第2話

「よくこういった場所には来るんですか?」

 と、二万円もするフィギュアに魅せられて、いつまでもここにいるとつい手を出してしまいそうに――財布の中身を覗いてしまいそうになることうけあいの性格の僕は、そのままフィギュアコーナーを抜けてアダルトゲームコーナーへと足を延ばしていたのだが、そこである男性に声をかけられた。目の前のTV画面には、僕も持っているゲームの、リメイク版が発売されるというCMがデカデカと流れている。ちなみに僕がそのゲームを買ったのはつい先月のことで、まったく最悪のタイミングで買ってしまった――あと一ヶ月買うタイミングを遅らせていればと憎々しくそのムービーを眺めていたのだが、どうやら僕の不機嫌な感情は相手に伝わってはくれなかったようだ。

「ええ、まあ」

 スーツ姿で健康的な肉付きの、つまりはほどよくデブな男が、人懐っこそうな顔でこちらを見ていた。年齢は三十代前後といったところだろうか。

「へぇー、あ、じゃあこういうゲームもよくやったり?」

「……人並みには」

 詳しくは省くが、その男は、友人から「こういうゲーム」、つまりはアダルトゲームを勧められたのだが、全くの門外漢で、詳しい友人が欲しいとのことだった。今から思えば勧められるくらいなのだから、その男がアダルトゲームに詳しくないのは当たり前で、詳しい友人が欲しいというのも、そもそもアダルトゲームを勧めた友人がいるだろうというツッコミもできるのだが、それは冷静になったからできた粗さがしであるので、僕はとりあえずそのあたりの違和感をスルーしてしまった。とはいえこの時点で彼を不審人物と断定するべきだったと、過去の僕を責めるのも酷というものだ。こんな違和感、いくらでも都合のいい説明がつく。

「とりあえず……LINE、いいすか?」

 だからこそ、僕は軽い気持ちで、やや控えめな態度でスマホを取り出した彼とLINEを交換してしまった。一言ずつ、当たり障りのない挨拶をLINE上で交わして、その場はお開きとなった。

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