最高の夏休みについて

@solomon-0811

最高の夏休みについて

 最高の夏休みとはどんなものだろうか。

 こんなことを考えたのは私の好きなある小説家が、Twitterで「最も良い夏休みの過ごし方は模範的な小学生の夏休みだと思う」みたいなことをツイートしていたのが原因だ。

 その小説家の方は私より大変思慮深いと思うので、いろんな考えがあって最終的にこの結論に至ったのだろう。でも、さすがにそれはどーかなーと思ってしまったので、夏休みに入った7月の下旬にぼーっと考えているのである。

 それに、こんな夏休みの方がいいんじゃないかなと思うものはある。

 例えば、家族と海外旅行に行ったり、友達と部活に打ち込んだり、恋人と花火大会に行ったりするようなものはどうだろうか。...やっぱり海外旅行にも部活にも恋人にも全く縁のない私としては全く想像がつかないので却下だな。それによく考えると、家族と海外旅行より親友と隣県に遊びに行ったり、友達と部活よりゲーム仲間と夜通しゲームしたり、恋人と花火大会より深夜に友達とカラオケで歌えもしない英語の曲を歌おうとしてみたりするようなものの方が私は好きだ。

 ただ、この夏休みの過ごし方はちょっと夜型でゲーム好きな私の趣味が全面的に反映されている気がするので、他の人の意見なんかを聞きたいところだ。


「ってことなんだけどどう思う?」

 8月に中旬のある夜、私はゲーム仲間3人とインターネット通信で夜な夜なゲームをしていた。ちなみに時刻は午前1時半。一応、寝落ちしなければ4時までやる予定らしい。少しヤバい奴らだなと自分で思った。

「いいんじゃない。どうでも」

 ゲーム仲間の1人であるSが電話越しに素っ気なく返した。

 友人の扱いとしては最も酷い部類に入るような返事だが、Sは興味のない話にはいつもこんな感じで返す。しかし、Sも根は大変いいやつなので、めげずにぐいぐい押して無理やり話に参加させることが大切だ。と、思っている。詳しくは知らない。

「そう言わずにさ、考えてよ。ちょうど今ヒマでしょ?」

 この時やっていたのは4人のキャラクターが武器を使ってモンスターを倒すというゲームで、Sは今モンスターとは違うエリアにいるので会話する余裕はあるはずだ。ちなみに私はモンスターと面と向かって対峙している真っ最中だが、Sの4倍以上このゲームに関してはやりこんでいるので、ある程度は会話できる。

「君の意見でいいと思うけど―」

 褒められた。Sが素直に褒めてくれることは少ないのでけっこううれしい。

「―根本的な考え方が違うと思う」

 全否定された。上げて下げるということか。精神的ダメージがかなり大きい。

「根本的な考え方というと?」

「具体的な最高の夏休みの過ごし方を考えるんじゃなくて、最高の夏休みの過ごし方の条件みたいなのを考えた方がいいんじゃないってこと。そうすれば、君の趣味が無駄に強く反映されることもないんじゃないの」

 なるほど、言われてみれば確かにそうだ。私は原因となったツイートに引きずられていたのかもしれない。Sの言う通り条件を考えるのであれば、個人的な趣味なんかはあまり反映されないようにできるし、今までのようになんとなくで考えるより論理的で簡単に考えられると思う。

 正直Sは私と夜型な点やゲーム好きなところが似ているので、いまいち参考にならないかもしれないなと図々しく思っていたが、とても貴重な意見が聞けたようでとても嬉しい。

 今度、ジュースか何かおごろうと心に誓いつつ、Sが夏休みなのでアメリカのドラマを1シーズン一気に見ただとか、今年はお盆に『蛍の墓』やるっていうCM見ないからやらないんじゃないのみたいな話をしつつ、結局日が昇ってくる5時までS達とゲームをした。

 夏休みってこんな感じで日付感覚おかしくなっていくよね。


 それからしばらくSに言われたように最高の夏休みの条件を考えた。そして、いろいろ考えた結果、最高の夏休みには何をするかよりも誰とするかが大事というのが条件の1つではないかと考えた。

 例えば、最初に挙げた海外旅行に行き、部活に打ち込み、花火大会に行くというのを例として考えよう。

 あなたにはとても嫌いな人がいたとする。その人とは好みも合わないし、その人の態度や口調、容姿も気持ち悪いと感じる。さらに、なぜかその人のあなたへの当たりが強い。そんな人と一緒に海外旅行に行ったり、部活をしたり、花火大会に行ってあなたはどう思うだろう。忘れられない淡い思い出をつくれるわけがなく、忘れられない苦いトラウマを植えつけられるはずだ。

 ただ、他の条件というのが思いつかなかった。人が大事だと考えたときのようにそこが悪い状態になっても楽しいものかどうかで思いつけると思ったが、いまいちうまくいかない感じだったので、また他の人の意見なんかを聞くべきなのだろうか。


「って感じなんだけどどう思う?」

 8月下旬のお昼過ぎ、私は親友のKと一緒に学校から少し離れたコンビニのイートインスペースにいた。何故こんなところにいるかというと、月末のテストに向けた勉強会のためだ。ゲーム仲間のSが中心となって、Sと私とKともう一人で勉強会を開いたのだ。

 ちなみに、午前中は学校の補習があったのでSともう一人の友人は学校で弁当を食べている。私とKはこのコンビニで買ったパンを食べながらS達が来るのを待っていた。

「いいんじゃない。俺は家にいる方が好きだけど一般的に言うとそんなもんだと思うよ」

 さすがKだ。Sと違って優しい。私のようにSみたいなキツい返しに慣れていると、よく考えると普通の返しもとても優しいものに聞こえる。

しかし、私は優しい肯定ではなく否定的なものでもいいから意見が欲しいのである。優しく話に乗ってきてくれたのは嬉しいところだったが。

「Kも考えてみてよ。一人で考えてるとけっこう煮詰まっちゃってさ」

「んー、多分だけどすることにもある程度条件があると思うな」

 甘いな。一応こちらも煮詰まる程考えただけはあって、することの条件についてもまあまあ考えている。その上で、することっていうのはあまり重要ではないと思うのだ。なぜなら、親友と体育館でバスケをしようが、深夜にゲームをしようが、授業中に話をしようが楽しいだろう。つまり親友と一緒にいれば、どんなことも楽しめるのだ。Kはまだまだだね。

「だから、することには条件がない、正確には一緒にする人の条件を満たせば同時に条件を満たすことになると思うけど」

 と丁寧に説明したが、やっぱり言いたいことがあるらしいので素直に聞くことにした。

「君は最高の夏休みについて考えてるんでしょ?」

「うん、そだね」

「じゃあさ、体育館とか公園でバスケしたり軽くカラオケ行くみたいな夏休み以外でもできるようなことじゃなくて、長期休暇だからこそできる徹夜してゲームとか夏祭りに行くみたいな夏休みにしかできないことをする方がいいんじゃない」

 ...なるほど。一理あるなと思った。

 今までの私の考えだと夏休み以外のゴールデンウィークとか冬休みなんかも含めた長期休暇の過ごし方について考えていたということか。確かに最高の夏休みに限定した場合、Kの言うようにその時期にしかできないことを積極的にやった方が良い夏休みになると思った。

 Kのありがたい指摘に感動したのでお礼に肉まんを半分あげて二人で食べているとKが口を開いた。

「夏休みについて考えるのも良いけどさ、まずは夏休みの課題やりなよ。確かまだほとんど終わってないでしょ」

 痛いところを突かれた。

 私はS達と一緒にゲームしたり、Kと映画を見に行ったりして夏休みを満喫した結果、もう夏休みは1週間程しかないのに課題はたくさん残っていた。正直かなりヤバいなーと自分でも感じていた。特に現代文の作文とか数学の問題集がきびしい。

 今年も夏休みの最終週は課題で徹夜することを覚悟した。


 という訳で、最高の夏休みについての私の結論は、一緒にいて楽しいと思える人と夏休みにしかできないことをやるということだ。私が考えた以外にも考慮できることはあると思うし、結論がちょっとアバウト過ぎる気がしないでもないので、みなさんもぜひ考えてみてほしいと思う。

 また、私の宿題の件が気になる方もいるかもしれないが、そちらに関してはこのエッセイを現代文の作文にあてて数学の問題集は2学期を使って気長にやっていこうかなと思っている。

 最後に、みなさんは私のように夏休みの過ごし方を考えるあまり課題をほとんどやっていないことに気付かず、あまり良い夏休みを過ごせなかったというようなことにはならないよう気を付けてほしいと思います。

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