第11話5.22任用試験ー1

仁君はここのところ多忙のようだ。


昼は木工の工房で見習い。夜は蔦屋でアルバイト。


帰ってくるのは午後11時すぎ。


やっぱり木工が好きなんだ!





去年の申込書があるから大丈夫だとは本部長は言うけれども、


担当の私とK君は気が気ではない。最近はスマホで学習できる


ようになった。夜寝ながらでも試験範囲を音声で流してという


ワイワイガヤガヤの昔の学習とはえらい変わりようだ。





とにかく当日何としても受験させなければ!


私とK君はついに夜中の1時過ぎ新しい申込書を持って


仁君の部屋を訪ねた。すると我々の祈りが通じたのか相当たたき起こさねば


と覚悟していたのがすっと玄関ドアが開くではないか。





灯りを手探りでやっとつけると乱雑に積み上げた本の上に


何と1万円札が置いてある。なにこれ?不用心なことだ。


「じんくんいるかい?」小声で叫ぶと、


暫くして仁君が眠たそうに現れた。そこで尋ねると、





「自転車が壊れて修理してたもんですからそのまま鍵もかけずバタンキュー」


そりゃそうだ毎日梅ケ畑の工房からロームシアターまで真夜中に常盤。


軽快高速自転車これもいまのはやりか?若さだな―このスタミナは。


と感心しつつ申込書を出したら快く書いてくれた。


来たかいがあったこれが信心だ!!!3人うれしかった!

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