幕間

 ヒトの輝きは容易く消える。

 失い、どれ程焦がれようと戻ることはない。

 喩え我々ケモノがフレンズ化し自覚する“それ”でも。

 結果は一緒、それでもまた繰り返す永遠にでも……。


 『最初から、ずっとこうよ。今までいなかったロイヤルペンギンが、お客さんにどう思われるか。それが怖いから、あの子達を無理に巻き込んだの。』


 本番直前でステージに立つことから逃げた。

 未来のマネージャーを発端にバレた位で?

 だからこそ皆を騙す罪悪感を分かってあげられた筈。

 だけどそんな経験“自分”は知らなかったから。


 「えぇ、と。時間は遡って今は、そっか。」


 確か今日ルームメイトのフルルが来る。

 フルル=フンボルトペンギンは自明。

 よってデータ改竄も偽りの再現も辞さない。

 個の輝きを上書きする正体。

 “i”とは異なる世界という輝き。

 ※ここでいう世界とは人間社会、超自然を指す。

 記憶の混濁が見られようが記憶通り扉は開く。

 会いたくない会わされる。


 「――邪魔。」


 あの時そう願ったから扉は開かないことに成った。

 フルルのフレンズが生まれないようにしたから。

 ……今、何をした?

 二代目PPPに成る筈だったフルルを。

 ただルームメイトというだけでなんの躊躇いもなく。

 皆のお姫様から程遠い姿は口に出来る訳。


 「逃げ出したい程辛かったなら、いっそ――。その名前を捨てればよかったのよ。」


 ほら、こんなこともはっきりと。

 無力さに不安を患うヒトのままでは叶わなかった。

 道標として導ける偶像に成れた瞬間。

 でも夢見たアイドルじゃないシビアな在り方は。

 永遠を誓っといて力に呑まれただけの。

 そのうえフレンズなら持ち合わせる面だった。

 なんてナンセンスで笑えない冗談。

 それが凡ての元凶ごと輝きを写真に描き足した理由。


 『――セス。』


 なのにそんな名前を彼女は呼ぶ。

 彼女にとってお姫様は“私”だから。


 『プリンセス。』


 名なしのバケモノは最期に名前を思い出す。









 夢みたいな記憶の復元から目覚めたのは朝のこと。

 一見マガリァンがいないのを除けば昨日の図書室で。

 ロイヤルだった私はスマホに見入っていた。

 きっとパーク中の画面でも勝手に映ったそれを。


 「マガリァン……?」


 姿がPPPのメンバーだけあってステージ映えする。

 そんなパークの瞞(まやか)しを打ち壊すかのように。

 ラッキービーストだったセルリアンを従わせ。

 ステージにて拘束されたミライを背景に。


 『初めまして、マガリァンと言います。以後お見知りおきを。』


 私が初めて見る彼女は教えてくれる。

 歴史を物語る例の異変のことを。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る