第50話 脱水
メイア視点
海斗は飛んで行き姿が見えなくなった。
「ぬぅ、まずいな…サーラ、避難しろ。」
「でもまだ海斗が…」
「今はいい、小僧ならあの高さから落ちても行きているだろう。それよりも今は我らの身を案じろ。」
正論だ。海斗は流衝を使える、あの高さから落ちても死ぬ事はないはずだ。少なくともオレなら無傷でいられる。
「とりあえず逃げるーー」
ゾッ
逃げようとしたその瞬間、背筋に悪寒が走った。
な…んだ…?
空を、見上げる。
そこには、攻撃を放とうとしている炎魔人が居た。
「あれは…まずい…」
直感では無く、本能で分かった。あれを食らえば死ぬ。
炎魔人は口から炎を漏らし、吐き出そうと口を開くーー
『ルオォォォォォォォォ!?』
ーー前にその頭に何かが突っ込んだ。
「海斗!?」
炎魔人の顔が吹き飛ぶ。
あいつ!やるじゃねぇか!
オレはその光景を見て喜んだ。
だけど、炎魔人は最後の足掻きか最悪の最後を迎えた。
カッ!ドォォォォォォォォォォン!!
炎魔人が爆発した。
くうっ!?
吹き荒れる爆風に体を煽られ飛ばされそうになった為、近くにいた美香と柊を連れて巨人の陰に隠れてやり過ごす。
上空では小太陽がその姿を見せていた。
あいつは無事なのか!?
オレは今さっき炎魔人を殴り飛ばした海斗の事が心配だった。
殴り飛ばした瞬間に爆発したからあいつは爆発の中心にいることになる。
普通なら死んでいてもおかしく無いがオレの直感がまだ生きていると伝えてくる。
ただ今はまだ爆風が強すぎるために待つ事しか出来なかった。
〜〜〜〜〜
数秒ほど経った頃、ようやく動き出せるくらいには風も収まり、巨人の影から出る。
どこだ!?海斗はどこに!?
周りを見渡す。途端、オレの直感が何かを感じ取った。
空を見上げる、そこには落ちてくる燃えた何かがあった。炎は徐々に消えていく。
直感に従い走る。あれは海斗だと言っている。
届け!届け!間に合え!
走る、全力で、瞬身も使って走る。
あの状態じゃあ意識があるとは思えない、つまり落ちれば潰れて死ぬ。
「あああぁぁぁぁぁぁ!!!間に合えぇぇぇぇぇぇ!!」
オレは跳んだ。そしてーー
海斗を掴んだ。
「流衝!」
ドスンッ!!
「カハッ…」
そのままオレたちは落下する、流衝で衝撃を流したつもりだったが体勢が悪かったせいで流しきれず、結構な衝撃が体を貫いた。
肺から空気が押し出される。強く打ち付けたせいで背中が痛い。だけど…海斗は無事だった。
「良かった…痛っ!」
安心したその時、腕に痛みが走る。
見れば海斗に触れていた部分が火傷していた。
まずいな…これって要は海斗がそんだけ熱くなってるってことか…
オレの直感は生きてはいるって言っているけどどこまでもつか…
オレは海斗を両手で抱える。お姫様抱っこってやつだ。
そして美香達の元に走り出した。
〜〜〜〜〜
「美香!はぁっはぁっ、海斗を、治してくれ!」
「メイアさん!嘘っ!?海斗君!?酷い火傷…、直ぐに治します!不死鳥の魂!」
美香は海斗に手をかざす、海斗は炎に包まれた。徐々に傷が癒えていく。
「これで大丈夫だと…ってメイアさん!腕酷い火傷じゃないですか!?治しますんで腕を出して下さい!」
「あ、あぁ、すまねぇな美香…」
「いいですよ、お礼なんて。それよりもまた何かあったら言って下さいね?」
「あぁ、分かってる。そん時は頼むぜ。」
良かった、美香が居てくれて…
オレ達は安心しきっていた。だからそれに気づいたのは近くにいた柊だった。
「っ!海斗!?おい!大丈夫か!?海斗!」
柊の声を聞いて驚き、慌てて海斗を見た。
「う…うぅ…はぁはぁ…」
息が荒い、それに汗が出ていない、まさかこれはーー
「何よこれ!?何で治らないの!?」
「美香、無駄だ。だってこれは恐らく、脱水症状だ。」
海斗は全身を焼かれ、脱水状態になってしまった。
「どうすれば良いの!?」
「ここは木陰だ、とりあえず水を飲ませるべきだと思う。」
「あぁ、柊の言う通りだ。」
「でも海斗君は意識が…」
美香の言う通り今の海斗には意識が無い。ならーー
「なぁ、オレの鞄無いか?」
「一応持ってきてるけど…」
「渡してくれ。」
「ほい。」
柊から鞄を受け取る。海斗の作戦で空に飛ぶ時に唯一下にいた柊に全員分の鞄を預けていたのだ。
ゴソゴソ
オレは鞄を漁る。目当ての物を探しているのだ。
そしてそれを見つける。
「それ水筒?海斗君は今飲めないわよ?」
そんな事は分かっている。だけど水を飲まなければ海斗は死ぬ。だから
オレは自分の口に水を含む。
そして地面に横たわった海斗の顔に手を当て、唇を合わせた。
コクッコクッ
水を飲む音が聞こえる。良かった、ちゃんと飲めているようだ。
「あ?え?メイアさん?ちょっ、突然…いえ、人命救助…だからこれは仕方がない事…」
「うひゃぁ…僕何にも見てない…」
オレの突然の行動に美香と柊が呆気に取られているようだが今は気にはしていられない。
全部飲み干したのを確認してもう一度繰り返す。
目ぇ覚ませよ、海斗…。オレの初めてくれてやったんだ、目覚めなかったらゆるさねぇぞ。
何度か繰り返した頃、海斗の顔色が良くなってきた。
オレは水分の供給を止める。後は目覚めるまで待つことにした。
〜〜〜〜〜
数分後、咳き込む声と共に海斗は目を覚ました。
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