音楽の都とサクソフォン ~始まりのサクソフォン~

綾乃音

Opening

 サワサワと小風に揺れる、街並みの中に生える木々。美しいゴシック様式の街並みに暖かな太陽が顔を出す。小鳥たちが囀ずり始め、朝を告げる。ここは、ヴァネッサ。音楽の都と名高いこの都に朝がやって来たようだ。とても長閑な雰囲気を醸し出している都に途端、トランペットの華やかにも美しく、そして五月蝿すぎず…、心地よいモーニングコールが鳴り出した。それは、まるでトランペットの妖精の加護を持っているかのように、本当に本当に心を奪われるメロディーである。メロディーは小風に乗って都へと優しく広がっていく。そんな中で何処からか、誰かの独り言のような綺麗な澄んだ声がトランペットと美しいハーモニーを奏でながら聴こえてきた。


 「さあさ、来たさ。始まりの。とある少年。やって来て。サクソフォンの声がする。」

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