アンダーワールド
ここは…どこだ?何がなんだかよくわからない。今まで嗅いだことない匂いがする。
体は…起き上がる。どうやら生きているらしい。周りには一面の機材道具と闇。それに、昔の本に載ってたヴィンテージ物の家具。あとは地図と、くまの置物?そして誰かの声が聞こえる。
「目、覚めた。ようこそ 新人さん」
暗闇から1人の女の子が現れた。腰まである白髪。いや、銀髪と言うべきだろう。ストンと伸びた美しい髪の毛に、人形を思わせるような整った顔立ち。暁の太陽をそのまま映したような瞳。とても同じ人間には思えない。背丈は僕の胸あたりで、可愛らしく僕の前にちょこんと座ってる。
「ここは…。そうだ!ルイスは無事か!?」
「ルイス 誰?此処にはアナタ一人で落ちてきた。ルイス 知らない」
落ちる?何を言っているんだ?
「とにかく僕はルイスの所へ帰らないと行けないんだ。ニューヨークはどちらの方角かな?」
「ニューヨーク それはココ」
「ここ?ニューヨークで落ちたなんて表現どこで使う?
「ココはセントラルパーク の地下 貴方は落ちた ココに イラナイから 捨てられた」
「すて…られた?」
「貴方も メカニカ 捨てられた メカニカ」
僕がメカニカ?確かにこの前ルイスに言われるそんな夢をみた気がするんだが…。メカニカと同じにされるなんて、メカニカのテロでこんな目にあっているんだ。今になっては虫唾が走る。
僕は少しいらついた声で言い返した。
「僕がメカニカなわけないだろ。そんな気持ち悪いこと言わないでくれ」
「信じ られない 認めない?新しいデータ 信じられないなら腕をみればいい 貴方の右腕」
彼女は言い終わると同時に僕に指を向ける。右腕?言われたところをみてみる。
「っ!?」
これ…は…。
肌色の皮から無残にも砕かれた鉄や鉛がみえる。それに色とりどりの線やら管やら。僕の右腕にひしめき合っているそれらは右腕だけにとどまらず、肩から身体の中へと繋がっていた。
そんな、ありえない。僕がメカニカ?信じられない。
朝起きたら豚になってるようなものだぞ。
もしメカニカならどうやって今まですごしたんだ。メカニカには心がない。研究はされているが、成功例があるとは一度も聞いたことない。それに、ルイスのことを本当に騙していたのか?そんなはずはない。ありえない。悪い夢でも見てるはずだ。また起きたら騒がしく優しい日々が待ってるはず。どうして…。
「貴方はメカニカ 私と同じロボット」
彼女の言葉は虚しくも僕を現実へと連れ戻す。
「私はセレッサ 初めてココロを造られたメカニカ」
「貴方もココロを持っている めずらしい」
僕が、ココロを持ったメカニカだって…?
「私 仲間 いる 来て 案内 する」
僕は…僕は。違う。そんな…こと…。
「そんなことはどうでもいい!!今すぐここから出せ!早く!これから機械だらけの世界でたかがロボットと一緒に暮らす?冗談じゃない!」
ああ。そうだ。僕は…僕は…。
「僕は人間だ!!僕に従ってもらう!!」
我慢ならなかった。珍しく叫んでしまった。おかげで喉がガラガラだ。
「往生際 悪い」家畜が鳴いた。
「いいから早く案内しろ!」
「…わかった ならLH区画に行けばいい 上への道 ある 早く懲りて 帰ってくればいい」
「それだけ聞ければ満足だ」
それだけ言って僕は扉に向かって歩き、外へ出る。
ああ、早く帰りたい。時が止まったあの場所に。
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