眠気覚ましの可愛い笑顔
「……っと、こういうときはなんて声をかけるべきなんだっけ……?」
二日酔いの頭ではぐっすり眠ることもできずまだ日の高いうちに目が覚めてしまった頭の上に声が降ってきた。酔った翌日はいつだって不思議なことだらけだったから、この程度じゃ驚かない。が、それはそれとして声の主は気になるわけで。
「……マスター? それともご主人……?」
呼び名を考えている、ということは初対面。トーテム像にもミケにも挨拶はしたことがあるはずで、つまり新入り。んん……? そうなると寝る前に風呂に浸けたあの……。
「起きてください、ご主人。もう昼ですよ」
「うっさい、あたしは昼まで寝るの」
背中を揺すられ、壁の方を向いていた頭をぐるりと部屋側に回して言葉を返す。卵に顔が付いてしゃべっていたらどんなに笑ってやろうと思っていた。
ん、だけど。
「こんなに理想的な子が起こしに来ても?」
目の前に写り込んだのはクラッシクメイド姿の美少女。髪はスポーティに短く切りそろえてあり、二重の瞼はぱっちり開かれクリクリとした瞳がより大きく見える。胸も尻も抑え目ではあるが、そのおかげでよりしっかりとしたメイド姿になっていると感じた。
「……えっと?」
「起きたんですね、ご主人。じゃあ早速なんですけど。キス、しま」
相手が言い切る前にあたしは彼女の頬に手を伸ばし唇を重ねていた。相手の唇は乾いていて、触れた頬は少し角張って……。……んん? あたしの、気のせい? でもこういうときの勘は、恐ろしいほどに当たるのだ。
唇を離して、相手をもう一度よく観察する。
「……っん。よしっ、契約完了っと。しっかしまあ大胆ですねー。たしかに僕からしましょうとは言いましたけど、だからって初対面の相手に遠慮なくしますかねフツー。ま、これも僕の性能が良いってことにしておきますか。……ご主人? おーい? 聞こえてます?」
普通だったら聞き取れなかったかもしれない。だけど、その声はやっぱり若干低い。視線を、徐々に下に移動させる。
「ご主人、昼間っからそういうのはちょっと……」
恥ずかしそうに身をよじらせ膝を擦る。違和感は確信へ。腕を、彼の股間に伸ばし。
ぎゅっと、掴む。
「~~~~~~~~~!!」
「やっぱり、男じゃん!!」
あたしの心からの叫びと、彼の声にならない悲鳴が部屋にこだました。
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