第31話

「お」

「あ」

 上野駅の山手線ホームで懐かしい顔を見つけた。朝の通勤ラッシュということで自分の足元さえ確認できるか怪しいほどだというのに、どうやら気がついたのはほとんど同時だったらしい、お互いの間の抜けた声がホームに響いた。朝の混雑によって一瞬でかき消されてしまったが。

「坂巻だよね? 僕、櫻井」

「久しぶり。え、この辺りで働いてるの?」

「いや、今日は出張。そっちこそここら辺なの?」

「うん。それじゃ、また」

「あ、坂巻!」

 人波に押されてこれ以上立ち止まっていられなくなった僕を引き留めるようにして、というか実際に袖をつかんで引き留めて、櫻井は言った。

「リーダーになれる人とそうでない人の違いは何だと思う?」

「……え?」

「冗談。今日飲もうよ、久しぶりに将棋でも指しながらさ」

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