さんが私のところを訪ねていらっしゃいまして、これを唯我君にと、受け取りました」

「津本さんが?」

 津本さんはトップアイドルグループ、Aファイブのメンバーの一人で、夏休みにあった26時間TVの特別ドラマで一緒に仕事をした人だ。根子さんから横長の封筒を受け取り、中を確認すると、2月に行われるAファイブのコンサートチケットが2枚入っていた。


                 ****


「えっ!えっ!ええええっ!?」

 泰一はAファイブのチケットを両手に持ち、目をキラッキラさせていた。職員室の施設長の隣には、事務所から帰ってきた俺もいた。

「し、施設長!僕でいいの!?」

「うん。さっき帰ってきた唯我とね、一緒に話をして、Aファイブが大好きな泰一が行くのがいいってことになったんだ」

「唯我兄ちゃああんっ!」

「何だよ。うるせえなあ」

「僕でいいの?本当に、一緒に行くの、僕でいいの!?」

「だから、いいって言ってるだろ」

 泰一は口元を手で覆い、施設長に聞こえないようにこしょっと言った。

「だって、チケットはペアチケットだよ?優里姉と二人で行った方が……」

「んだからっ!!いいんだって!!しつけえなあ」

 俺は顔を赤くして、近づいた泰一を押し離した。

「泰一君。Aファイブのコンサートチケットにもあるように、開催は2月末、場所は北海道。泰一君は3月で施設を卒業して、お母さんのところへ行くでしょう?だから、兄弟みたいに育った二人で行って、思い出作ったらいいよ。ね?泰一君」

「施設長。唯我兄ちゃん……」

「素直に受け取れよな」

「うん。ありがとう!」

 泰一は目をうるませて、胸の前でコンサートチケットをぎゅと握るとニッと笑った。とても嬉しそうな泰一を見て、俺は安心した。


                ****


 次の日、俺は仕事に向かうため、最寄駅までを優里子が運転する車に乗っていた。

「今日は基金募集のCM撮影だっけ?」

「ああ」

「どんな撮影になったか、後で教えてよね」

「帰ってきたらな」

「あ、そうだ!聞いたよ。2月に泰一と二人で、Aファイブのコンサート見に北海道まで行くんだって?」

「まあな」

「いいね。きっと楽しいだろうなあ」

 ニコニコする優里子の横顔を見ると、俺は少し残念な気持ちになった。昨日泰一が言っていたように、優里子と二人で行くのも楽しいと思う。しかし、よく考えてみろ。北海道だぞ?日帰りの予定にはせず1泊2日での旅行になるんだぞ!そんな長い時間、優里子とずっと二人きり?!

 見知らぬ場所、見知らぬ景色の中で笑う優里子と二人きり。夜のホ…ホテルの、へ…部屋の中で二人きり。風呂上りのほわほわとした湯気をまといながら、「唯我もシャワーいっておいでよ」なんて言うバスローブ姿の優里子と二人きり。ギシッと音を立てるベッドに横になって、オレンジ色のライトが照らす瞳がうっとりとして、「寝よっか」なんて言う優里子と二人きり!隣のベッドに眠って、朝日が差し込む部屋の中で、くしを通してない無造作な髪が垂れて、鎖骨の下がチラッと見えちゃいそうに乱れてる可愛い寝間着姿で、「おはよう」なんて言う優里子と二人きり!!無理だろう!心臓がもたない!多分、俺は北海道で死んでしまう!!

 ピンク色のもやもやの中を浮遊する俺の妄想は、隣の優里子の「唯我っ!!」という大きな声によって、風船がパンと割れてしまうかのように消えた。ドキドキだけが胸に残って、顔は赤いままだった。

「駅、着いたよ!何ボーッとしてるのよ」

「ああ、うん。サンキュ」

「何か、雲行き悪いわね」

「夕方雨降るって、天気予報で言っていたっけ」

「帰りの時間分かったら連絡ちょうだいね。迎え来るから」

「おう。行ってくる」

「気をつけてねっ」

 俺は自分の妄想のせいで優里子の顔をまともに見れず、さっさと駅の改札を抜けた。電車の席に腰掛けて、ようやくふうっと息を吐いた。いけないいけない。落ち着け、俺。

「僕でいいの?優里姉と二人で行った方が……」

 泰一があんなこと言うから、妄想が暴走したんだ。いらん気づかいしやがって。っていうか、あいつはいつ俺が優里子のことを好きだと気づいたんだ?

 しばらく電車に揺られ、ふと窓の外に目をやると、線路脇の道を散歩する親子がいた。母親と小さいガキが2人、立ち止まっていた。一番小さいガキは、電車に手を振っている。その3人の姿が、記憶の中にある小さな頃の優里子と俺、泰一と重なった。

「兄弟みたいに育った二人で行って、思い出作ったらいいよ」

 施設長の言うように、俺と泰一は赤ん坊の頃から施設で育てられた。言葉を覚え、物を覚え、立ち上がり、当たり前に歩けるようになったあの頃、泰一は動くものにはお構いなく手を振るガキだった。俺は泰一のそれを見て、現実を突きつけるように言った。

てて振っても、返しやしないよ。あれは電車だし、さっきのはバスだもの。生き物じゃないし、そもそもててがないよ」

 当時の俺は、自分が施設に育てられている事情を何となく理解し始めていた。自分の生い立ちが他の人たちと違うことへの気づきとか、名乗りもせずに俺を捨てた親への怒りとか、そんな感情が胸の奥で育ち始めていた頃だ。世の中を何も知らない弟に、俺は何でも知ってる兄貴ぶりたかったのだ。

 ボヤアっとしている泰一は、いつも口が半分空いていて、鼻水が垂れていた。俺が何度も指摘しても、ただニッコリとしかしなかった。

「兄ちゃ、あれなあにい?」

「あれは葉っぱ」

「これはあ?」

「これも葉っぱ。落ちてるから、落ち葉っていうんだ」

「葉っぱあ!」

 泰一は足元に落ちている枯れ葉を拾い、まだ枝から離れず風に揺れる葉っぱに向かって手を振って、やっぱりニコニコしていた。

 あいつが、来年の今頃には施設にいないのか。想像できない。泰一は優里子と一緒で、このままずっと一緒にいる奴だと思ってた。それが当たり前だと思ってた。だけど、泰一は駿兄と同じように、施設を離れて独り立ちするんだ。たった一歩、されど大きく変化する一歩を、あいつは踏み出すことを選んだんだ。

 俺もいつか、大きな一歩を踏み出す時がくる。その時、俺は一歩先に何を見るのだろう。


                ****


「唯我君、この台に立ってもらっていいかな」

「はい」

 撮影場所は、オフィスビルの立ち並ぶ街の、古びたビルの屋上だった。灰色のコンクリートの地面を蹴って、俺は用意された台の上に立った。周りには、俺の頭よりもずっと高い、ガラス張りのいかにも新しいビルがいくつも見えた。

「上の空が暗いね」

「予報より早く降り出しそうですね」

 周りにいた撮影スタッフたちは、心配そうに空を見上げている。確かに、ビルとビルの隙間からは、夕日に染まり始めた遠くの空が見えるのに、俺たちの頭上の空は雲に覆われている。

 ビル街を走って上ってきた風にあおられる撮影機材をスタッフが力づくで固定し、ライトを調整している間に、いよいよ雨がポタポタと降って来た。

「いや、これくらいならいけるだろう。唯我君、平気かい?」

「大丈夫です」

「では、撮影始めたいと思います。よろしくお願いします」

「「お願いしまーす」」

「では、唯我君。打ち合わせ通りによろしくね」

「はい」

「……スタート!」

 瞳を閉じ、あごを引いた状態で10秒待つ。12345……。次にまぶたを開きながら、10秒かけて顔を上げる。12345……。そして10秒間、カメラをじっと見つめる。瞬きは我慢する。12345……。

 これがかなりきつかった。ビルの屋上は風が強く、髪の毛が揺れ、耳元で砂嵐のようなザーっという音がする。そんな風が直接目を襲ってくる。辛い。辛い!

「カット!」

 その瞬間、俺はぎゅっと目を閉じた。想像以上にきつかった。ポケットに入れていた目薬を差した。撮影ビデオを確認し、スタッフの話し合い、その間にヘアメイクのお姉さんが髪の毛にくしを通してくれた。ビル風のおかげで髪の毛は絡まって仕方なかった。

「唯我君、もう少し強い視線、お願いできるかな。……こう、その先にある、明るい未来を見つめている、みたいな」

 明るい未来を見つめる……。俺には、すぐに「明るい未来」を想像できなかったが、これは仕事だ。やるしかない。俺は「はい」と答え、もう一度台の上に立った。

 「明るい未来」。俺にとって「明るい未来」とはなんだろう……。俺は想像しようとしたが、未来はあまりに遠くてすぐ見当たらなかった。

 ビルの隙間に見える遠くの空は、少しずつ雲がかかり始めていた。頭上の空は、ため込んだ湿気の粒をポタポタと地上に落とす。くしを通した絡まりのない髪の毛が耳をくすぐった。首筋を撫でる風が冷たい。時々頬に当たる雨粒はもっと冷たい。

「はい行くよ!よういっ……スタート!」

 まぶたを閉じ、あごを引いて10秒。そこから10秒かけてゆっくり顔を上げる。開いた目で、遠くて遠くて見ることさえできない未来を見つめて、10秒。

 施設で育った兄弟と一緒にいる当たり前が、時と共に消えていく。本心を素直に言えば、当たり前を失った俺は、喪失感に耐えることが辛くてたまらない。小学4年生の3月の日のように、一人電車の中で号泣してしまうほどだ。

 だけど願ってる。喪失感のその先に、泰一の幸せがあることを。実力のない俺だけど、望んでる。遠くで暮らす泰一が、ジェニーズとして活躍している俺の姿を見てくれることを。

「はい。オーケー!」

「唯我君、お疲れ様。風、冷たかったね!」

「ありがとうございましたっクション!」

 俺のくしゃみでスタッフたちは「アハハ」と笑った。俺は恥ずかしくて、頭にかけられたタオルで口元を隠した。

 気づけば、服も髪もしっとりしていた。ビルの向こうに見えていた空は灰色で、逆に頭上は晴れていた。ビルの下から吹き上げる風は湿っていて、とにかく冷たかった。


                ****


「ハッッックション!!」

 次の日、俺は朝から病院で診察を受けていた。白衣のよぼよぼじいさんが、体温計を見つめて消えそうな細い声で言った。

「風邪だね。温かくして、水分補給して、よく眠ってね」

「はひ。……クション!」

 施設に帰るなり、俺の額には冷えピタが貼られ、部屋のベッドで横になった。体は火照り、脳みそが溶け出すように鼻水が出て止まらない。

「唯我、事務所には今日のレッスン欠席するって連絡したよ」

「サンキュ」

「根子さんがね、昨日の撮影はお褒めの言葉をいただきましたって。良かったね」

「昨日の撮影、全然手応えなかったのに……」

 撮影している間、俺は未来のことと、泰一のことを考えていた。そういえば、以前にもこんなことがあった気がする。温まり始めた冷えピタの上に腕をのせ、視界に影を作った。記憶を探っていると、やっぱり思いあたることがあって、思わず「ははっ」と笑った。

「何かおかしかったの?」

「いや、前のCM撮影の時にも、同じようなことがあったなと思って」

「前の……。ああ、イツキと踊ったポリカのCM?その時の撮影のこと?」

「そう。あの日は、駿兄が施設を出る日でさ。撮影中も、帰りの電車の中でも、ずっと駿兄のこと考えてた。寂しくてたまらなかった……」

 優里子は少し驚いた。いつもの俺なら、不安や弱気な気持ちを話そうとはしない。思っていたとしても、絶対「寂しい」とは言わない。俺も熱のせいで脳みそがゆだっているから、思考と挙動の制御ができていない。優里子は自身の驚きを静かに飲み込み、ベッドの下に腰を下ろして俺の話を聞いてくれた。

「施設長が、俺と泰一は本当の兄弟みたいって言ったんだ。俺にとって駿兄も兄弟だったよ。頼れる兄貴だった。対して泰一は、守るべき弟だった」

「うん……」

「その弟がさ、いつの間にか自分で人生選んで進もうとしてんのな。嬉しがった方がいいのかもしれないけど、置いてけぼりにされた気分だよ」

「ふふ。それはあんたにも言えるけどね」

「え?」

「泰一も唯我も、未来をちゃんと見て、勝手に歩き出してる。とっくにね」

「そうか?」

「どんなに寂しくともお別れがあるのは当然のことだわ。だって、お別れの向こうには、それぞれの別の人生が待ってるんだもの」

「……」

 優里子は手を伸ばし、熱で赤くなる頬に当てた。

「だから寂しくても送り出すの。背中を押して、頑張れって言うの。素敵な未来を願って……」

「でも、寂しいじゃん……」

「そうね。だけど、決して一人ぼっちじゃないわ」

 頬に添えられた手がひんやりとして気持ちよかった。ゆっくり熱を吸ってくれる手に、額に乗せていた俺の手を重ねた。

「優里子がいる?」

 俺の手の熱さにも驚いたが、優里子は俺の考え無しに言った言葉にドキッとした。否定する材料が見当たらず、「……うん」としか言えなかった。

「なら、俺は寂しくない」

「唯我……」

「手え、冷たくて気持ちい」

 そう言われると、優里子は手を無理矢理にも離せなくなった。しばらくそのまま俺に握らせていると、頬の柔らかさや、熱い息が吹きかかるのがくすぐったくなった。優里子が困った顔をして、頬を熱っぽく火照らせていたことにも気づいていない俺は、熱で頭がふわふわしていて、ぼんやりした夢の中のような心地だった。

 この時、俺の部屋の前には泰一がいた。泰一は部屋側の壁に寄りかかり、ドアの向こうから聞こえてくる俺のくしゃみと優里子の笑う声に耳を傾けていた。そこにみこがやってきて、泰一のお腹に顔を埋めて手を回した。顔を上げると、みこはニコニコ笑っていた。

 泰一はしゃがんで、みこをぎゅうっと抱きしめ返した。そして、優里子の言葉が頭の中で繰り返される。「お別れの向こうには、それぞれの別の人生が待ってる」

「寂しくても、決して一人ぼっちじゃない。そりゃあ、僕だって知ってるさ」

 優里子の言う通り、俺と泰一には、もちろん施設のガキたち皆に、それぞれの未来が待っているのだろう。そしてきっと、別れを選んだ先の未来が幸せであるように、皆で願ってる。


                 ****


 次の日には熱は下がり、俺は制服を着て玄関で靴を履いていた。

「おっはよう!唯我兄ちゃん!」

「はよう」

「熱は平気なの?」

「ああ。下がった」

「ふうん」

 泰一はニヤニヤした顔を近づけた。

「な、何だよ」

「昨日、優里姉とお部屋でイチャイチャしてたでしょ」

「はあ?してねえし!」

「ひひひっ!行ってきまあす!」

 泰一はニヤニヤ顔のまま玄関を飛び出した。俺はすぐに立ち上がり追いかけようとした。

「おい、泰一!!」

「朝から大きな声出して、どうしたの?」

 玄関にみこと一緒に見送りに来た優里子の顔を見たら、泰一の声がリピートした。「イチャイチャしてたでしょ」

「っしてなーい!!」

「は?」

「い、行ってきますっ!」

「うん。行ってらっしゃい」

 顔を真っ赤にした俺は、猛ダッシュで玄関を飛び出した。優里子はその場にしゃがみ、みこと視線の高さを合わせて「ふふっ」と笑った。

「変な唯我ね」

「ふふふ。変なにいに」

 その時、優里子がケホケホと咳き込んだ。みこは心配して、小さな手で優里子の頬を包んだ。

「ねえね、ほっぺた熱いよ」

「平気よ。このくらい」

「唯我とイチャイチャしたから火照ったんだろ?」

 後からやって来た英が、通りすがりに言った。優里子はドキン!として、顔を赤くした。

「い、いつ私が!唯我とイチャイチャなんかっ」

「昨日。熱、うつされるようなことでもしてたんだ。マジエロい」

「ちょっと、英君!何言ってんの?唯我とは何もっ!ゲホゲホ」

 英は靴を履くと、ベーッと舌を出して外に出て行った。

「優里さん、大丈夫?」

「ああ、佳代ちゃん。平気平気!学校、いってらっしゃい。気をつけてね」

「うん。いってきます」

 制服姿の佳代が連れてきた充瑠はみこと手をつなぎ、優里子の真似をして手を振った。

「佳代ちゃんの制服姿も、もうすぐ見られなくなるわね。皆、どんどん大きくなるもんね」

 優里子は隣のみこと充瑠に目を合わせ、次に玄関の外を見つめた。床に近づく体に、ゆっくり流れる冷たい空気が重なる。気づけば、道に植えられた草木の葉がカサカサと音を立てながら、日々色づいていく。

「また、お別れの時期がやって来るのね」

 3人の影が施設の中へ伸びて、廊下に落ちる影に溶けていた。

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