王会議:それぞれの幻影

 当初、ヴァレリーは自らの『作業部屋』から最短距離で書斎に向かった。しかし、その道中で尋常ならざる剛力によって怪死させられた多くの死体を見て、進路を変える。幾度も。幸い、いや、『こう』成った以上、ある意味で不運にも、彼は狼と遭遇することは無かったのだ。その結果――

「……アルカディアの、ウィリアム・リウィウス」

「見つけたぞ、ヴァレリーッ!」

 狂気によって眼をぎらつかせながら、その男は血濡れで現れた。その熱量に、ヴァレリーは逆に冷静さを取りもどすことと成った。怖いのは逆なのだ。ある男が、十二年前の王会議、戯れの技比べで見せた、あの冷たさを思えば――

(……痩せても枯れても、『俺』はガリアスの百将、下位の連中と一緒にしてくれるなよ)

 ヴァレリーは優秀な騎士であったのだ。少なくとも、ダルタニアンが頭角を現すまでは彼がガリアスの将来を担うとまで期待されていたし、心が折れてからまともに剣を握ることこそなくなったが、本気を出せばそんじょそこらの連中には負けない、自負があった。

「貴様も貴族の端くれならば、一騎打ちにて雌雄を決しよう」

 ロジェとの戦いには驚かされたが、今のロジェを圧倒したからと言って彼が負ける理由は無い。あの時、自分が退いたのは神の子という権力がいたから。

「……意外な申し出だな。ありがたく、受けさせてもらう」

 狼はともかく、あのレベルであれば自分でも届く。本来自分は王の左右、その一角に至るはずであった男。ランベールなどと言う才能ナシが居座っているなど間違っている、あの場所は己の、誇り高き血統と才能を併せ持つ自分こそが――

「ッ!?」

 ヴァレリーは頭を押さえる。一瞬、フラッシュバックしたあの日の記憶。己が勝てないと悟った相手を悠然と蹴散らし、ダルタニアンを、エウリュディケを、キモンを、全て相手のフィールドで征してみせた。あの眼、退屈に染まったあの眼を思い出す。

 極めつけは、表彰の際、王の前で欠伸をしたのだ、あの男は。どうでも良いとばかりに、つまらない連中だったと、退屈な戦いであったと全身が語っていた。

「なめているな? 私を、『俺』を! 教えてやるぞ若造。凶暴なだけの粗野な剣ではない、真の芸術を! 美しさこそ、剣の、武の、本当の――」

 自分で言いながら、ヴァレリーは嫌でも思い出していた。自分が求めていた美しさ、最短を、最善を、突き詰めてさらにセンスを上乗せした、己の理想像。あの日自分は理想に出会った。そして完全に折れた。何故ならあの男は、力半分で理想を体現していたから。

 自分は選ばれなかった。それを知った。

「まだ『俺』は、終わっていないッ! 死ね、アルカディアァァアア!」

 ヴァレリーは剣を抜く。久方ぶりに実戦で用いたそれは、思った以上に滑らかな手応えで騎士の気迫に応えてみせた。美しい軌跡、毎夜うなされていた、あれに僅か近づいたそれは、自分でも驚くような手応えと確信を持って――

(嗚呼、そうか、『俺』は、あれに、あの記憶に、悪夢に引っ張られて――)

 勝った。その剣にヴァレリーは絶対の確信を――

「驚いたな。存外美しい。なるほど、確かに貴方の剣は芸術だ。認識を改めよう。だが、強さも速さも、欠けている。ゆえに――」

 冷たさが、ヴァレリーの身を侵す。信じられない想いであった。確かに、今の剣はあの日の記憶よりも劣る。それでも当時、ダルタニアンたちとしのぎを削っていた頃よりも美しさは増しているのだ。それなのにこの手応えは、何だというのか――

「いくらでも対処可能だ。武の基本はパワーとスピード、美しさなど、要らんよ」

 そう言った男の姿に、ヴァレリーは『あの男』の影を見た。徹底的なまでに合理を極めたその剣。ようやく騎士はあの剣の意味を知る。自分が見た理想はまさに力半分であったのだ。そこに力と速さを注ぎ込んで完成する、『あの男』が実戦で、ストラクレスの首、皮一枚にまで迫り右腕たるベルガーを仕留めた時に見せたであろう、真の剣。

 まだ、完成には遠くとも方向性は同じ。その影を前に――

「あっ」

 ヴァレリーの美しさは成すすべなく断ち切られた。騎士の右手が舞う。美しき剣を殺し、そのまま刃を滑らせてするりと断ち切る早業。彼は運が悪かった。そして、中途半端な強さが、ウィリアムを狂気から目覚めさせてしまった。

 熱を排した男の眼。あの日と同じ、冷たい、瞳。

「私の、『俺』の、剣が」

 舞う利き手。ヴァレリーはとうとう夢から覚めることと成った。あの日からずっと逃げ続けてきた。本気を出せば自分だって、そう思いながら戦うことを恐れてここまで来た。だが、とうとう終わってしまったのだ。もう、美しく戦うことなど出来ないのだから。

 武人として、騎士としての己は、死んだ。


     ○


 名家に生まれた天才の前に現れた野蛮な才能は、初陣から多くの戦功を上げた。凶暴、粗野、荒れた剣は無理やり勝利を喰らい取っていく。次第に、元々あった差は埋まり、あんな剣は邪道だと、あんな戦い方では本物には成れないと、言っていた者たちは皆口を噤み、気づけば皆称賛する立場に変わっていた。

 次々と才能が現れてくる超大国。それでも男はこだわった。自分が目指す美しさ、結果が出るのは遅かったが、それでもようやく努力の芽が出始め、遅まきながら、と言っても若さを鑑みれば十分な早さで百将に名を連ねた。

 血騎士、迅雷、黄金騎士団の若きホープ。他にも巨躯と言う才能、双子と言う特異性、ガリアスの教えを信じひたむきにそれを極めんとする者。そんな中にあって、男はある種の居場所を掴みつつあった。ガイウスでさえ、期待を向けていたのだ。

 ゆえに帯同させた。あの年の王会議に。若き新鋭を引き連れ、若い者同士で技比べでもどうだと、ガイウスが提案した。見せびらかすつもりだったのだ。自分の宝物を。どうだ、ガリアスは沢山金の卵を持っているぞ、と。

 そのつもりであった。

「――勝者、ヤン・フォン・ゼークト」

 幾度その名を聞いただろうか。弓ではすでに世界トップレベルであるはずのエウリュディケに、槍ではネーデルクスの至宝と称されたジャン・ジャック・ラ・ブルダリアスに、剣ではガリアスが誇る血騎士――

「君の剣は苛烈だけど、勢いだけじゃあつまらない」

 ダルタニアンを征してみせた。その前には『黒羊』のキモンをあしらい、本人が必要ないと休憩を挟むことなく、凶暴な血騎士をつまらないと言って、言葉通り圧倒した。

 ガイウスだけではない。全ての国の王たちが目算を誤っていた。当のアルカディア王ですら、その才に驚きと歓喜を浮かべていたのだ。

 本人はつまらなそうに欠伸をしていた。それは必死で努力してきた者にとって、あまりにも強烈な衝撃を与えたのだ。其処に憧れを見出した者、現状では届かぬと悟り変化を求めた者、それらにとってはこの出会いは得難いモノであっただろう。

 彼らは一様に成長した。己が道を見出し国の顔と成った。

 だが、そうでない者は、圧倒され、折れてしまった者にとっては、あの日は悪夢と同じであった。そしてそれ以上に――

「は?」

「いや、左遷されたってよ、ほら、ベルガーを討ったやつ。同世代だろヴァレリー卿」

「左遷? そんな馬鹿な話があるか! 彼は、これからもっと飛翔して――」

 自分の理想が沈んだ。ほぼ折れかけていたが、まだ指先一つ残していた。武人として目指す先、理想が其処にあるのならば、不愉快だが後追いすればいい。矜持を捨てて。そう思えてきた矢先に、理想ごと天才は地に堕ちた。

 完全に折れてしまったのだ。あらゆる事象が、彼の道を歪めた。才能ある男が剣を捨て権に媚びを売ったのも、それが原因である。

 一度折れた者は元には戻らない。新たに道を探して別の道で至るか、そのまま腐っていくか、それは個々の覚悟次第であるが。


     ○


「どっちだ?」

「ヴァレリーの方は『蛇』が目を付けている。俺たちが向かうべきは死神だ」

「心得た」

 ダルタニアンともう一人の男は轡を並べてウルテリオルを疾走していた。昨日まで穏やかだったのは嵐の前の静けさ、新星共の気まぐれ一つで超大国が、その心臓がこうも揺らいでしまうとは、昨日までは考えもしなかった。

「多くの眼がインビジブルに向いているぞ」

「……青貴子め」

 ダルタニアンは天運などよりも恐ろしい何かを、あの神の子に見た。運だけであの場所は選ばない。あそこで暴れられるだけで革新王にとって、大きな痛手と成り得る。同時にその敵に対して黒狼が毒と成っている現状。笑いしか浮かんでこない。

「まあ良い。俺たちの武で黙らせるまで」

「もちろんだ」

 王の左右がすべて揃う。ならば勝たねばならないだろう。超大国の威信にかけて。

「……ヴァレリーは惜しい男であったな」

「仕方がない。彼が目指していた剣、その先が同世代にいた。俺も、自分の剣を曲げる道を選んだ。キモンは、自分が頂点に立つこと自体を諦めた。そういう男だったんだ。あの男は、ヤン・フォン・ゼークトと言う天才は。その彼でも、巨星には――」

 あれから知識を得て、戦術を学び、合理的な剣を修め、万能の武将と化したダルタニアン。今と成ってはその彼を知る者が大半であろう。変わったことで道が拓けた、彼自身そう思う。しかし、だからこそ壁の厚さ、自らの立ち位置を彼は理解していた。

「……自分たちの、ガリアスの位置を、再確認するのも悪くない」

「……弱気では勝てるものも勝てんぞ」

「知らねばそれこそ勝てんさ。明日勝つために、泥を被る日も必要だ」

 今の自分がどこまで近づいたか、それを測るための戦いに向けて彼らは疾駆する。


     ○


 アポロニアは狼に追い立てられ、屋敷から逃げ出していた敗残兵を目の前に、ただ一点を見つめていた。一瞬奔った怖気、冷たいひりつくような感覚。無論、まだまだ自分の領域までは遠い。自分の熱量を断ち切るまでの冷たさではない。

 だが、近づいている足音は聞こえていた。

「うむ、私はやはり、お前の在り様に心惹かれているのだな」

 この王会議の間だけで、自分から、ヴォルフから、他国の武人たちから吸収し、明らかに変化した剣。その一歩は決して大きなものではない。試行錯誤して後退することもあるのだろう。だが、変え続けている。変化を厭わず全力で前へと邁進している。

 その姿が素晴らしいのだ。自分を見て、あの才能で、それでも向かって来ようとする覚悟と研鑽に懸ける執念。心地よく彼女の心に響く。冷たい熱情が沁みる。

「ふむ、風邪でもひいたかな?」

 頬が、心が、全てが紅く燃えていた。

 あの面白い戦場を見逃してでも彼女は此処を選んだ。この小さな戦場で、あまりにも薄弱な敵を相手に、あの男が何を得るのか、それが気になったから。

「退け、死にたく、ない!」

 それを眺めるには門の前に立つのが一番。道を塞ぐ意図はない。そもそも彼女の視界に有象無象の姿など入っていない。だから、露払いは――

「ならば大人しく剣を捨て隅で震えていろ!」

「正気じゃないね、よりにもよって今の陛下に近づこうなんてさ」

 ベイリンとメドラウト、二人の騎士が狼の脅威から逃げてきた敗残兵を、門の前に仁王立つアポロニアへと近づく不届き者だけを断ち切る。凄惨かつ悲惨な光景が広がるも、やはり彼女の視界には入らない。死だけが積み重なる。

 まさにここは小さくとも戦場なのだ。三つの星が、集っているのだから。どんな場所であっても剣を抜いたなら、其処は戦場であり。強きが支配する世界。

 弱者に権利などない。それを求めるのであれば剣など手に取るべきではなかったのだ。それを彼らは身をもって知る。知って散る。


     ○


 ローエングリンとエウリュディケ、二人の武人が同時に王手をかけていた。白鳥の槍が喉元に添えられ、迅雷の矢が額に突き付けられる。ここまで詰めた芸術的な槍捌き、此処まで詰められてなお反撃の体勢を築いた超速の弓捌き。

 どちらも天才、そして未だ高みを目指す求道者。

(芸術的な槍捌き。速くも無く、強くも無い。そう見えるほどゆったりと流れる時間。余裕を、ゆとりをもって捌かれる槍。嗚呼、何故、この男がそれを体得しているの? それはネーデルクスが失いし最強の、至高の三貴士が振るいし神の槍でしょうに)

(驚いた。精度はほぼトリストラムと変わらないが、ただ一点、矢の回転数、連射速度は迅雷の弓が勝る。あの男に弓で比肩する女、それだけで驚きに値するってのに。大したもんだぜ。やはり、俺はこっちで正解だった)

 互いに互いを称賛する。道は違えど高みを目指す姿勢、至った場所には敬意を示すのが武人の筋。互いに王手がかかった状態、ストラチェスと違うのは同時に動けると言うこと。膠着するしかない。どちらかが戦意を持った瞬間、二人とも死ぬのだから。

「何故、ネーデルクスに?」

「いやいや、俺たちは誰に、どこにつけとも命令されちゃいねえよ。好きな方を選び、好きな敵と戦えって言われただけだ。そして俺はその言葉に従い、何となく、今ここでお前さんと戦っているのさ。正解だと思っているぜ、楽しかったからな、心底。勝ち切れなかったのが残念で仕方ねえが」

 何となくそうした。ガリアス側でも良かったと言うこと。だが、彼はそれを選ばなかった。ローエングリンはそれをたまたまと言ったが、それは果たして真実であったのだろうか。自分は、あの死神に対して有効に働く数少ない武人。

 あの狂気の、殺意の届かぬ遠間から一方的に攻撃を加え、主導権を握ることが出来る手札であった。ランベールとはよく組まされていたし、疾風迅雷、拍子を合わせてあの死神を上回ることも――

「一つ忠告だ。もし、俺が戦局を左右したと、つまるところお前さんの有無が戦局を左右したと、勘違いしちまうことだけはやめといた方が良いぜ」

 エウリュディケはまさに今、考えていた思考にくぎを刺され小さく驚いてしまう。

「あの死神は、そこまで甘くねえ。エル・シドと引き分けた、あの怪物と戦って生き延びた、その時点でよ、俺らとは生き物が違うと思った方が良い。知らねえだろ? あの怪物を。本気を見たら、この程度で何かを変えられるなんて思わねえよ」

 ローエングリンの槍がかすかに震える。殺気や好戦的なものではない。むしろその逆、これだけの技量を持つ武人が、恐れているのだ。想像の中の烈日でさえ。

 あの日彼らは烈日を前に焼死して、沈んだ。未だそのトラウマは根強く残っている。多くの部下を失い、敬愛するアポロニアの母、戦乙女を守ることも出来ずに、無様にガルニアへ逃げ帰った敗残の騎士たち。

「それでも、時代が動くってんなら、止まったままじゃいられねえ」

 もう二度と槍を持つまいと、あの日誓った。親友がガルニアを去り、幼馴染である親友の妹がアポロニアに与し、それでもなお戦う気力が湧かなかった。陛下に、アポロニアに出会って、それでも、今をもって守り切れる自信がない。

「俺は今度こそ守るのさ」

 ローエングリンは槍を引く。戦意無し、あえて自らが退くことで均衡を破り、勝負をうやむやにした。彼にとって命を賭ける場は此処ではないのだろう。彼の眼からエウリュディケは巨星の影、その強さの一端を知った。

 これだけ強い男が、あれだけの戦力を、強き騎士たちを抱え、大器たるアポロニアの強さを知ってなお、男は勝てると微塵も思っていない。勝てないと知りながら付き従っているのだ。その事実に、エウリュディケは愕然とする。

 もしかすると、自分たちの想像以上に巨星は高く、途方もないのではないか、と。自分たちが今まで戦ってきた『黒金』は、未だ一度として本気を出していないのではないか、と。そう思うと、一気に怖気が溢れ出してくる。

 エウリュディケはふと、思い出していた。かつて焦がれた男の姿を。その彼でさえ本気の巨星には届かなかった。其処にどれほどの差があったのか、彼女は知り得なかったが。それでも勝てなかったのだ。それだけが歴史に刻まれている。

 事実は一つ。未だ、巨星たちは誰もが負けていない、勝ち続けている。

 それだけがこの世界の、戦場の真実であった。


     ○


 リュテスは、すでに超えたと思っていた男が、未だ自分よりも優れた槍使いであることをまざまざと見せつけられていた。自分ではすぐにでも殺されてしまうであろう死神を相手に、驚異の粘り。引きながら、かわしながら、死に物狂いで距離を稼ぎ、槍のリーチを存分に使い、生存のためにすべてを注ぐ。

「が、は、し、死ぬ。はやく、増援、こい。マジで、もう、無理ィ」

「ギハハ!」

 死神の猛攻。凄まじい破壊の嵐を掻い潜り、引く。前に出れば即座に飲み込まれるであろう距離には絶対に踏み込まない。受けて、かわして、引く。とにかく引き続ける。

「へえ、思ったより良い武人だね、ランベール」

 ルドルフは素直に称賛していた。死神と化したラインベルカを相手に生存し続ける武人など、巨星くらいのもの。おそらくヴォルフやウィリアムでさえも十秒持たないだろう。アポロニアで何とか勝負に成る程度、か。

 であれば、彼がどれほど優れた武人であるか誰の目にも明らかであろう。ネーデルクス勢など信じ難いモノを見る目で、泥臭く生き延び続けるランベールを見つめていた。

 ガリアスの思想を、理念を、体系を、基礎基本を極めし者。

「アメリア、良く見ておくと良い。秀才でも、あの域までは行ける。諦めずに、亀の一歩でも、とにかく進み続けろ。そうすれば、ああ成れる」

 白き少女、アメリアは静かに頷く。泥臭く、ボロボロで、見るに堪えない状態であっても、ランベールの槍、型だけは微塵も崩れていない。忠実に、たゆまぬ反復訓練を経て染み付いた動作は、極限状態であってもいつも通りの姿で其処にある。

「し、ぬ。はや、こい。ボケ」

 朦朧としながらも基本を崩さない、継戦に徹する王の左右、『疾風』のランベール。凄まじい消耗、途方もない戦力差を埋める執念。これぞガリアス。負けているにも関わらず、彼の姿にガリアスの兵たちを奮い立つ。

 これもまた将の形。

「さすがランベール! いい仕事だ!」

「待たせた!」

「……おっ、せーよ、馬鹿野郎」

 死力を尽くし稼いだ時間。其処にようやく真打が間に合った。

「高めた力、試させてもらうッ! ガリアス王国軍序列二位、王の左腕、ダルタニアン!」

「粉砕する! ガリアス王国軍序列三位、王の右腕、ボルトースが!」

 咆哮する二人の武人。ガリアスが誇る最高戦力が馬から降りた勢いそのままに死神へ向けて突貫する。背負うは超大国の誇り。担うはウルテリオルの平穏。守るはガリアスと言う看板。いざ尋常に勝負、ガリアス対ネーデルクス――

「二対一、文句はあるまい。死神よッ!」

「ギャハ! コロス!」

 開戦。

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