悪夢 親友
目を開けると、無機質な天井が見えた。寝ているのは純白のベッド。どこかで見たことのある光景だ。
「あ! 目が覚めたようです!」
「お、ほんとだな。よかったよかった」
身体を起こすとそこには、学級長と新聞の彼がいた。
「ここは?」
「保健室だ。俺が運んできてやったんだぞ」
「ありがとう……というか二人とも補習は?」
「一時間は前に終わったよ。もっとも、どっかのお嬢様はずっとここにいたみたいだけどな」
学級長は、りんごのように紅くなった顔を手で覆い隠す。耳までは隠せてなかったけど。
「そ、そんなことよりお荷物をお持ちしました」
学級長の足元には、三つのカバンが置いてあった。瀟洒な手持ち鞄、大容量のリュックサック、無難なスクールバッグ、こんなどうしようもない僕のために、お嬢様も頑張ってくれたんだな。
「あの、それで、言い難いのですが……」
視線を中空に泳がせ、スカートを握る。
「こちら……」
と、学級長がポケットから取り出したのは見覚えのあるスマホだった。
「僕のだよね? それ」
はい、そうなんですけど……と口篭る様子から察するに、まだ何かあるのだろう。
「何かあるの?」
「あの、お荷物をまとめている際に目に入ったのですが……。先ほど仰っていた方の名義でメールが受信していましたので、ご報告をと」
僕は布団を放り投げ、学級長の手からスマホをかっさらう。ホームボタンを押すと、一件、確かにメールが届いていた。慌ててメールを開く。
『天守閣にて待つわ! 今すぐ来なさい!』
僕の脚は、焦燥感に駆られて木目のタイルを蹴った。
「おい待て! どこ行くんだよ!」
「城だ! 城に行く!」
「車を出させましょうか!?」
「いやいい! 自分で行くよ。そうじゃなきゃだめな気がする!」
この市に天守閣は、学校近くの城郭にただ一つ。僕はそこへ向かって邁進した。
彼女は、そこにいる。
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