開けない夜

勝利だギューちゃん

第1話

彼女にメールをした・・・

返事はなかった・・・


着信拒否はされていないようなので、届いてるのは確か・・・


もう一度、メールをしてみる・・・

返事はなかった・・・


しかたなく閉じた・・・


「まっ、仕方ないな・・・」

落胆のため息をついた・・・


「さてと、そろそろ寝るか・・・」

床につこうとした時、スマホが鳴った。


開けてみると、彼女からの返信があった・・・

「今すぐ来て・・・」


すぐに向かった・・・

場所は書いてなかったが、おそらくあそこだろう・・・

俺は、急いで走った・・・


チャリはない・・・


ちなみに彼女とは、3人称の彼女であって、恋人の意味ではない・・・


たどり着いた・・・彼女はいた・・・

間違いなかった・・・


「ごめんね・・・こんなに遅くに・・・」

「構わないよ・・・そっちこそ、大丈夫?」

「うん、平気・・・」

なんだか、元気がないが、深く追求しないほうがいいだろう・・・


「・・・くん、」

「何?」

「ここから見る夜景は、きれいだね・・・」

言われて見下ろす・・・

「・・・うん・・・」


いつもは天真爛漫な彼女だが、今日は見る影もない・・・

「ねえ、・・・くん」

「えっ」

「私の事、どう思う?」

「どうって・・・」

「どう見えるって事・・・」

「天真爛漫で・・・」

「やはり、そう見えるよね・・・」

だが、俺はつけたした・・・


「でも・・・」

「でも・・・何?」

俺は正直に話した・・・


「君は、もうこの世の住人ではない・・・」

「どうして・・・そんなことがわかるの?」

「影が・・・ない・・・」

俺は下を指差す・・・

街灯の光で、俺の影はあるが、彼女の影は・・・ない・・・


「そっか・・・やはり、わかるんだね」

「初めて出会った時から、気付いてた・・・でも・・・」

「でも・・・」

「失うのが怖かった・・・」

その一言に、彼女は微笑んだ・・・


「・・・くん、らしいね・・・」

「・・・さん・・・」


しばらくは、何も言わず2人で、夜景を見た・・・


「・・・くん」

「何?」

「鬼ごっこしようか・・・」

「鬼ごっこ?」

「私が逃げるから、捕まえてみて・・・」

「・・・うん・・・」

他に選択肢はなかった・・・


「じゃあ、10数えてね。その間に私、逃げるから・・・」

「で、捕まえられたら、アイテムはもらえるの?」

「うん、君が一番喜ぶ物をあげる・・・でも・・・」

「でも?」

「私を捕まえる事が出来ないと、夜は開けないよ」

「時間制限は?」

「無制限」

そうして、鬼ごっこが始まった・・・


もし彼女を捕まえられたら、夜は開ける・・・

そうすると、彼女は消える・・・


俺は願った・・・

「彼女を捕まえる事が出来ないように」

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開けない夜 勝利だギューちゃん @tetsumusuhaarisu

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