B3 終わった毎日
日は暮れ果て、辺りを夜が支配する。闇に纏わり付かれたかの様に重くなるばかりの体を無理矢理動かして、鳥かごへと帰ってきた。玄関のドアを開けると、何時間前からそうしていたのか、母が虚ろな瞳で立っていた。キョウスケの姿を捉えた途端、その瞳に僅かな光が灯る。
「おかえりなさい!ああよかった!!帰りが遅かったから事故にでも遭ってしまったのかと。ご飯、できてるから早く食べましょう!」
一度熱い抱擁を交わし、キョウスケの手元からバッグを奪って、彼の手を引いて居間へと向かう。着替える間もなくテーブルの前に座り、冷めたカツ丼を手に取る。無言のまま箸を入れて崩し、肉の一片を頬張った。
「どう?美味しい?よかった!あなたの大好きな料理だから、作るのにひと手間かけてるのよ?」
一人頷き、自分も食べ始める母。二人だけの夕食は、母の一人トークショーで賑やかに進められていたが、キョウスケは一人静寂の中で無心に冷や飯を貪り続けた。
食後、風呂に入り、生物的な汚れを落とし、バスタオルを巻いたまま両親の寝室に向かう。室内には、湯浴みを既に済ませた母が、布団の上で横たわっていた。バスタオルから零れそうな母性の象徴が、明かりに照らされて艶かしく揺れる。キョウスケの到着を待っていたように、彼がドアを開けて入ってくると、纏った一枚布を下ろし、愛おしそうに彼を抱き寄せた。
「あなた…愛しているわ。ずっとずっと…。」
体を密着させて唇を重ねる。互いの唾液を一つに混ぜるように口づけをしたまま舌を絡ませる。理性ははっきりと残っている。しかし最初の頃に感じていた罪悪感、悪寒は壊れた日常によって麻痺してしまった。キョウスケは一人の男として、同じ血を持つこの女の欲求を機械的に受け入れた。
禁断の園で甘く鳴くイヴのさえずりは丑の刻まで続いた。体力が尽き、小さく寝息を立てる彼女にそっと布団をかけ、二度目の入浴で落ちない汚れを少しでも洗い流す。パジャマに着替えて暗闇の詰まった大きな棺に戻り、眠りについた。
そしてまた、覚めない悪夢が繰り返される。
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