下降 1

山に来た。何年ぶりの山だろうか。あなたは僕の肩に打つかっては弾かれを繰り返しながら一番上の部分に向かって進んでいく。

息苦しくなって僕が止まった。あなたも止まる。ずっと僕があなたに頼り続けてきたせいで、あなたは僕なんかよりずっと逞しくなってしまった。あなたは僕を見て笑う。何が可笑しいのかわからないけど僕も笑った。そうやってこの退屈がダラっと寝転んだ日々を過ごしてきたんだから、今更変える必要が無かった。

あなたは山の一番上の部分から景色を眺める。僕は眺めるなんて余裕はなく、ただ萎れた雑草のようにベンチに腰を下ろす。またあなたが笑っている。僕も笑った。やはり何も可笑しくなかったけれど、決してそれは愛想笑いの類ではなかった。


ここからは記憶が不鮮明だ。しかし、あなたがずっと笑っていたのは確かだ。と思うのは、思い出という名の化物が美しく化けているからだろうか。


また、下っていく。

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