ふたつのピアス

「ル…イス…?どう…して?」

僕の前には力なく横たわるルイスがいた。

どうしてルイスはここにいる?僕のココロの中の疑問を見透かしたように彼は答える。

「ここに行けば…君に会えると思ったから…」

出血が多すぎる。彼の運命は恐らく…死。素人目にみたってわかる。

そしてそれは本人が一番よくわかっているはずだ。

「どうして、どうして僕を助けたんだ…」

僕の言葉に彼は「お前だって助けてくれたじゃないか」とそう目でうったえてくる。

そして、ルイスは消えてしまいそうなほど小さな声で僕に話しかけた。

「自分でも…よく分からないんだ…。あんだけ虐げてたのにな…本当にごめん。あの時も本当は言ってて辛かった。自分がどうしてこんなこと言ってるんだろうって、後になってものすごく後悔した。」

「確かに…虐げられたのは辛かった。でも!これを、この悲劇を引き起こしたのは僕なんだ!それに、僕もメカニカを虐げた。ルイスだけが悪いわけじゃない。これは僕が復讐したいなんて言ったから…。」

僕の言葉を聞くとルイスは精一杯笑って、君のせいじゃない。と囁いた。

「安心した…。復讐したいっていうのは立派な心だ。マイナスのね。そして今は俺のことを思ってこんなに必死になってる。プラスの心だ。そのふたつがあるってことはやっぱりアダムも人の心をもっているんだな…。」

プラスとマイナスの心。そのふたつがあって人間…。

「それに、お前はメカニカなんだろ。なら、メカニカの気持ちもわかる。最高じゃないか…。」

人の気持ちもメカニカの気持ちもわかるのが僕…。そんなこと僕一人では考えもつかない大切なこと。

大切な人がここにいるから気づくことができた。

「俺はいつかメカニカと人間が共存する世界がみたい……。ついさっきまでメカニカのこと嫌ってたやつが言う言葉じゃないのはわかってる。でも……これはお前にしかできないことだから。」

人間とメカニカの共存する世界をつくる。

これが僕の償い。

この悲劇を起こしてしまった償い。

「ああ、わかった。きっと成し遂げるよ。人もメカニカも共に助け合って暮らす世界を。虐げあったり、ただの使用者と道具の関係なんかじゃない、ココロから繋がることができる世界を。」

「頼んだぜ…。あと、最期に…。俺の黄色のピアス…お前が持っていてくれ…。黄色は希望の色だ…今まで…ありがとう。」

彼の体から力がなくなる。冷たくなる。

僕たちメカニカにはない死だ。



雨が降ってきた。

その雨は僕のココロにある黒い塊を洗い流してくれる。そんな雨だった。

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