第5話

『こんにちは! いきなりですけど、今度一緒に食事でもどうですか??』

 秋葉原だ中野だと意味のない会話の数日後、ようやく本当の意味で均衡が破られたというべきか、このようにして僕は彼に誘われた。こちらとしても、LINEを交換して以来初めての動きに、つい心臓が跳ね上がったのを覚えている。

『よろこんで。いつ頃の都合がいいですか?』

『じゃあ……急ですけど明日とか。場所は西武池袋線のときわ台駅のまわりなんかどうですか? 静かで落ち着いていて、おいしい店を知ってます!』

 この時も、僕は大して注意も払わずに、きっと彼はそのあたりに住んでいるのだろうと当たりをつけて、快く(といった態度をあくまで崩さずに)承諾した。しかしこればかりは僕にも落ち度はないはずだ。駅の名前を出されただけで果たしてその相手を怪しいと疑えるだろうか、ここまでいったらぼくはただの人間不信だ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る