第5話 ネタバラシ

途中で再び降り始めた雨と雷になんとか避け目的の場所に行く。教会だ。婚約者の葬儀と奥様の葬儀。扉を押して中に入る。

「ディアなの」

入って奥に一人で入り口に背を向けて立っている人が居た。喪服を着ても尚、否着ているが故にその漏れて見える白髪と少し見える白い肌。その姿が舐めの通り天使というより女神に見える。

「はい」

だから

「そう・・・・・無事、なのね」

私は彼女のもとで膝をついた。

「すみませんでした!!旦那様を守り切れなきれなくて!!」

彼女は少し黙った。

「良いのよ。貴方が無事ならそれで・・・」

「・・・それは嘘ですよね。本音を言ってください」

彼女から何も感情が感じられない。

だから、彼女にとっては地雷かもしれない所を踏み込む。

「本音?今更何を・・・」

震えた声

「ずっと、ずっと親から愛されたかった。世間体とかどうでもいい、お金持ちとかどうでもいい。ただ皆で笑いあって居たかっただけ。それぐらい願っても良いじゃない。なのにもうその望みも消えた。もう、一人よ」

「お嬢様は一人じゃありませんよ」

なるべく優しく言った。だが、

「ッ一人よ!!親も結婚相手も唯一の繋がりであったあの屋敷も!!財産も!!全部ないわ!!今更使用人達の家にどの面下げていくの!?」

彼女の感情の爆発を表すように外の雷が近くに落ちた。

「もう、一人よ・・・・私は・・・」

「いいえ、お嬢様貴女が私を嫌ったとしても貴女が心から頼れる相手が出来るまで私は貴女の傍に居ます」

ハッキリ言えば彼女は又黙った。そして、

「・・・・本気、なの?」

「本気です」

「・・・・そう、そんなに言うなら」

静かな声で相槌がきた後、ふと視界が黒と白色で埋め尽くされた後喉に違和感を感じた。

見ればそれは包丁だった。そして、それはお嬢様が持っていた。

「今すぐ私を愛しなさい!!じゃないと今殺すわよ!!」

喉に突き付けられる包丁なんか気にせず目の前の瞳を見詰める。

「・・・・・私は貴女を今から愛すことなど出来ません」

膝をつけていた足を床から離し血が流れる事なんか気にせず包丁を掴みながら立ち上がり声とは裏腹に弱々しいお嬢様を抱きしめる。


やっと手に入れた幸せを噛み締めながら。

「私はずっと前からあなたの事が好きでしたし愛しておりました。なので今からなんて到底出来ません」

「っ」

腕の中でお嬢様は耳を赤くしながらも静かに泣いた。





「ディア待って!!」

「おや、どうしました?」

いざ仕事に行こうとした際アンジェロに呼び止められた。

「その、見た目あれだし味も自信無いけど食べてくれる?」

静かに持ってこられたのはサンドイッチの入っているであろう弁当箱だった。

「・・・食べます!!勿論完食して。貴女が慣れないのを一生懸命に作ってくれただけで美味しくならない訳がない!!」

「っちょ、そこまで言ってほしい訳じゃ無いのよ!!!でも、その、あり、がと」

恥ずかし気に礼を言う姿に愛おしく思うわけでつい抱きしめる。

「っこちらこそ!!こんな素敵な嫁さんを貰って私は幸せ者です!!」

嫁さんは相変わらずそういう言葉に慣れないのか馬鹿と言われたけど気にせず仕事に行く。





「どうも、これ、今月の生活費です」

「あぁ、ありがとう」

当時と比べたら少々痩せた気がするが極端な痩せではないにで、すぐに気にしなくなる」

目の前の人はミラノ・ボルジア。ボルジア家の旦那様だった人だ。

「・・・・それは?」

今まで本を読んでいたのに目ざとく嫁さんのお手製サンドイッチを見つける。

「あげませんからね」

「安心しろ。貴族下がりの女が作ったものは大抵まずいと決まっている」

「厳しい発言ですね~」

「お前の母親から嫌でも教わったからな」

「それはそれは・・・・」

ミラノさんは何処か遠い所を見ていた。

「・・・・アンジェロの事宜しく頼むよ」

「えぇ、言われなくとも」

ミラノさんはしばらく黙った後私に言った。

「言い訳かもしれないが、私とネロの間に愛は無かった。政略結婚なのだから当たり前なんだろうがな、お前の母親と好きな人を奪ってすまんな」

「私は、あの時から一度も貴方に奪われてませんよ母も今の嫁も。なんせ、そいうのが得意ですから」

ミラノさんは目を見開いた後静かに笑った。

「さて、そろそろ他に行かせてもらいますから」

「ッフン、忙しいなら何故此処にきた」

去ろうとした瞬間に言われたので笑って言っ。てやった。

「そりゃ、貴方達と違ってこっちは幸せに暮らしているっていう自慢しに来てますから」

「・・・・そうかい」

何処か納得したのかもう何も言わなくなった。





「大事なものとは一体何をだ。」

「何って、旦那様か命が欲しい。わたしはお嬢様が欲しいそれだけですよ」

「それは一体どういう・・・・」

「そのまんま、ですよ。私はお嬢様が欲しいので金輪際お嬢様に会わないでください」

さっきまで困惑気味だったその顔が怖くなる。

「何を言っている。あれは私の娘だぞ、会っても良いじゃないか」

「へぇ、男遊びをするような奴の子供などいらないと言ったのは貴方じゃないですか」

「っう」

「まぁまぁ、これを承諾して頂けば毎月資金をお渡ししますし確実に命拾いしますよ」

「なに?」

「恐らくですが。もう屋敷は焼けれていると思いますよ」

「なんだと」

ニッコリ笑ってやれば本当だと分かったのか黙り込んだ。

「本当に大丈夫なんだろうな?」

「えぇ」

「・・・・分かった。娘を頼む」

「はい」

交渉も終わった所で安全な場所で降ろし偽装工作をする。暗いからバレないであろう人形の中に鉄の匂いのする水を詰めた袋を入れて

貰った上着を着せてお仕舞い。犯人は出かける際に強力な睡眠薬を入れてたのを見たのでコッソリすり替えたからバレてなければ不思議には思わないだろ。

さて、一芝居やらせてもらおう






「さて、家に帰りますか」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

黒い舞台 黒寝 @kurone9025

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ