第五章 13

 科学館を出ると、何やら甲高いミャーミャーいうかわいらしいネコの鳴き声が聞こえてきた。

 声のする足下を見る。栗色の毛に、所々黒いぶちの入ったかわいらしい子猫がいた。

 目が合ったかと思うと、くるりと踵を返し歩き出す。

 どこかに導いてくれているのか? その猫の後をついていく。すると目の前に大きな字で『ネコカフェ』と書かれた看板のあるお店に辿り着いた。

「そう言えば未来がつれて帰ってきたあの猫、大家の弟に預けたけどいまごろ元気にしてるかな?」

 ネコカフェの中に入ってみる。ここかもしれない。中に入った途端、そんな気がした。

 アメリカンショートヘアやマンチカン、スコティッシュフォールドといった、たくさんの種類の猫たちが、優雅に床の上に寝転がったり、人工の木の幹で爪を研いだり、思い思いに行動している。

 しかし、そこに人間の気配はなかった。

 生体反応装置がここにいる猫たちに反応しないよう操作する。

 続いて真実のメガネをかけ、お店の中を丹念に調べた。しかし、人が隠れているような場所は見つからない。

 しばらくネコカフェの中をうろちょろした。

『ニャア』

 ん? この猫、ずっと僕の足下について離れないぞ。それにしてもこいつかわいいな。

 ちょっと休憩とばかりにその場に座り込む。すると、その猫が島浦の膝の上にひょいっとジャンプして乗っかってきた。

 その猫を優しくなでてやる。

 あれ? お! なんだなんだ!

 だんだんその猫の姿形が変わっていく。

 ひょっとして? と思い、必死になってその猫をなで続けた。

 なで続けるとその猫はついに人へと姿を変えた。

 それはまさしく……時延未来だった。

「やったああああ、ありがと」

 時延未来は嬉しそうに抱きついてきた。なんか……柔らかい。触覚センサはないはずなんだけど……

 島浦は自分の顔がにやにやしているのがわかった。しかし、時延未来が抱きついていた腕を放したので、必死ににやにやを抑える。

 時延未来が島浦の肩をつかみ、顔をじっと見る。そして、島浦の頬の辺りに軽くチュッとキスをした。

 また自然とにやにや顔になる。

 彼女が顔を放す。今度は目の前に

『Mission Complete!!』

 の文字が浮かび上がった。イベントクリア時のいつもの音楽が鳴り響く。

 その音楽と共に、いつもの部屋に強制的に戻された。

 隣には時延未来がいる。

 何か話しかけようとした瞬間、ちょうど終了の時間となった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る