推しが引退して三日目の夕暮れ
私にとって
私の想いは
そうか。ならば何も悲しむことはない。
私は真実を手に入れていた。
かつて
私の中には
そうだ、そうだ!私ならば
託宣を受けた預言者のように、私は吐瀉物の溜まった便器から顔を上げ、押し入れに詰め込んだ学生時代の衣類から極力それっぽいものを引っ張り出して身にまとうと洗面台の前に駆け寄りポーズを決めた。
「ぴちぴちフレッシュ十四歳、みーんなの妹! オレンジ担当みゆみゆだよ!」
オタクどもの歓声はない。
鏡の中には、サイズの合わない服を着た、やつれてくたびれたアラサーの女がいた。
何やってんだろう、私。
いや、大丈夫。まだこの格好で外に出てなかったからセーフ。ぎりぎり踏み留まった。むしろ偉い。
どんなに理屈を積み上げても
ならばせめてと、私はそれが幸福であることを祈る。
あと会社には連絡しよう。謝り倒してなんとか許してもらおう。まずはスマホを充電しよう。
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