プリンセス・ナンセンス
図書記架
プロローグ「ひとりぼっちのペンギンのお姫様」
※このプロローグは、まだ「フレンズ世代交代説」を知らない時に、先代PPPに対する解釈を元に考えた話です。
一部修正してますが、去年pixivに投稿した作品なので、本編と書き方が異なる点があるのはご了承ください。
『間もなく、PPPのショーが始まります。お集まりの皆様は着席してお待ちください。』
会場アナウンスはお知らせする。
ここにいる私がお客様だと。
そりゃ私なんかがステージに立ったら。
場違い過ぎて興醒めする。
「――ここにいたんですね、ロイヤルペンギンさん。」
「……ミライさん。」
掛けられた声に私は振り向かない。
視線はステージに注ぐ物。
「隣、いいですか?」
「構わないけど、仕事があるんじゃないの?」
「フレンズさんとの交流も立派な仕事ですから、大丈夫ですよ。」
そんな優しい彼女のこと。
顔を見なくったって笑ってるに違いない。
「ショー、楽しみですか?」
「それはまぁ……、ん? そこは普通、楽しみですよねって同意を求める所でしょうに。」
「私は楽しみですよ、でも貴女がそうは見えなくて。」
「あはっ、動物のことならなんでもお見通しって訳。」
「まさか、そんなことはありません。こうして話してても貴女は私の方を見てくれないんですから、どんな表情をしてるのかさっぱりです。」
「私は分かるわ、きっとミライさんのことなんだからいつも通り笑って、今も接してるんでしょ?」
「……残念、外れですよ。」
『それでは皆様、PPPの登場です。』
アナウンスが皆の姿を見せに来る。
アタリマエのこと。
動物じゃなければペンギンショーなんて。
出来る筈がないのだから。
「私は、フレンズになんて成りたくなかった。だってそうじゃなかったら、PPPを抜けることも、皆と一緒にいられなく成ることもなかったんだから。」
私の姿と皆の姿はあまりにも異なる。
誰も同じ物だったなんて夢にも思わない。
「動物だった頃に戻りたいですか。」
「それは、出来ない。怖いの、あの時の飼育員さんの目を思い出すと。……ミライさんも本当は怖かったりする? 動物だった物が自分と同じ物に成るのって。」
「……。」
「ごめんなさいね、意地悪な質問しちゃって。だけど分かんないのよ、今の私は何を頼りに生きればいいの? こんな動物でもなければ人間に成り損ないの、ひとりぼっちのバケモノは。いっそ皆がフレンズに成ればいいって思う自分が許せない、そんなの私の我が儘でしかないんだから。」
私が席を立つのは。
皆のショーがツマラナイ訳ではなく。
むしろ上出来。
私がいなくても問題ない。
「最後まで見なくていいんですか?」
「皆とお別れをしようと思って来たから、もう充分過ぎる位分かったわ。私は皆と同じケモノじゃない、一緒にいちゃいけないって。」
決め付けかもしれない。
それでも私の心を保つにはこれしか。
「――ロイヤルペンギンさん。確かに私みたいに誰もが貴女達のような存在を受け入れられるかどうかは分かりません、私が貴女達を守り切れる保証もありません。だけどこの世界に産まれて来た存在が生きちゃいけないことなんてないんです、どんな形であってもそれは立派な生き物だから。」
彼女は呼び留めてはいない。
全部分かったうえで言ってくれる。
「貴女がこれから生きる道は優しい物とは限りません、辛く険しいかもしれません。私もいつまでも貴女達と一緒にはいられたらいいんですが、そうはいかないでしょう。力に成り切れない私からせめて貴女の道標と成るよう、フレンズとしての名前を送ります。――プリンセス、ひとりぼっちのペンギンのお姫様。そんな貴女だからこそ、これからフレンズに成る皆さんを支えて導いて欲しい。だって貴女が笑ってなきゃ、私も笑えませんから。」
なんて形のない道標。
の癖して私の背中を推せる程力強く。
「嘘吐き、やっぱりなんでもお見通しじゃないの。」
私は彼女の顔を振り返る。
ほら、笑ってあげたんだから笑ってみせて。
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