第3話 大学
あたしは幼い頃から病気がちだった。いじめられてたのも、先生たちのあたしを気遣う態度が、他の子にはあたしを贔屓してるように見えたからだと思ってる。見た目には、そんなにわからないものだったから。
物心ついた頃から、何か一つは薬を常飲している状態だった。当然、薬局にお世話になることは多かった。あまり良い学校生活を送れていなかったあたしは、そこで薬剤師さんに優しく声掛けされると少し嬉しかったりした。忙しそうにしていることも多いけれど、そんな中でも、時間を掛けてゆっくりと、こちらの持ち掛けた相談に耳を傾けてくれる人がいたりすると、「この薬剤師さん、良いな」と思ったりした。それは次第に、「こんな薬剤師さんに、なりたいな」へと、変化していった。
だから大学は、薬学を専攻した。だけど恐ろしいことに、彼もまた、あたしと同じ進路を辿った。高校の時の真相は定かじゃないけど、今度は間違いない。彼はわざと、あたしと同じ大学を選んだ。だって、お互いに合格校の報告をし合った時に、
「そっか。じゃあボクもそこにしよっと」
と言って、志望校の中でもランクを一つ下げたのだから。
大学に入ってからも、あたしはサークルには入らなかった。彼もあたしに倣うように、どこにも所属しなかった。ゼミが違った時、心底安堵した。だけど授業は、当たり前のようにあたしと同じ時間割を取る。席も隣。
だけどあたしもどうしてだか、それを「何故?」とは問えなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます