第13話 韓非子《かんびし》:才能がありすぎて自殺させられた人物

「中国のマキャベリ」として有名な戦国時代の法家・韓非子かんびしですが(マキャベリのほうが生まれがあとなのでこの表現は変な気もしますが)、才能がありすぎたがゆえに自殺をさせられてしまいました。


 韓非子は韓の国の公子で、「性悪論」で有名な荀子じゅんしのもとで学んでいました。

 このときいっしょに学んでいた者に、のちに秦の宰相となる李斯りしがいます。


 李斯が秦の始皇帝(このときはまだ天下を統一していませんでしたが、わかりやすいように始皇帝と書きます)に仕えたとき、韓非子の著書を始皇帝が読みました。

 

 その内容に始皇帝は、


「これを書いた者と会えれば、死んでもかまわない」


 というほどにまで感心したのです。


 李斯はその著書が韓非子のものだとわかっていたので、それを始皇帝に伝えました。また韓を攻撃する構えを見せれば、かならずや使者として韓非子が来るだろうといいました。


 こうして韓非子は始皇帝のもとにやってきました。


 始皇帝は韓非子を気に入りました。


 ところが李斯は、韓非子が登用されたら自分の立ち場がなくなると怖れ、


「あの者は韓の公子です。秦に尽くすことはないでしょう。

 本国にもどしてもやっかいです」


 といいました。


 それを聞いた始皇帝は韓非子を投獄。


 李斯はこれを機にと、牢獄に毒を送って自殺するよう仕向けました。


 韓非子は、始皇帝と話がしたい旨を伝えましたが、李斯は始皇帝の気が変わることを恐れてそうはさせません。


 けっきょく韓非子は毒を仰いで亡くなりました。


 こののちの始皇帝ですが、韓非子の書の内容を忠実に守ったかのような厳格な法治をおこない、天下を統一します。焚書坑儒もある意味韓非子の書のとおりにやったといえるでしょう。


 人生、才能があっても、どこでどうなるかわかりません。

 ただ韓非子は死すともその書は後世に残ったので、永遠の命を得たともいえるでしょう。

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