4
川のせせらぎと小鳥のさえずり、木の葉の揺れる音。その中に混じってねこまの落胆の声だけが聞こえる。
「…サカナ…ウゥ。」
「………。」
アネは川のど真ん中で俯くねこまの服の襟に、器用に釣り針を引っ掛ける。
「?」
そして勢い良くリール巻き上げ、川からねこまを釣り上げた。
「マァアアアアァァァァァ!」
一気に引き上げられ、橋の柵の外で宙吊りになるねこま。
釣竿を構えるアネに気付くと、にこやかに挨拶した。
「アネ!おはヨウ!」
「おはよう、ねこま。もう15時過ぎだ。てかお前、何してんだ。」
「サカナ!にげらレタ!」
「奇遇だな。俺もなんだ。」
「デッカイ!サカナ!うううう…。」
「それ俺が釣ってたやつな!!」
「そうなのカー?」
「釣り針引っこ抜いたろお前!」
「………?」
「なんで覚えてねぇんだよ。もう、いいけど。」
ぶらぶらと揺れるねこまを橋に下ろすアネ。ねこまはずぶ濡れだが特に気にもしていないようだ。
「こんなとこで何してんの。」
「キノコ食べにキタ!」
「採りに、じゃなくて食べに、なのな。」
「オイシカッタ。」
「ならよかったよ。ほら、キノコ探しに行きな。釣りの邪魔をするんじゃない。」
「アネ、遊ばないのカー?」
「今は深刻なギル不足なんだ。今晩のメシ探しの方が重要だから、また今度な。」
「ビンボーシャチョー!」
「こらねこま!どこでそんな言葉覚えた!!」
「ミンナ、いってタ。」
「くっ…!!今に見てろ…。じゃあな。」
「ジャアナ!」
ねこまはトコトコと小走りで帰っていく。1人残されたアネ。どこか背中が寂しげである。
「サーモン…。手づかみのが取れるのかな…はぁ。」
「マ?」
「うおっ!」
アネの足元に再び現れたねこま。両腕に大量のキノコを抱えている。
「え、そのキノコ、今採ってきたのか?早くねぇか?」
「スグ見つかル。から、アゲル。」
そう言うとねこまはキノコを1つだけ自らの口に押し込み、残りを全て渡した。
「え…いいのか?」
「マ!」
「ありがてぇ!まさかねこまから食べ物を貰えるなんて…!」
「げんき、だして!ジャアナ!」
「?お、おう。ありがと、じゃあな。」
そう言い残して再び駆けていくねこま。
「今日はキノコソテーだな…。」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます