恋愛歴
かすみ
第1話
18歳。
高校中退し、決めた仕事はキャバクラ
煌びやかな街ではないけど、寂しくもない。
そんな街の一角にあるキャバクラで働き始めた。
入店時に源氏名を「華」と自分で付けた。
キラキラネームが流行る中、みんなに覚えてもらえるようにと簡単な源氏名にした。
オープンしたばかりの店内は、ガラス張りでカラオケがある。
狭すぎず、広すぎず。
周りを見渡せて、密接な感じにならないような造りになっている
私達には接客しやすい環境だ。
でも、お客様からしたら…
もう少し暗い方が…もう少しテーブルとテーブルの間が空いていたら…と思う人もいるだろう。
一緒に働いている仲間ともみんな仲がいい。
良く思い浮かぶ、女同士のお客の取り合いなど程遠い。
スタッフも含め和気あいあいとしたお店。
お客様同士も、何度も顔を合わせていると軽い会釈から、一緒にカラオケを歌うまでとなる。
同じ女の子を指名しているお客同士さえも仲良くなるからお酒の力は凄い。
そんなお店で働き始めて1ヶ月もすると、ほとんど毎日出勤してる私は、お客様もだいぶついてきた。
初来店のお客様につくと、ほとんどの人はすぐにまた来てくれて本指名してくれる。
指名がない時は、華ちゃん指名ないの?じゃあ呼んであげるからこっちおいでよ。と場内指名を入れてくれる。
お客様それぞれに合った、話の内容やトーンを見つけて居心地が良い時間を過ごしてもらうことを心掛けた。
カラオケが好きな人には、一緒に歌って踊った。
悩みを聞いてもらいたそうな人には、席をなるべく静かな場所へとスタッフにお願いし、ベロベロな酔っ払った人には、お酒だよとグラスを渡して水を飲ませた。
案外気がきく女なんだ…と自分でも驚く。
見た目が歳より上に見られる私は、お化粧をすると更に上に見られる。
お給料もかなりもらえるから、好きな洋服も買えるし、美容室へも好きなだけ行けた。
だから落ち着いた雰囲気で色気さえもある18歳へと少しずつ変身していった。
そうなると、本指名で呼ばれるお客様も少しずつ変化してくる。
ただ一緒に楽しむだけ…から本気の誘いへと変わってくるのだ
でも、それが嫌なわけではない。
私の人生最大のモテ期到来。
上司に連れてきてもらい、初キャバクラを体験した同い年のケンちゃん。
無理して1人で何度も通ってくれた。
ケンちゃんとは一度ディズニーランドへ2人で行った。優しくて笑顔が可愛い。
ひとつ上の大くん。
いつも友達と来て、どんちゃん騒ぎしていく。
でも最後の方には必ず、店辞めて俺の所に来い。って言う笑。
20歳になったばかりの聖くん。
ついて来いタイプの、酒豪。
毎回お店に来る前に電話をかけて来て、今から行くから俺以外の指名は全部断れ!とドSぶり発揮する。
でも、嫌じゃない。
なんせカッコ良い。
アダ名はファザー
彼女がいる。でも華ちゃんも好き。
そんなことを言ってくるファザーは、サーファーで人生を心底楽しんでる。
だから車で海へ良く連れて行ってくれた。
私より18コ上の既婚者。村田さん
別居中で、好きな事やりたい放題。
突然、温泉へ行くからと車で迎えに来て拉致られる笑。
突然、車の鍵を渡され、そこの駐車場に停めてあるやつ買ってきたからどーぞ。と…
突然、マンション借りたから、そこへ引っ越せと…
その頃には、私には居なくてはならない人になっていた。
それでも私は毎日出勤し、キャバ嬢を続けていた。
色んなお客様に、綺麗になったねー
彼氏でも出来たんじゃないのー?
と言われる。
内心はそうそう。と思いながらも「もともと綺麗なんですぅ」などと言っていた笑。
村田さんに会う前の私と、今の私とは明らかに違う。
少し余裕さえ見せられるような女へとなっていた。
でも、俗に言う不倫。
別居中とはいえ、ずっと一緒にいられるわけではない
私も私で、お店の友達と遊ぶ時間も大切にしていたし、時にはお客様とも出掛けたりしたから寂しくもなかった。
お店が終わり、マンションへと帰る。
1人でお風呂に入っていると、鍵を開ける音が聞こえる。
急いで体を拭き、バスタオル姿で村田さんに抱きつく。
ずっと待っていたわけではないけど来てくれた喜びを私なりに表現する
体の関係はどうでも良かった。
無くてもあってもどっちでも…
ただ2人で居られる時間が大切に思えた。
唯一、甘えられる人を見つけた。
安心できる場所を見つけた。
離婚を迫ったりなんかしないよ。
いつまで側に居てくれるかなんてわからないけど、今この時が幸せならそれで良かった。
恋愛歴 かすみ @maaco
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