第31話 動物型ヒーローキラー
『ちくしょー!』
空からロボットが降ってきた。
木にぶつかり、なぎ倒しながら地面を滑っていく。
装甲にいくつも穴が開き、片腕は綺麗な断面で切断され、ボロボロだった。
このロボットは、早和を追っていたがパンプキンシードと出会ってしまい逃げ出した、あのロボットだった。
『ってヤバいヤバいヤバい!』
ロボットの前方部が開くと、中から高校生か大学に入ったばかりか位の年齢の少女が出てきた。
「追ってきた!」
空を見上げると、慌ててロボットから降りて走り出す。
その直後、空から何かが突っ込んできてロボットが破壊され、爆発する。
爆発の中から歩いて出てきたのは、オオワシ位の大きさの鳥型ロボットだった。
ヒーローキラー六型。
空を飛ぶヒーローと戦う為の物だった。
目からの光線と、あらゆる物を切り裂く鋭い爪が武器。
他にも動物型は犬型の五型がいる。
六型は優れた視覚と聴覚で、五型は優れた嗅覚と聴覚でヒーロー達を探し、狩る。
「うわっ!」
少女が転ぶように倒れ込むと、そこに六型の光線が飛んできた。
もしそのまま立っていれば光線にその体を貫かれていただろう。
「ちょ!」
だが、倒れ込んだだけでは回避しきれなかった。
六型は光線を出したまま顔を下げる。
横に転がってそれをかわすが、光線は追ってくる。
転がるよりも顔の向きを変える方が早い。
(逃げ切れない!)
「ジェイガーガン!」
どこからか撃たれた光線が、六型に直撃した。
だが、ヒーローを倒す為に作られたというのは伊達じゃない。
少しよろめいただけで、ダメージは無いようだった。
「大丈夫だったかい?」
倒れた少女に手を差し出したのは、魔剣を持った女騎士だった。
「やっぱり変身しないと駄目みたいですね……チェーンさん!」
「……はいはい」
タイトスカートを穿いた女性が叫ぶと、かったるそうな顔をしたジャージ少女がのそのそと歩いてきて、袖口から鎖を伸ばす。
厳密に言うとジャージ少女は外見こそ少女だが、実年齢は二十四歳だったりする。
それを六型にぐるぐる巻きつけ拘束しようとするが、六型が羽を広げると、あっさり鎖は破壊されてしまった。
「駄目みたいですね」
「いやチェーンさん諦めるの早過ぎですよ! もっと頑張って下さい!」
「いや無理だって。無理無理」
「では私が行こう」
すると、女騎士が六型に近付く。
「ク、クラヴィスさん!?」
「心配するな。君達は彼女を頼む」
そう言ってロボットに乗っていた少女を指すと、クラヴィスと呼ばれた女騎士が腰から下げた剣に手をかけた。
「行くぞ、グォルディオ!」
「い、いえ、心配とかそういう話ではなく……」
「あー嫌だ嫌だ嫌だあの声嫌だぁ~」
剣を抜いた瞬間、チェーンとジェイガーが耳を押さえてしゃがみ込む。
「え、な、な――ひっ!」
ロボットに乗っていた少女は知らない。
グォルディオを鞘から抜いた時に響く、恐ろしい悲鳴を。
「――――――!」
剣から聞こえる悲鳴に、少女の上げた悲鳴が飲み込まれる。
ロボットの六型には悲鳴の意味がわかっていないようだが、単純な大音量に少しだけ警戒した様子を見せた。
「私はこれでも平和主義者でね」
悲鳴が収まると、女騎士の白く美しい鎧が、醜悪な色と形の物へと変わる。
「君のように命や感情の無い者が相手でよかったよ」
剣を構える。
「痛みや恐怖を知らぬ者が相手なら、一切を気にせず全力で戦える」
六型が目から光線を発すると、クラヴィスは姿勢を低くしてそれを回避し、駆ける。
六型は先程のように顔の向きを変えて光線でクラヴィスを追うが、彼女は重そうな鎧を着ているのに素早かった。
あっという間にすぐ近くまで接近されたので、六型が空を飛んで逃げる。
「終わりだ」
クラヴィスは素早いだけでは無かった。
高くジャンプすると一瞬で六型に追いつくどころか追い越し、剣を振り下ろすと、六型は頭頂部から股下までを切断され、真っ二つになった。
「さて」
クラヴィスが空中で周囲を見る。
「次は君達か」
六型は一体だけでは無かったらしい。
周囲にはゴミ捨て場にたかるカラスのように沢山の六型がいた。
六型達が一斉に光線を発射する。
空中では回避が出来ない。
全てがクラヴィスに直撃する。
「きゃぁぁああああ!」
それを地上から見ていたロボットに乗っていた少女が、悲鳴を上げた。
「「………………」」
だが、チェーンとジェイガーの二人は特に反応を示さない。
「あ、あの人! あの人早く助けないと!」
「え? あぁ……いいんじゃない? 別に」
「大丈夫ですよ!」
ジェイガーが両手の拳をグッと握って力説する。
「クラヴィスさんは、強いですから!」
彼女の言う通りだった。
放たれた光線は、クラヴィスが周囲に纏っている黒い瘴気に触れるとそのまま消滅して、クラヴィスにまで届いていなかった。
「はぁっ!」
クラヴィスが剣を振るとその黒い瘴気が周囲に広がり、六型を包み込み、その身を腐食させる。
発声機能がついていないのだろう。
悲鳴こそ上げないものの、六型達は苦しそうに口を開けてバタバタと翼を羽ばたかせながら落下していく。
ジェイガーのジェイガーガンを受けてもビクともしなかったその身だが、瘴気によって脆くなってしまったのか、地に落ちた瞬間、ガラス細工のように粉々に砕け散った。
「ほら、どうですか!?」
何故ジェイガーがドヤ顔になっているのかは意味不明だが。
地面に綺麗に着地するクラヴィスの姿を見て、少女がその強さを理解した。
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