第4話犯人
馬車に揺られながら外の景色を眺める。
「私は今でもディアーヴォロが犯人だと思っているよ」
同じく揺られているのは旦那様だった。今じゃ彼専属である執事長はあの事故以降精神的に病んだため回復次第の間旦那様の面倒も見なくてはいけなくなった。
「藪から棒に言うセリフセですか?それ」
「・・・・あぁ、なんせ、恐らくこれで最後になるからな」
窓から視線をズラし旦那様を見る。
「・・・・何故?」
「君も分かっているだろう?この事件の犯人。君を犯人だと言ったがそれはあくまで元凶という意味さ。実行犯は誰でどのタイミングで殺しにくるか。どれも分かっていただろう?そして、何故今犯行をやり始めたか」
真剣な目で真っすぐ見てくる。
「・・・・えぇ、そうですね。知っていましたよ。そしてこうなることをずっと前から解っていました」
笑って言えば諦めた表情をしていた。
「やはり、か・・・・・」
「随分と諦めていますね」
旦那様は自傷気に笑う。
「当たり前だ。奴は私には何も思っていないだから君じゃないなら死しかない」
「成程。しかし旦那様お忘れですか?自分がおしゃったこと」
「なにがだ」
もうそこで息してるだけの旦那様に今までの中でとびっきりの笑顔を見せてやる。
「私がこの事件の犯人であり貴方がきらいな奴隷の中のずる賢い家系であること」
「!?」
眼を見開いてこちらを見る。
「取引しましょう?互いの大事なものを賭けて」
揺れる馬車に乗っていた時の事。
「っな!!誰だお前は!!止め!!うわぁぁぁぁぁぁ」
御者の叫び声と馬の痛々しい声が聞こえた。
「っ何事ですか!?」
馬車から出て外を出た瞬間思いっきり押され尻餅をつく。暗い夜の中薄っすら見えたのは私より背の小さい方が何か光るものを持って馬車に乗ったこと。そこで気付くその人の目的を。
「旦那様!!」
急いで馬車に乗ろうとするも外から見える窓に急な液体が飛び散った。それが何か理解した瞬間力が抜けた。何やら物音がするも顔を上げる気にもならない。ふと視界に端に靴が見えた。
「・・・・・・私を・・・・・殺す気、ですか?」
思ったより弱々しい声が出た。
「殺しませんよ。そんな勿体無いこと」
聞き覚えのある声に顔を上げる。黒いマント、
その人被ってたフードをに手をかける。タイミングが良いのさっきまで曇りだったせいで隠れていた月が出た。そのおかげでその人がフードを脱いだその下の素顔がハッキリと分かった。
「モールさん」
「はい!!いつもお世話になっております。ラモールです!!」
その年相応の幼い笑顔がそこにはあった。
「何故、ですか」
「何がですか?」
不思議そうに首を傾げるモールさん。
「何故、奉公先である主人やその婚約者様まで」
「あ、やっぱり気付きました?ディアさんって頭いいからバレてたらどうしようって考えてったんですよ。でもどうやら犯人が誰かまでは分からなかったみたいですね。良かった。ディアさんに特定されちゃったら絶対に止められると思っていましたもん」
「私は、そういう事が、聞きたいのではないにです」
「えぇ、知ってます」
さっきまで興奮気味に言ってた様子が嘘の様に静かに笑った。
「ずっと前か好きでした。それこそあの屋敷で働き始めた頃から。でもディアさんの好きな人がお嬢様だと気付くのも割と早めだったので諦めようかと思いました。お嬢様がディアさんの事好きだっだら大人しく。でもお嬢様が好きな相手もディアさんに対してもの扱いも目に余りました。皆に愛されているにその有難さを知らず我儘ばっかり。そして気付いたんです。ディアさんがお嬢様を諦めてくれて尚且つ私を見てくれる方法を。」
幸せそうに笑うモールさん
「それで、旦那様と奥様、婚約者様を殺したのですか」
「はい!!これでもサービスしたんですよ。貴族は我儘が多いので出来れば苦しめて殺したかったんですが、流石に好きな人が想っている家族だったのでなるべく苦しまず幸せに、それこそ最初の犯行はテミス様とお嬢様が死ぬはずだったんですよ?でも悪運強いのかなんだか知りませんけど、ちゃっかり生きてたんですよね~。あ、すみません。つい。」
「でもその次は本気で焦りましたよ。何故か犯人がディアさんになっててボルジア夫婦がディアさんを殺そうとしていたんですもん。
咄嗟に睡眠薬を入れた水を渡しに行ったら奥様からワインをくれと言われましたので遠慮なく毒薬を混ぜて持って行ったんですがあの時は本当に自分を今でも褒めたいですよ!!なんせあの女ちゃっかりディアさんにそういう事しようとしてたみたいでしたから。私だってまだ妄想ですらやってないのに!!ってあれ?さっきから私喋り過ぎてますね。でもすみません。だってこんなに近くで聞いてくれた事って無くってつい興奮が・・・・だっていっつもお嬢様優先だったじゃないですか」
「・・・・お嬢様・・・・お嬢様は大丈夫なんですか!!」
ずっと絶望しかない言葉を聞いていたせいで顔が俯いていった際まともにその単語を聞いて顔を上げる。
「あぁ、無事ですよ」
途端にモールさんさんは不機嫌になった。されどそれもすぐに戻った。
「ただしディアさんが私の言うとおりにしていただければ」
「言う通り・・・ですか?」
モールさんは急に座り込み顔を近付ける。
「私と生涯ずっと寄り添って下さい」
あぁ、もう駄目だ。
「分かり、ました。」
「本当ですか!!嬉しい!!」
目の前で嬉しそうに駆け回るモールさんを感じながら震える体を抑える。
「あ、ディアさん・・・・・大丈夫ですよ。ちゃんとお嬢様の事忘れさせますから。だから、・・・・・」
「っふ、フフフ、アハハハハハハハ」
「え?」
モールさんは戸惑い私に触れようとした手が止まった。
「はぁ、あぁ、すみません。余りも茶番だったもので」
「え?」
固まったモールさん。そしてタイミングを見計らっていた声が聞こえだ。
「今だぁ!!」
一斉の人数が彼女を取り押さえる。
「ちょっ、何よ!!これ!!」
「あれ?分かりませんか?取り押さえです。警察の」
「えぇ」
さっきまでの威勢は何処にやら不安気に見上げられる。
「すみません。私は貴女と居れません。なんせ貴女にはなんの感情も持てませんんので」
「ちょ、ちょっと待って下さい!!さっき一緒に居るって言ったじゃないですか!!」
「えぇ、執事としてのディアーヴォロは、です。では改めまして私ディアーヴォロは執事云々の前に奴隷の血筋なんですが大抵飼っていたと思っている貴族を殺したり乗っ取ったりと問題の多い血筋の者です。」
「え」
戸惑う彼女に一礼した後ずっと取り押さえてた警官達に合図を送る。
「しかし私は自らの手を汚すことはあまりしたくないにです。正確には違いますが貴女も似たようなものですし勘違いしたままでいいです。ただ、これだけは確実です。私は貴女の恋心を利用しました。有難うございます。これで籠の中に居た天使を連れ出せます」
「天、使。・・・・・っもしかして!!」
「はい、もしかするかもしれません」
お話ししながら彼女は立たされる。
「い、いやよ!!そんな!!助けてよ!!助けて下さい!!ディアさん」
必死にこちらに手を伸ばそうとする姿を見て優しく微笑む。
「っディアさん」
モールさんはやっと見付けた救いの如く笑った。
「利用したとは言えお嬢様に危害を加えた方と添い遂げる気はありません」
「・・・!!止めて!!その笑顔で言わないで!!それはいつも私を助けてくれた顔なのに、なんで!!」
連れていかれる彼女はずっとなんでどうしてと喚く声が段々消える。
「さて、仕上げに行きますか」
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