第一幕 1.レェィズィパーソン、寝坊する

AM 10:29 とある少年の家


 …ピピピピッ、ピピピピッ、ピピピピッ!

「あんたっ!もういい加減、起きなさいよーっ!!」

耳元で目覚まし時計と尖った口調の少女の声のダブルパンチが襲う。

「う~ん、あともう少しだけ… むにゃむにゃ… Zzz…」

取り敢えずふざけた寝ぼけ口調で様子を見る。上手くいけば、このままやり過ごせr…


       ガゴーン!



頭に何やら固いものが…!(後に気付いたが、この固いものは素手だった…。マジで頭、割れるかと思ったわ…。しかしこいつ、ほんと馬鹿力だよなぁ…。)と感じた瞬間にはもう叫んでいた。

「いっでぇー!何すんだよっ!」

イライラしながら眠たい目を擦って、それを起こした元凶の方をちらりと見る。そこには、腕を組んで仁王立ちをして、さらには眉間にシワを寄せた少女がいた。明らかにご立腹である。

「あんたの為にやってるんでしょーがっ!今日、あんたの16才の誕生日ってこと、知ってるよね!?おーい!」

「はっ!!いっけねぇ!忘れてた!!」

今までの少女への腹立ちと眠気を通り越し、今度は焦りがやって来た。少女はというと、怒りを通り越し飽きれが来たらしい。御苦労なこった。

「はぁーっ、やっぱり忘れてるしっ…!おばちゃんに聞いたらまだ寝てるって言ってたからひょっとしてと思ったら案の定そうだったわ…!これだからヴィムは…。大体今、御苦労なこった、とか思ってたでしょ!どーゆうことよっ!!ほっんとあんたは………」

っといった様に自分を捲し立ててくる少女。この姉貴ぶった、嫌なやつの名前はアレクシア。カレンベルク・アクレシア。ショートボブのブロンドヘアに、目の色はエメラルドグリーン。自分の家の隣に住んでいる。所謂、幼馴染み。性格は何だ、ほんっとをしているが、顔立ちは割りと整っていると思う。年は自分と同い年。のくせに姉貴面をする。困ったもんだ。しかも、誕生日は1日違いだけだ。こいつは11月11日、僕は11月12日。更に言うと、こいつは11日の深夜に生まれている。つまり、差は数時間しかないのだ。やれやれといったところだ。あー、そうそう。因みにだが、おばちゃんっていうのは、自分の母親。ヴィムっていうのは自分のことだ。ニックネームであるから、本名ではない。本名はヴァルネファー・ヨハン・ヴィルヘルム。ヴィルヘルムを略してヴィムだ。見た通り、長たらしい名前だから自分でも大抵、ヴィムと名乗っていryu…。



 「………おーい!って!!おーい!」

「えっ!?」

「えっ!?じゃないのっ!またボヘーッってしてて!だからぁ!私は先に役場に行ってるからね!11時に間に合わなくなっちゃうし!あんたも速く準備しなさいよ!遅れちゃダメだからね!!」

あー、しまった。また、ボーッとしてしまっていた。色んな事を考えてしまうのは、自分の悪い癖だ。いつの日からか自分は考えすぎてしまう節がある。治そうって思ってもそう簡単に治るものではないな、うん。

「分かった分かった。速く準備するよ。」

と言ったときにはもうそこには誰も居なかった。

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