あねこま後日譚
10.5
黒衣森、北部森林。葉を赤茶色に染め上げた木々が立ち並び、辺りにはオポオポが群れで暮らすのどかな森林地帯だ。グリダニア旧市街地を
そこにはオポオポの群れと戯れるねこまと、お酒を飲みながら釣りをするアネの姿があった。
「釣れねぇ…。」
全く引きがかからない釣竿を持ち続けて1時間。はぁ、と漏れるため息も、これで何度目だろう。
ねこまはひとかたまりになるオポオポの集団の前に立ち、何かしているようだった。
1匹のオポオポがキィキィと鳴き声をあげると群れはそれに反応するように騒ぎはじめた。
オポオポから花束を手渡されるねこま。再び1匹がキィキィと鳴くと、群れはさらなる盛り上がりをみせた。
「ん…?何やってんだ…?」
様子を伺うアネ。
「マー!」
ねこまがニコニコしながら花束をオポオポの群れに投げつけた。オポオポの群れはそれを掴み取ろうと、周りを押しのけ必死の形相で一斉に飛び上がる。ブーケトスごっこをしているようだ。
「…ほんとに何やってんだ…うおっ!」
そのとき、不意に竿に強烈な引きがかかった。
「おおおお、この手応えは…!!間違いねぇ…!!」
リールを極限を超えた力で巻き上げる。水しぶきを上げて近づく魚影。間違いなくサーモンだ。
「うおおお…へへへ…!!また会ったなぁ…!!ねこまァ!!」
「マ!?」
オポオポ達に胴上げされているねこま。アネの呼び声に気づき、スルッと地面に着地してオポオポの群れに手を振り、アネの元へ駆け寄る。
「マー?」
「来たぞ、サーモンだ…!」
橋の柵に飛び乗り川面を見るねこま。
「マァ!!!サカナ!!!」
「絶対捕獲するぞ!行け!ねこま!!」
「マー!!!!」
掛け声と共に意気揚々と橋から飛び降りるねこま。標的からすぐの位置に降り立つと素早くサーモンの後方に移動し、両腕を構える。
「手ぇ怪我すんなよ!よし、やっちまえ!」
「マッッッ!」
振り上げた両手を、ザバッと水の中に突っ込む。しっかりと魚を捕らえた事を確認すると、思いっきり魚を水中から引き釣り出した。水しぶきが辺りを舞う。
「マァァァ!」
「おおおおお!!ねこま!!良くやった!!」
「トレター!!サカナー!!!」
ねこまは掴んだ魚に目を向ける。引き上げられたばかりの魚はその身体を全力で左右に振り、逃れようとしている。
「おーい!ねこま、ありがとう!」
アネの声は、いつかのように川のせせらぎと共に流れゆく。
「え、おーい。」
「…。」
口からヨダレを垂らすねこま。
「待て、待てよ…?」
そして暴れる魚を脇に抱え込むと、釣り針を引き抜いた。
「ああああ!やっぱりじゃねぇか!帰ってこい!ねこま!」
「イタ、ダキ、マス!」
「待て待て待て!!だからそのまんま食べるとかねぇから!!待て…えぇい!!!」
釣り竿を放り投げ自らも川へ飛び込むアネ。
大きく口を開き、頭からかぶりつこうとするねこまの元へ駆け寄る。アネの手がサーモンに触れるその手前。川底の石に足をつまずき、川の中へ倒れ込むアネ。
「ああああああああああ!!!」
アネの巻き上げた水しぶきがねこまの顔にかかる。
「マッ…」
狩人にあるまじき一瞬の隙。魚が最後の力を振り絞り身体を極限にまでよじらせた。ねこまは不意をつかれ、捕らえた魚を手放す。水から顔を出すアネ。ドボン、と聞き覚えのある大きな入水音が2人の脳を突き刺した。
「マアアアアアアアアア!!!!!」
「うあああああああ!!まただぁぁぁ!!!」
終
あねこま前日譚 @Ane3
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