10
「え…えた…ばん…じゃと…?」
「マ!」
「そういう事だ。」
夜。時間はだいぶ遅くなったものの、アネはねこまをハウスへと送り届けるついでにピピミと面会していた。
2人は和室の床に正座し、ピピミと対面する形で向き合っている。
「それが感情を抑制する方法、と…?」
「あぁ。自分でも感じていないような自分の奥底にある感情を、ねこまが感じ取ってくれていたんだ。」
「マ。」
「俺から何かを感じ取るその度に助けられてた。感謝してるよ。」
ぐぅ、とねこまのお腹が小さく鳴る。
アネはカバンから肉を取り出してねこまに渡し、そのまま話し続ける。
「もちろん今のまま、ねこまに助けてもらい続ける訳にはいかない。1日でも早く、この呪術を解く方法を探すためにまた冒険を続けるよ。いつまでも腐ってないで、な。」
ピピミがお茶を1口飲み、ねこまを見る。
「ふむ。ねこまはそれでよいのか?このうつけのそばにおらねばなるまいのじゃぞ?」
「マ!アネサン!ニクくれる。」
「ははは!ほれ、ねこま。」
「マー!!!」
「うちのねこまに餌付けしよって!!」
「信頼関係が形になったんだ!俺とねこまはギブアンドテイクな関係なんだよ!な、ねこま?」
「ギ…ギブ…?」
「ほら、そうだってよ。」
「言っておらぬではないか!!」
「まぁ、でもさ。」
「一緒にいて楽しいから、ってのもあるよ。」
「マ!タノシイ!」
「ふむ。」
「シャチョー!さっき!カニたくさンタベタ!」
「ほぉ。蟹とな。それはまた良いものを。」
「また食べたかったらいつでもさばいてやるよ。」
「マァ!!!!」
「ふふ。まぁお主らが良いのであれば良い。見たところ、今朝とは別人の顔色をしておるしのお。」
「そうか?はは、リオンとも仲直りできたからな。」
「デキター!ヨカッタ!」
「ねこまのおかげだよ。ありがとうな。」
「マ?」
「はは。ほら、肉だ!」
「ニク!!!!」
「…ふふ。」
少し呆れたような顔で笑うピピミ。
「それで?式の日取りはもう決めてあるのかの?」
「あー、それが、先に各地の秘石を巡礼して、祈りを捧げて来いってさ。今から行ってくるけど、よくわかんねぇな。」
「ナー。」
「むむ。」
ピピミの目がキラリと光る。
「それは面白いことを聞いたのじゃ。」
「マ?」
ピピミはすっとリンクシェル通信機を耳に当てる。
「各員!通達じゃ!!」
「え!!」
「エオルゼア各地に点在する十二神秘石にて、各々別れて待機せよ!!アネとねこまの巡礼が始まるぞ!!!」
ピピミの通信機から、ガヤガヤと話し声が漏れている。
「おい、やめろ!来るな!」
「ふふふ。アネとねこまじゃぞ。こんな面白い取り合わせでの挙式など、そうそうなかろう。ならば全てを見届けるのが、わらわの役目と言うものよ。」
ピピミが悪い顔をしている。困惑するアネをよそに、ねこまはよくわからないと言った顔をしていた。
「では、わらわも向かうとしよう。二人共、また後での!」
ピピミはそう言い残し、テレポで飛んでいってしまった。
残された2人。
「マ?」
「あー…はは…。なんだこれ。」
「タノシソウだネー。」
「そんなことねぇよ…めんどくせぇ…。」
「キコエル。」
「うぇ。それ、厄介だな…ははは。…まぁ、ねこま。」
「マ?」
「これからよろしくな。はは。」
「マ!!!!」
あねこま前日譚
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