第6話

 4人で受付を済ませ、担当の先生の指示に従う。一旦教室に集まって、それから入学式場となる体育館に行くそうだ。その間に、シゲとのんちゃんは周りの人にメンチ切ってた。すごくやめてほしい。そういえば、やけに周りの人がこっち向いてヒソヒソ話してるけど、それはシゲとのんちゃんのせいだろう。


「それは違うよ?周りは俺たちがメンチ切ってんのにヒソヒソしてるんじゃない。」

「へ?」


 急に僕の心を読んだような発言をするシゲ。なんでわかったんだ…?


「淳ちゃんは顔に出やすいからね、そんくらいすぐわかるよ。それに、俺はもう出会った時から淳ちゃんの虜だから!わかって当然!」


 …最後の余計な二言は聞き流しておこう。でも、それじゃないなら何でヒソヒソしてるんだ?


「貴方たちのことですよ。多分、可愛いとか言われてるんでしょ?」

「噓だぁ!そんなわけないじゃん!」


 のんちゃんの言葉にすかさず星が反論する。僕も星の意見に賛成。


「僕たちなんかにキャーキャー言ったって…」

「はぁ…いい加減、自分の可愛さに気づいてくれません?僕たちもお兄さんたちも、毎日可愛いって悶えてるじゃないですか。」

「それはお前らが異常なだけだよ。」

「淳ちゃんもセイセイも、昔から変わらず鈍感だね〜。」


 今更だが、シゲは星の事をセイセイと呼ぶ。ちなみに、パンダみたいというツッコミは、聞き飽きたのでやめてほしいらしい。

 そんなこんなで教室に着きドアを開けると、中にいた同じクラスの人たちが一斉にこっちを見た。そして、驚いたような顔をすると、すぐに周りがざわつき始めた。


「…僕たち、何かしちゃったかな?」

「俺全く身に覚えがないんだけど。」


 すると、僕はシゲに、星はのんちゃんに後ろからカップルがするように腕を絡められた。2人はそのまま黒板の前まで行き席を確認すると、


「よっしゃ!俺セイセイの隣で淳ちゃんの後ろ!」

「僕は星くんの前で淳くんの右隣です!」


と、みんなに聞こえる声で言い放った。確認してみると、確かにそうなってた。少しうんざりしながら席まで行って荷物を置くと、前の席の子が話しかけてくれた。


「初めまして、俺は京本龍之介。よろしくな!」

「あ、初めまして!僕は西条淳です。斜め後ろにいるのが、僕の双子の弟の西条星。よろしくお願いし…」


そこまで言いかけると、シゲが突然強引に割り込んできた。


「どーも!淳ちゃんの幼馴染の重本大です!よろしくなー!」


僕の横では、のんちゃんがニコニコしながらこっちを見ていた。…目が笑ってないからすっごく怖いんだけど。


「2人とも、それ以上龍之介くんを威嚇するんだったら、俺も淳もお前らのこと嫌いになっちゃうよ?」

「「それだけはやめて(ください)!」」


2人の声が綺麗に揃った。その声が大きかったから、みんな何事かと思ってこちらを見ている。


「…大変そうだな、ウチみたいに。」

「へ?も、もしかして、龍之介くん、お兄ちゃんとかいる?」

「上に1人と下に1人いる。上の方が結構なブラコンで、今日も苦労したんだよな。」

「それめっちゃわかる!朝とかいっつも大変だよね!」

「俺たちはそこに更に幼馴染こいつらが加わるからな。」

「俺も俺も!そいつが所構わず抱きついてくるようなやつでさ、同じクラスになった事を恨みたい。」

「今日は来てないの?」

「いや、一緒に行こうってうるさかったから置いて来た。」


その時、大きな音を立ててドアが開いた。

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