第4話

 今日は精神科に行ってきた。近況を報告して特に大きな進展はなし。話をしていて思ったけれど、結局私は精神科医を信用していないのかもしれない。傲慢な人間だとは思うが。とはいえ一人で自己分析に取り組むことはよくあるので、精神分析自体には好意的ではある。だとすると今自分が通っている医者を気に入っていないだけなのか。よくわからなくなる。なんというか、精神科医に関してはこれまで自己分析してきた内容を伝えているだけで、特に相手から有効な助言を求めているわけではないのだろう。だが一人で分析するにも限界はあり、他人との会話が思わぬ切り口になることはある。それに自分による自分の精神分析結果なんて、友人にも親族にもそんな簡単に伝えられるわけではない。やはり精神科医は自分にとって必要なのだろう。そして相手がそれなりに話しやすければ問題ないので、今の医者でいいという結論になりそうだ。

 今後自分はどうするのだろう。あと1か月ほどで自分の進退を決めなければいけない。職場に復帰するかそれとも立ち去るか。今の私は立ち去る方に意識が傾いてしまっている。いや、以前からずっとそうだ。休職し始めたころから根本は変わっていない。私はずっと仕事を辞めたいと思ってきた。もっと遡って入社したときからそうだった。その一方でそんな負の感情をいつまで持っているのは幼稚なことだと、自分に言い聞かせながらずっと働いてきたのではないか。いずれこんなくだらない煩悶は仕事に慣れるうちに次第に忘れ去っていく。そんなふうに当時の私は考えていた(多分)。仕事を続けなければいけないという義務感と、やめたいという素直で怠惰な感情がずっとせめぎあっていた。長い闘いだった。十年以上の月日を経て後者に軍配が上がってしまった。私は愚かで弱い人間だ。

 漠然とした不安がある。ただ今は先のことをあまり考えたくない。とはいえいずれ先送りしたツケは払わなければいけない。だが私は納得がいかない。これだけよけいな苦労をしてきたのに、それでもまた苦労をしないといけないのか。なにか腑に落ちない。歪んだ醜い思考が今日も私の脳内を駆け巡る。進展がない。むしろ退歩している。不毛な思考がぐるぐる回る。らせん階段を回りながらずっと下へ降りていくような感じ。不毛に回りながら深く堕ちていく。特に悲しいとも思えない。年をとったのか、昔ほど深く苦悩することはなくなった。現在の状況をそれなりに客観視できているとは思っている。

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