転生魔少女破戒録
無ーSAN
第一章
覚醒
覚醒-01
――――なるほど、これが噂の……
異世界転生、と言うものですか。
たしかに、唐突ですね。
何事も経験と言いますが、本当に突然訪れるものですね。
さて、そうなるとそろそろ現れても良い頃だと思うのですが――――
ああ、そうですか、私の場合は【
これは難易度が高そうだ。
そうなると、自分で解明せねばならないようですねぇ――――
さてさて、私は一体何に転生されたのでしょうか?
それに、どういう世界か? も、気になるところです。
まずは、目に見えるところから。
素朴な無地の白い土壁、木材の柱と梁、天井は斜めに傾いた木製。
そして、そこには――――照明がない。
天井照明だけではなく、壁にも当然、コンセントらしきものは見当たらない。
代わりに、扉のそばと部屋の片隅に、蝋燭台のようなものがあります。
となると、生活インフラに電力が存在しない、これはつまり――――
王道のファンタジー路線、と言う線が濃厚ですね。
中世ヨーロッパ時代の文明レベルでしょうか?
よくあるパターン……これは興ざめですね。
どうせならもっと物珍しい世界に飛ばされたかったものです。
そして気になる【今の私】――――ですが。
女性、のようですね。
身体のあちこちを触りますが、男性の特徴であるシンボルは確認できない。
そして、胸は殆ど無い。
高齢ではない、少なくとも思春期前か、その途中の年齢と言ったところでしょう。
着ている服は寝具ですかね? ワンピースのような形で、手触りは悪くない。
さて、今更ですが――――
何故私は、こうも冷静なのでしょう?
たしかに、私もこのような物語を楽しんでいた――様な気がします。
つまり、こういう展開に対する前知識はあった。
ですが、それでもこの状況、多少なりとも慌てるのが普通では?
夢……と言うには、いささかすべてがリアルすぎます。
第一、私は色の付いた夢を見た覚えが――無いような気がします。
おや?
そうですね、もう一つ大きな疑問が。
私は一体、何者なのでしょうか?
いや、今の私ではなく、そもそも私は誰なのでしょう?
転生前、少なくともこの状況が、今とは全く異なる事はわかります。
恐らくこの世界が、転生前のそれとは大きく異なることも。
ですが――――
私個人の、転生前の私個人の記憶が、一切ありません。
身体の違和感から、男性、そして年齢も更に上だった様な気がします。
――――なるほど、これは厄介ですね。
アイデンティティを喪失している、と言うことですから――――
――そうですね、途方に暮れていても仕方ありません。
どうやらこの
少しでも状況をクリアにすべき……と、私の本能が囁いていますし。
では、先ほど部屋の様子をうかがった時に見つけた、鏡でも覗いてみましょうか?
机の上に飾られた、小さな鏡を。
ほう! これは……
銀髪のボブヘア―に、深い琥珀色の瞳。
半神めいていながら、どこかあどけなさが残るその顔。
自分でも引き込まれてしまいそうな、我ながら――――
美しい顔です。
これは
顔立ちは人生を歩む上で、無視できない重要なもの、ですからね。
おや? 足音が聞こえてきますね?
警戒――すべきでしょうか?
「リュミ!! 目覚めたんだね?!」
扉を乱暴に開けたのは、頭髪の
「あぁ!! 良かった!! このまま覚めないかと……」
その隣で安堵の涙を流しているのは、細身で上品な身なりの女性。
今の私の……両親でしょうね……
「ほう、目覚めたのならばちょうど良い!」
2人を割って入ってきたのは、居丈高な……役人?
「リュミエーナ・コルグス。貴様を魔法省、ラバスト地方幼年学校から除名する!!」
「待って下さい!! 娘はまだ目覚めたばかりです!!」
「そうです!! やっと3日の眠りから覚めたばかりというのに!!」
「五月蝿い!! 無礼な!!」
乱暴……ですね、お役人さま。
娘を案ずる父親を、腕を掴まれたぐらいで投げつける……とは!!
「何故……でしょうか?」
「貴様?! 覚えておらぬのか?」
「……はい、生憎と、自分の名前すら、思い出せない身なので」
2人の驚愕の表情――無理もないですね……
我が愛娘から、記憶を失ったと告げられたのですから……
「……無理もなかろう。分不相応にも、あの様な事をしでかしたのだからな!!」
「あの様な……事?」
「貴様は崇高なる魔法省の設備を破壊し、さらに複数名を殺したのだ!! 本来ならば万死に値!! しかし、我が崇高にして寛大なる魔法省は、貴様を除名し、その身柄を我々で保護する事としたのだ!!」
――いささか矛盾を感じますね。除名しながら身柄の保護、とは……
拘束、と言ったほうが、この場合は正しいのでは?
全く、このお役人様は、語彙力が低いようだ。
しかし気になりますね、魔法省――――魔法っ?!
あぁ!! そう言えば思い出しました!!
私が転生したタイミング!!!!
そう言えばそれは、ついさっきでは、ありませんでしたねぇ――――
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