第5話

 お兄達と幼馴染達の間でバチバチしながら、なんとか入学式前に学校に着くことができた。ここでお兄達とは別れなきゃいけないんだけど、予想通り、お兄達はガッツリ僕たちの腕を掴んでいる。


「あの、あき兄?そろそろ離してくれないと、入学式遅刻しちゃうんだけど…。」

「いいじゃん一緒にサボろうよ〜!」

「入学式から遅刻なんてありえないから!ってか、みんな見てるからたか兄離して!」

「そんなの見せつけておけばいい話でしょ。今あいつらが居なくなったからちょうどいいの。」


 たか兄に言われてふと気がついた。いつもならこういう時、お兄達と一緒で全然離れてくれない幼馴染達の姿が消えていたのだ。あいつらはどこに言ったんだろう?そう思って辺りを見回していると、遠くの方から僕たちを呼ぶ声が聞こえた。


「おーい!俺達みんな同じクラスだったぜー!これで淳ちゃんのもっともっとレアな表情が撮れる!」

「今日から毎日、綺麗で美しいくて可愛い星くんと青春を謳歌できるのですね!」


 それを聞いたお兄達は何故かホッとしたような顔をしていた。理由を聞くと、


「まだ他の野郎どものとこに入るよりかは安全だからね。」

「一応他人以上友達未満の関係だから、まだマシだよ。」


ということらしい。とにかく僕たちには、知っている人以外あまり近付けさせたくないんだそうだ。


「じゃ、おにいさん方、俺達が責任を持って周りの奴らから守るから、安心して入学式見ててよ。」

「伊達に“白騎士”“黒騎士”と呼ばれたわけじゃありませんから。」


 僕たちは、昔は女子によく間違われることが多かった。そのお陰で変なやつに襲われそうになることもしばしば。それを毎回助けてくれるから、周りからシゲは白騎士、のんちゃんは黒騎士と呼ばれている。色はただのイメージらしい。


「しょーがない。2人の晴れ舞台見るためにも、行くか。」

「大くん、望夢くん、2人の事頼みますよ?」

「当たり前でしょ?絶対周りの奴らには近づけないから。」

「意地でも入学式で隣に座ってやります。」


 …いつもの火花が散るような雰囲気とは違って、今はガッツリ握手を交わしている4人。いつもこんな風ならいいんだけどな。


「淳、こいつらほっといて先行こうよ。」

「そうだね。」


僕たちは4人から離れて新入生用受付へと向かった。




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