温かいスープと冷えたゴミ
軍の施設で
あの重い扉を重い扉として開けているのは私だけか――と、獣使いの少女は言い得ぬ不公平さを感じる。代償となっているものを考えると、一つも羨ましくはないが。
「低体温の人間に低温の野外は堪えます。あと一歩で死ぬところでした」
「それ、冗談のつもり? ひとつも笑えないんだけど」
遅れてやってきた少女は軍部支給の重苦しいコートを脱ぐと、少年の隣に座る。
「何故、あなたが隣に座るのかしら?」
「あなたが隣を確保していないからです」
――この子、ほんと嫌い。
「では席を交換しましょう」
「……ええ、そうね! そうしましょう!」
私の好意を汲み取って、こうするためにわざと――。それなら、やっぱり好きかもしれない。
二人が席を入れ替えると、来客に応じる執事のような人間が食器の位置を変え始めた。次いで給仕がやってきて、
「ついこの間まで捕虜だった身としては、このような扱いを受けて良いものか戸惑います」
「あなたでも戸惑うことってあるのね」
「当たり前じゃないですか。高々十三年しか生きていないのですから、人生経験ではあなたに劣ります。この状況で堂々とは、中々できません」
それって、私のことを年増だとでも言いたいのだろうか――。
額をヒクつかせた獣使いの少女は、こういうのは全て慣れだから、と少々感情的な物言いで応えた。
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