第3話 大学

 あたしは幼い頃から病気がちだった。いじめられてたのも、先生たちのあたしを気遣う態度が、他の子にはあたしを贔屓してるように見えたからだと思ってる。見た目には、そんなにわからないものだったから。

 物心ついた頃から、何か一つは薬を常飲している状態だった。当然、薬局にお世話になることは多かった。あまり良い学校生活を送れていなかったあたしは、そこで薬剤師さんに優しく声掛けされると少し嬉しかったりした。忙しそうにしていることも多いけれど、そんな中でも、時間を掛けてゆっくりと、こちらの持ち掛けた相談に耳を傾けてくれる人がいたりすると、「この薬剤師さん、良いな」と思ったりした。それは次第に、「こんな薬剤師さんに、なりたいな」へと、変化していった。

 だから大学は、薬学を専攻した。だけど恐ろしいことに、彼もまた、あたしと同じ進路を辿った。高校の時の真相は定かじゃないけど、今度は間違いない。彼はわざと、あたしと同じ大学を選んだ。だって、お互いに合格校の報告をし合った時に、

「そっか。じゃあボクもそこにしよっと」

 と言って、志望校の中でもランクを一つ下げたのだから。

 大学に入ってからも、あたしはサークルには入らなかった。彼もあたしに倣うように、どこにも所属しなかった。ゼミが違った時、心底安堵した。だけど授業は、当たり前のようにあたしと同じ時間割を取る。席も隣。

 だけどあたしもどうしてだか、それを「何故?」とは問えなかった。

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