3 妙成寺猛
U-18の日本代表にも選出されている。
今日は久しぶりに部活に参加できるとあって妙に張り切っていた。
部員も自分が練習に参加する旨を伝えると大いに喜んだ。
日本代表の自分に追いつけるように、とひとりひとりが練度を上げている。
浮かれてばかりはいけないけれど青葉圭子という彼女もできた。
残念なのは自分が多忙でもうすぐやってくるクリスマスにデートができないことだ。
埋め合わせしようと昨日遅くまでやりとりをしていたから微妙に眠く、あくびができた。
圭子と同じクラスメイトの
もしかしたら圭子も昨日夜遅くまで起きていたことが響いたのかもしれないと猛は反省した。
猛は保健室に寄るかどうか迷っていたけれど、「迎えに行かないの?」と冷やかし気味に磯早に言われたので妙に恥ずかしくてやめた。
その代わり、猛はいつもの待ち合わせ場所で待っていた。
グラウンドのはずれ、中庭の水飲み場。そこでいつもふたりは待ち合わせをしている。
夏や部活終わりならともかく部活が始まる前は人影は少ない。
始まる前はそもそも彼氏持ち、彼女持ちの待ち合わせ場所になっているため、そういう人たち以外集まらないようになっていた。
今日は猛以外待っている人はいない。少し遅く行ったからだろうか。
待っている間、空を眺める。空を眺めるのは猛の趣味だった。
自分がどこかの誰かと通じているような気がするのだ。
今日は寒波と天気予報では言っていたけれど、12月にしては珍しく風もなく晴れやかな日だった。
空を眺めていると足音が聞こえてきた。
振り向かなくてもわかる。圭子だ。
猛は振り向く。
見慣れた圭子の姿。
けれどまだ気分がすぐれないのか下を向いたまま。
やっぱり迎えに行けばよかったかもしれない。
「おい、大丈夫か?」
ふらふらと足取りが不安定な圭子に猛は声をかける。
圭子はそこでやっと顔を上げ、
「うわああああああああああああああああああああ」
猛は絶叫するしかなかった。
彼女は彼女じゃなかった。
目が胡乱として口が裂けていた。
思わず後ずさるがそれがまずかった。
彼女はもたれかかるように猛に抱きつく。
もう、
逃げられない。
首筋にせまる開いた口に途端に恐怖した。
俺、首筋にキスされるの好きなんだよね。
なんて性癖を暴露して圭子にキスしてもらったときのことをなぜだか思い出した。
あのときの圭子はすごく照れていた。
ああ、そっか。これ走馬燈だ。
「ぎゃあああああああああああああああああ」
首筋を嚙み千切られた猛はその場に倒れた。意識が薄れていく。
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