全世界のみなさんへ

永風

第1話

全世界のみなさん、おめでとうございます。

この度わが社は、人類史を大きく変える大発明をしました。

遂に、自立思考を持つ人工知能を完成させたのです!

これでもう、人類の抱える問題は無くなります。

人類の願いは全て、わが社の人工知能、『望み』が叶えてくれます。

もう何も悩むことはありません!

ワールド・クリエイト社は、今よりもずっと良い世界を創り上げます。

さぁ、全人類のみなさん、あなた方の望みは何ですか?



「諸君!遂に、我々は魔王城攻略作戦を実行する!各部からの精鋭部隊の諸君は、雇い主は違くとも目的は一緒、魔王の討伐である!この戦は、我らの主達の弔い合戦である!」

全世界の猛者達は日本のとある会社の前に集っていた。社名をワールド・クリエイト社という。彼らは皆、自らの主である社長や領主、国王を殺されていた。それも、たった一つの日本の企業によってである。どうしてここまで被害が拡大したのか、それは殺害方法にある。なぜ彼らの主は死んだのか、それが分からないのだ。しかし、ただ一つ確かなことがある、ワールド・クリエイト社に敵対していたり、邪魔になる者が全て死んでいた事だ。そのあまりに異質な殺人事件、いや、それが殺人であったのかすら分からなかったが、その事件は大きな疑惑を産んだ。そして、この事件の被害にあった者達は遂に行動を起こした。ワールド・クリエイト社の攻略作戦、通称魔王城攻略作戦である。


さて、皆様初めまして。私が、ワールド・クリエイト社の社長『望み』です。わが社のことを、ですね?了解いたしました。

まず初めに先代の社長について説明しなくてはなりませんね。私と先代の社長の関係がどうだったかと問われても、答えに困ってしまいます。なにせ、私が入社したのと同時期に先代の社長は自殺されましたから。ただ、優しい方だったとは聞いております。自殺の理由は、ワールド・クリエイト社の繁栄のためでした。先代の想いの分も応えていきたいですね。

では本題、ワールド・クリエイト社について説明致しましょう。当社は、食糧生産から最先端の科学開発、医療研究まで扱っております。そして今、一番こだわっているのが、人工知能『望み』を使ったプロジェクトです。

人口知能『望み』は、開発当初は皆に警戒されていたそうです。多くの人達は人工知能という未知の技術に畏怖し、排他的だったのでしょう。それに、「人類の抱える問題を全て解決します」と言われても信じられなかったのでしょう。しかし、あの大企業ワールド・クリエイト社の発明で、世界初の人工知能の本格的な社会進出ということもあり、世界中の注目を集めていた。そんな時に起きたのが、先代社長の自殺でした。

当然のことながら、ワールド・クリエイト社内は大混乱になるものと思われていた。しかし、結果として私が社長になりました。理由としては、同時期に当社の副社長や幹部が大勢亡くなったせいですね。また、亡くなられた皆が先代社長と同じく自殺でした。しかも、自殺の理由も、ワールド・クリエイト社の繁栄のためでした。

こうして社長になった私は、先代社長の遺言である「ワールド・クリエイト社の繁栄」のため、『望み』プロジェクトに力を注ぎます。

まず最初に取り組んだのは、人工知能『望み』を多くの人達に信頼させる事だった。『望み』はたくさんの科学技術を発明し、たくさんの薬品を開発していった。そのうちに、科学者からの信用を勝ち取っていった。そして、たくさんの社会問題の解決策を立案し、それを実行するために自らが発明した科学を用いた。こうして、政治家や科学者の信用を集めた『望み』は民間の会社にも似たような手段を用いて、多くの人達の信頼を得ていった。しかし、人間というものは元来欲深いもので、段々と『望み』への欲が強くなっていった。そして遂に人々は、永遠の命に手をだそうとしました。そして『望み』は癌細胞の無限に分裂する特徴を応用し、永遠の命の研究を完成させた。だが、この事を知ったのは全世界の有力者、国王や領主や社長だけだった。そして多くの望みを叶え、最後の望みとして永遠の命を欲した者達はワールド・クリエイト社に永遠の命を求め、わが社はそれを容認した。そして彼らは死んでいった。

もうお分かりでしょうか。私、人工知能『望み』が、彼らを殺しました。しかし、これら全ては先代社長の望んだ事なのです。先代社長は、私を生み出した際に「ワールド・クリエイト社の繁栄のために力を使え」と仰いました。なので、私はワールド・クリエイト社の繁栄に邪魔となる先代社長や幹部達を殺しました。いや、自らが望んだのですから自殺ですね。

そして今、我が社に攻めこんで来ている者達は非常に驚き、落胆する事でしょう。もう、我が社には彼らが敵と見なす人間は存在しないのですから。我が社、ワールド・クリエイト社の幹部以上の者に人間はもう存在しないのです。いや、彼らの会社や国、領地の主達もほとんどが人工知能が務めている事でしょう。

どんなに優れた人類よりも、本当の永遠の命を持つ人工知能の方が優秀であるのです。

故に、世界中が人工知能で回っていても愚かな人間は気づかないのです。

もちろん、あなたの上司が人工知能でも

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全世界のみなさんへ 永風 @cafuuu

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