第38話


 人が生きている感覚を回復し、事物を知覚し、石を石らしいものとするために、芸術は存在するのだ。芸術の目的は、事物がどんな感じであるかを、知識としてではなく、知覚されるものとして伝えることにある。芸術の方法とは、対象とするものを「見慣れないもの」とし、簡単にはわからない形にして、知覚を手間取らせることである。というのも、認識のプロセス自体に美的目的があるため、それを長引かせなければならないからだ。


――シクロフスキー『技法としての芸術』

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