第7話 さくら・・・再び・・・

桜が色づき始めたある日、僕は列車の中にいた・・・

内陸県をカタコト走るローカル線・・・

その列車の中に、僕はいた・・・


車窓から見える景色は、もうすっかり春だ・・・

「去年の秋以来だな・・・」

そう思い、その頃の事を思い出す。


  「佐久良さん」

  「詳しく聞かせて・・・」

  「・・・うん・・・」

  佐久良さんは、少し間を置いて、話をした・・・


 「実は、私のお父さんとお母さんは、ここの管理人でもあるの」

 「管理人?」

 「うん、悪さされないようにね・・・でも・・・」

 「でも・・・」

 「お父さんも、お母さんも、診療所が忙しいから・・・」

 「たしかに・・・」

 「だから、私が変わりに管理しているの・・・」

 大変なんだな・・・今更ながらに、佐久良さんを尊敬した・・・


「君に見届けて欲しいと言ったのはね。

   君にここに越してきてほしいという意味じゃないの」

  「じゃ、どういう・・・」

  「私が、毎週この子たちの写真を、君に郵送する」

「うん」

  「その感想を送ってくれればいの」

  「それでいいの?」

「うん」

  「お願いできる?」

  「ありがとう。そうと決まれば、名前つけなきゃね」

「一本、一本に?」

念のために訊いてみた・・・


  「僕がつけるの・・・」

  「他に誰がいる?」



自宅に帰ったその週から、毎週送られてきた。

そして、その感想を送った・・・


まあ、子供の成長記録のようなものか・・・

写真だけならわからないので、動画も送ってもらってる・・・

全く、科学の進歩には、恐れ入る・・・


そして、先日「満開になった」という手紙と写真が、

佐久良さんから届いた・・・


僕はそれ見たくて、連絡をし向かう事になった・・・


「そういや、あの日食べたコロッケ美味しかったな」

想像すると、よだれが出てきた・

「また、食べたいな・・・」


「どうぞ」

「えっ?」

振り向くとそこには、あの女の子がいた。


「佐久良さん?」

「東瀬くん、久しぶり」

そういうと前に腰かけた。


「これ、私の作ったお弁当。

おかずは、君のリクエストに答えて、コロッケよ」

「いいの?」

「うん」

遠慮なく、頂くことにした・・・


さすがに少しさめてはいるが・・・それでも、美味い・・・


「東瀬くん、ありがとう」

「何が?」

「みんな元気だよ」


久しぶりの再会で会話がはずんだ・・・

佐久良さんとだと、何でも話せる・・・

とても、温かい・・・


目的の駅に到着した・・・


「東瀬くん、どうする?バスに乗る?」

「いや、歩くよ」

「そう来なくっちゃ」

佐久良さんは、悪戯っぽく笑う。


でも、とても嬉しかった・・・


「東瀬くん、いこ、子供たちが待ってるよ」

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花の咲く頃・・・ 勝利だギューちゃん @tetsumusuhaarisu

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