第2話 Faint 〜覚める〜
俺は真っ暗の中にいて、何も聞こえなく
「…………ぇ……」
『聞こえない。はっきり言って……』
声がかなり遠くて、聞こえないし何言ってるかもわからない。だけど、誰の声だけはわかる。きっとあの子だということに。そしてゆっくりと少しずつハッキリとしてきた。今度はゆっくりと慎重に耳を澄まして。
「……ねぇ……聞こえてるんでしょ?」
やっぱりあの子だ……。どうして
「聞こえてるなら答えて……。なんで……なんで私を殺さなかったの?」
『嗚呼、聞こえてるさ。答える
充分に聞こえていたから俺は素直に言ったが、質問をすると言う。一つだけ謎が深かったからだ。
「ええ、約束するわ……」
『殺さなかったのは……
「………………」
拷問の知識がなかったからこんな手荒な真似しかできなかったが、今思うと彼女はとても辛く、助けを求めていたかのような目付きと痛めつけてしまったこの俺自身がとても許せない。
ただ一つだけ言えることは感情的になってやってしまったことだけはわかってる。彼女の願いも聞くことは一切なかった……。
『無言なら話を変えよう。君は一体何者?』
「…………えっと、その……」
無言な理由がわかっていたために、話題を敢えて変え、少しでも話せるようにしてあげたが……。
彼女は一体何者なんだろうと思い、質問したのだが、返答はないまましばらく待つことにした。が、次の疑問がまた浮かんできたために質問は一つずつすればいいものを一気に答えろと言っているようでなんか嫌な感じがする。
「私には…………わからないわ……何故ここにいるのかとかなぜ存在してるのかとか……」
『だろうと思ったさ。正直、少なくとも君はここの人ではないということはわかっているけどな』
彼女は俺に向かって真実と見られるものを話した。ここにいるのと存在していることについて、これは解く必要がある。それを解くための所要時間は、かなりかかると予想される。彼女のために、その答えを見つけ出すまで探し続けるだろう。
「ねぇ、私は誰なの? どこから生まれたの? わからないわ…………私の家なんてないんだもの…… 」
『家がない、か……っ!?』
この時、変な感じがした。その感じは脳波及び周波数でもある。感じ取った脳波及び周波数は、「殺意」という周波数だった。どこから飛んでいるのかはわからないが、更に探るため、集中すると答えが見つかった。それは、俺のよく知っている。その人物は朱鷺が出していることに気づいた。
『朱鷺、今すぐ「殺意」を消せ。不快で気になってしょうがない』
「朱鷺? 朱鷺って誰?」
「あら、ようやく気づいたの? 待ちくたびれたわ……」
俺が言うと声が物凄く近くに聞こえたが、やはりわからない。が、ただ一つだけ確信したことがある。それは、ようやくと言ったところでずっと前からいたことになる。あとは、
「私はこの未知の人を殺すわ」
この時に、何かが光るのを感じたが、すぐさまわかった。あの時、俺が刺されたものだということに瞬時に確信した。そして、俺は行動に出ることを決意した。この子を守るためにも……
『気をつけろ!! 朱鷺は君を殺そうとしている!!』
「
光ったものが飛んできたから、身を守るために交わそうとしたが、足元ギリギリを狙っていたかのように見えて、刺されてはない。飛んできた方を見るとそこには朱鷺がいた。朱鷺の目には涙が浮かんで、表情も何となく感じとれた。『殺したくない』と心の声が聞こえて、俺はこう言う。
『俺を殺せなくても、この子は殺せると言いたいのか? それは違うな。俺は死んでる人なんて見たくない』
「そう、じゃあ……」
暗いはずなのに、灯りのようなものが光り、歩く音が鳴り響き、目を凝らしてみた。すると朱鷺の姿が現れて手には血がついている包丁を持って、俺は恐れ
朱鷺の顔をよく見ると涙で
「そんなに大事なら壊してあげるわ!!」
『朱鷺、何する気だ!!』
朱鷺は包丁を天高くに放り投げたが、
「潤兄、ごめんなさい……」
そう言って朱鷺はあの子に向かって指すと、1本1本飛んでいくが、少女が後ろに突き飛ばし、前へ立ちはだかって
「生まれて来てよかったよ……また会えることを楽しみにしてるわ……」
『やめろ!!』
少女は笑顔のまま刺る。朱鷺は読んでいたかのように見え、刃物の速さが変わる。俺は失望したが『これ以上死なせたくない』と強く思って体勢を知らぬ間に崩さず、走り少女を抱き締めて守り、5本ぐらい刺さるがその後は腕や脚に掠るだけでもう刺さりはしなかった。
物凄く痛かったが、この子の方がもっと痛いに違いないと思ったが、やっぱり痛いには変わりはなかった。朱鷺は予想が外れて申し訳なさが現れてそのまま消えていった。
「なんで…………助けたの……」
少女は血を吐き、
『守れなくてごめん……もっと早く気付いたらこうなるハズがなかった』
とうとう俺は涙を流した。自分への怒りと悲しみ、怨み、憎しみが強く膨らんでしまい、情けが無いと思った。だけど少女の考えは違った。
「あなたは……私のために…………全力で護ったのよ……? 泣く必要なんて……ないわ……」
俺はこの言葉を聞いて、抱きついたまま泣き崩れた。大人にも関わらず、下の年齢に抱きつくことなんて有り得ない。が、あまりにも衝撃的で耐えられなくなり、泣いて抱きつく他何もなかった。
「……辛かったのね…………」
そう言われて甘えてしまった俺は恥ずかしいけど、懐かしい気持ちが強いため、抱き続けて泣く声が辺りに響き渡る。そして少女の血だらけの手が頭に触れて撫でられて感触を覚えて余計に縋り付いた。
『どうすればいいのかわからない……』
「ちょっと…………辛いけど……言ってもいい…………かな……」
『うん……』
どうしようもできない俺はただただ泣いて抱きつき、甘えることしかできなかったが少女の声はとても言い難そうに聞こえた。顔を見るととても辛そうな表情を見せている。口が開いて真面目に聞こうとする俺。
「あのね…………もう……ここに居ることは…………できないわ……」
『えっ……』
とても声が震えていたようにも見えた。そして俺が少女の全体を見てみると、少女の身体は少しずつ透けていく光景を目にし、小さな光の珠が上に上がっていくのも見える。地面と見られるものは、血が広がって血の海に変わって、生暖かく絶望が生まれてしまった。
「せっかく仲良くなったのにごめんね……もう、行かなくちゃ…………また会って一緒に旅しましょ?
何処までも、何処までも……」
『待って!! 独りにしないでくれ!!』
「もっと一緒にいたかったわ……私、あなたのことが好きよ? 隠しててごめんなさい…………また、会いましょ」
俺が抱き締めていた感覚は一気になくなり、空振りをして光の球は上へと飛び立っていくのを見届ける他何もなかった。だけど、忘れることができないのは、消えてしまう前のあの
『うわぁぁぁぁぁ!! あの子を護れなかった!! 合わせる顔なんてない!! 俺が情けなくて情けなくてしょうがない!! どうすれば俺の罪は償えるんだよ!!』
俺の声が空間に響き渡るが、そんなの関係なく自分を責めては叫んだり、泣いたりしていた中、突然の疲れと眠気に襲われ、叫ぶのも泣くのも
寝ると意識が飛んで、また周りの環境がシャットアウトされて、また声も場所もわからない。何処にいるのかもわからず、ただただ寝ているようにしか思っていなかった。
あれから、2日ぐらい経ったんだろうか。未だに意識は何処かを飛んでいるが、徐々に声が聞こえてくる。
「…………え……」
俺は疑問に思った。この声は誰なのか、場所は何処なのか。更に耳を澄ませて、完全に聞こえるのを待った。すると、案外早く聞き取れた。
「君、大丈夫か?
聞こえてるか?」
ここでやっと俺の意識が完全に戻ったが、疲れは一向に取れることはなかったが、何処にいるのかも把握した。この感じからにして、恐らく病院内だろう。喋りたいけど、喋ることもできなくなって、
「意識が戻ったぞ!! 」
何が起きてるのかも検討もつかず、分からないままでいたが、皮膚の感覚は普段と同じで、何かをされる。そして遂に、俺の思うまま身体を動かせるところまで、回復していた。
「眩し……」
俺は瞼を開くと予想が当たった通り、病院にいた。腕や脚、胸などを見てみると包帯が巻かれて、点滴も打たれていた。どうやら手当てをされていたようだ。辺りを見回すとさっき聞こえた声は空耳みたいだったようで、誰もいなかった。だが、上から見られていたのに気付かずにいた。
「うわっ!! 痛っ!!」
俺は
「イタタタタ……」
俺は頭を
「ごめん、痛かったよな……わざとじゃないんだ……」
謝ったが少女は何も言わずに
「あの子は何処だ?」
あの子を探すべく、辺りを見渡そうとすると、物陰に隠れている彼女は指を指した。その刺した方向を見るととても傷だらけになっているあの子が寝ていた。その傷を見て心配になった俺は、声をかける。
「おい!! 大丈夫か?」
また、勢いよく起き上がるが傷のせいでズキンッと痛みが走り、起き上がれなくて寝こむ。が、ベッドの方に向いて、手を伸ばして手を握ろうとするが、生憎届かず残念だった。
彼女は身体に至るところ包帯が巻かれていて、点滴も打っていた。届かないから手を元に戻そうとしたら、手を握られる感じがして振り向くと彼女から手を握ってきた。とても小さい手だけど暖かく、優しい感じがする。
「よかった……生きてて……」
「ごめん……なさい……」
あの子は涙声でいきなり謝られて俺は困難した。何かしたのかと思って記憶を辿るが、そんかものは一切なかったため余計に考えた。が、物陰に隠れていた彼女が話し始めた。
「こ、ここ、この子はあ、あなたたたの、たたために、かか、庇ったたたと、いいい、言ってましたたたた」
これを聞いてしまった俺は、思い出した。そう、俺を護るために自分の身を犠牲にしたということを。なんでそんなことをしたのか聞きたいが今はその場合ではない、朱鷺の暴走を止めなくてはならない。
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