閑話休題。【地球送り】についての解説

 【地球送り】とは、月の都の若い官女へ与えられる由緒ある刑罰の一つである。

 

 もともとは罪を犯して穢れた月の官女を、不浄の地である地球に永久追放するという島流し(星流し?)の一種だった。

 それがいつしか時代を追うにつれて、罪を犯した月の官女が地上に降り、善行を重ねて自らを清めるという、再び月へ帰還するための贖罪の儀式へと姿を変えていった。



 島流しから贖罪旅行という制度上の変化は、月の女王が『かぐや姫』と呼ばれていた時代、【生まれ直し】という形で彼女が地球で贖罪を行ったことを機に決定的となった。

 このかぐや様の贖罪記は日本最古の古典『竹取物語』として人口に膾炙している。


 しかし、『竹取物語』を読む限りでは、かぐや様は地球での生活をそれなりにエンジョイしており、あまり反省しているとは思えない……。





 とはいえ、これ以降官女たちの贖罪旅行としての【地球送り】は制度化された。

 ところが地球に送られた官女たちの中で、ごくまれに命を落としたり、地上の男と結婚する者たちが現れ始める。

 この天女(月の官女)たちと人間界の住人達との交流の記録・伝承が現在日本各地に残る『羽衣伝説』の正体である。



 ちなみにだが、かつてある天女が地上に夫と子供を残して月へと帰った際、残された子供たちが夜な夜な月に向かって笛を吹き、太鼓を打ち鳴らしていた姿を見て、哀れに思ったかぐや様は【地球送り】を取りやめたそうである。

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