2か月前

第3話 2か月前 ~ヴィルヘルムよ、お前は俺の……嫁か?~

 二か月前


「お戻りなさいですか孝之殿」

「ウヘェ、すっげぇいい匂い。ホント料理から何から、何でもできるんだなヴィルヘルム。言葉だって少しおかしいところもあるけど、たった一月でここまでかよ。もはや化物だな」

「あちらでも言語は多数あるます。喋れるます。コツ掴むと楽ですよ」

「ハッハ! 天才、だねぇ。それで……リヒャルト君は?」

「この世界の書物を読む。と言ってもシャシンないとわからん。漢字、むつかしい。お帰ったか孝之」

「こっちもこっちですごいねぇ。あのド阿呆で、本当にリヒャルト君の姉も、ヴィルヘルムのお嬢様も……やれてんのかぁ?」


 仕事から帰って、二LDKのマンションに帰ってきた俺。今この部屋に住まう出迎えてきてくれた居候二人が、俺の言葉に呆れたような目で何かを伝え合う素振りを見せたから、どうにも歯が浮いてしまった。


 どうやらアイツは、あちらでも変わり映えしていないようだ。


「ま、いっか。それじゃあ、ヴィルヘルムの飯が冷めるのも面白くない。食べようか」

「「ああ、孝之/孝之殿」」


 それはそうと、玄関で靴を脱いだ俺は、彼らに連れられるようにしてダイニングに向かって行った。

 ちょっと面白い。

 ひと月も暮らして、少しはこの世界に慣れてきたからか……俺の前を行く、スリッパを履く二人を見て、この世界に来たばかりの当初、土足で廊下に上がった彼らが、変わり始めていることを感じ取れた。


「それじゃあ……」

「「「頂きます」」」


 ダイニングについてすぐ、まるで嫁のような甲斐甲斐しさをみせるヴィルヘルムからビールを注いでもらった俺は、掛け声とともに、一気に琥珀色を流し込んだ。

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